source control
問題の原因となっている根幹に対してアプローチし、制御すること。転じて、臨床感染症の現場では、根治目的で感染巣に対して行う、何らかの介入を指して用いられる語。
例えば、憩室炎から穿孔を合併し、部分切除吻合術後に腹腔内膿瘍を発症した患者についてコンサルトされたとする(その理由は勿論「熱が下がらない」)。膿瘍に対しては、5日前にinterventional radiology(IR)によってドレーンが2本挿入され、現在も膿性の排液が少量みられる。ドレーン挿入の際には培養も提出されており、結果はEnterobacterとBacteroidesが陽性で、現在までciprofloxacinとmetronidazoleによる治療を受けている。患者は毎日発熱している。痛みはコントロールされているが、頻脈をみとめる。肺炎や尿路感染の徴候はなく、phlebitisもなさそう。血培も今のところ陰性で、再度CTを施行すると、吻合部分に一致して、ドレーン挿入前よりも大きな膿瘍形成をみとめた。IRがドレーンを入れ直した際に吸引(aspirate)した検体をグラム染色すると、多数の白血球、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、酵母をみとめた。
腸管内容の漏出がつづいているのは確実なので、コンサルトした一般外科チームに対し、感染症フェローは次のように伝えた。
“A repeat CT of the patient demonstrated an enlarging abscess, and the gram stain of the aspirated fluid is highly suggestive of an active leakage of bowel contents. Source control needs to be established. This patient has to go to the OR (operating room).”
(追記)日頃から思っていることだが、このsource controlという概念は、臨床感染症以外の分野、例えば、公衆衛生や環境学、災害管理などにも応用できるものだ。上流から継続して汚染物質が流れ込んでいるのに下流で必死に除染しようとしてもアウトカムは知れている。
(「IDな英語」では、アメリカの臨床感染症の場でよく使われる言葉を、ちょっとした周辺知識も交えてご紹介します。)
確かに、Source Controlの概念は色々なところで応用できそうですね。トヨタの5Why(5回なぜ?を繰り返せば、物事の本当の原因が見えてくる)は有名ですが、それと同様に「これがどこから来ているのか」をたどって、源泉に介入することが、効率的かつ効果的な手法だと思います。また感染症のみならず、他の多くの内科疾患にも当てはまることだと思います。
コメントありがとうございます。おっしゃる通りで、まさにそれがこの言葉を取りあげた理由です。「IDな英語」では、単なる英語表現ではなく、普遍性があって、かつ日本の多くの人にとって新しい概念を紹介できたらと思っています。