6月末に6年間過ごした米国を離れ、日本に一時帰国したのち、先週、ルワンダ(「千の丘の国」という意味です)に到着しました。前回の滞在ではメリーランド大学のチームの一員として現地でのHIV治療のトレーニングに従事することが目的でしたが、今回は感染症科フェローおよび予防医学科レジデントとして勤務したダートマスのファカルティとして、長期にわたりこの国の臨床医学教育に従事するために戻ってきました。
ダートマス大学は、クリントン財団と米国の主要医科大学(Harvard, Yale, Columbia, Brown, Duke, University of Virginia、等)がルワンダ政府と協力して実施している臨床医学教育プログラム、Human Resources for Health (HRH)に参加しています。昨年度から開始されたこの7年間のプログラムでは、各大学が医学・および看護学のスタッフを短期あるいは長期に派遣し、ルワンダの医師および医学生の臨床知識および技術の向上に貢献すべく活動しています。
私は、今後数年間にわたり、首都キガリの教育病院において、一般内科および感染症専門医としてルワンダの研修医および医学生の臨床医学教育に従事する予定です。今回の赴任には勿論、家族も同行しており、妻と二人の娘たちにとっても、新しい生活のスタートとなります。
国連教育科学文化機関のスタッフとして南部アフリカのナミビア共和国に赴任し、そこでの経験を通してHIVをはじめとする途上国の感染症治療に貢献できる医師になることを志してから、ちょうど11年経ちました。その間、本当に地球をほぼ一周して(ナミビア—フランスー日本ーアメリカールワンダ)、再びこの大陸に戻って来たことに、不思議な巡り合わせのようなものを感じ、またこれまで自分を支えてくれた家族や恩師、そして友人たちへの感謝の気持ちを新たにしています。
限られた医療資源と環境の中で、自分がどこまでclinician-educatorとしてルワンダの人々に貢献できるか、不確定な部分は確かに存在します。しかし、私がアメリカ、特にダートマスで受けた専門医教育は、考えうる限り最も優れたものの一つであると確信しており、自分が医師として確かな土台の上に立っていることを強く感じています。今、自分の医師としてのキャリアの原点であるアフリカに戻って、そう思えるという事実が、アメリカでの専門医教育が自分にとって何を意味していたか示唆しているように感じています。
私はHRHに参加している唯一の日本人ファカルティですが、指導を担当するルワンダの研修医や医学生にとって、アメリカ人ファカルティと比較して、より身近なモデルとして感じてもらえることを希望しています。知識に国境はなく、「優れた医師」であるために必要なのは、優れたトレーニングであり、そこに国籍は無関係です。日本の医学部で学んだ自分がアメリカでトレーニングを受け、アメリカのacademic institutionのファカルティとして、途上国の臨床医学教育に貢献することは、その証明だと思っています。
アメリカでのトレーニングを終え、新しいスタートに立った今、このブログにも区切りをつけたいと思います。読んで下さった方々に心よりお礼を申し上げます。また、いつか、世界のどこかで。
青柳有紀
Yuki Aoyagi, MD, MPH, MA
Clinical Assistant Professor of Medicine
Geisel School of Medicine at Dartmouth
Human Resources for Health Program in Rwanda