病理解剖カンファレンスに参加した。
少し前までICUでフォローしていた患者さんが突然の心肺停止で亡くなって、どうしてもその理由を知りたかった。
それはまだ40歳の女性で、3人の小さな男の子の母親だった。数年前にある血液疾患を発症する前まではとても活動的で(フルマラソンもしていた)、職業は小学校の先生だった。
診察に行くと、病室には彼女が元気だった頃の写真がいくつも飾られており、そこには僕とあまり年の変らない、綺麗で、幸せに満ちあふれた彼女の姿があった。彼女の夫は献身的で、毎日のように見舞いに来たし、先の見えない状況でも常に笑顔を絶やさない人だった。
病理解剖室は思ったよりも明るかった。僕の目の前には彼女の心臓、大動脈、肺、肝臓、膵臓、腎臓の断片があり、病理医が彼女の突然死の原因になったであろう、急性冠動脈症候群の痕跡を指し示した。彼女について、指導医やナースや担当のレジデントたちと話した数週間前のことが幻のように感じられた。そこのあったのは彼女の「部分」であり、医師として僕が言葉を交わし、触れ、わずかな日々の変化を捉えようとしていた彼女と同一化させることはどうしても困難だった。彼女は亡くなった。僕は、そのことについて少しは自分を理解させることができると、期待しすぎていたのかもしれない。
家に帰ったあとも、得体の知れない不安を払拭することができなかった。いつもより妻や娘たちと話をし、彼女たちに触れていた。