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齋藤雄司

ブログについて

米国の医療に憧れ、渡米後研究者から臨床医に転身。フィジシャンサイエンティストを目指すが、その後、妻が米国での内科研修を開始したため、家庭のサポートに回ることを決意。子育てにも積極的に参加。現在、日系人の多いカリフォルニア州モントレー郡で、心臓病診療に従事。内科医の妻と子供二人の四人家族。研修終了後の医師の生活、家庭のあり方、子育てなど、米国の生活に密着した情報をお伝えしたいと思います。

齋藤雄司

新潟県出身。新潟大学医学部卒業後、同大学内科研修、大学院修了。血管生物学の基礎研究に従事するためポスドクとして渡米。その後、ロチェスター大学関連病院内科レジデント、カリフォルニア大学アーバイン校循環器フェロー、カリフォルニア大学サンディエゴ校心臓電気生理フェローなどの臨床トレーニングを行う。バッファロー大学内科クリニカルインストラクターを経て、現在は、カリフォルニア州モントレー郡の開業循環器グループに所属。不整脈を含む心臓病診療に従事する。

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私がアメリカで内科研修を始めたのは2000年代ですから、もうだいぶ昔の話になってしまいましたが、当時の緊張感は今でもとてもよく覚えています。私の緊張感のほとんどは英語の拙さからきていました。研修医採用の英語でのインタビューはなんとか乗り切ったものの、普通の日本人の私にとって、医療現場で英語で仕事をするというのは、それはそれは想像を絶する人生最大のプロジェクトでした。この英会話をさらに不可解に複雑なものにしてくれたのが「略語」です。当初は、周りの人の言うことが分からないのは、英語そのものが分かってないのか、「略語」が入っているから分からないのか、そのどちらなのかすらも分からないという情けない状況でした。

例文1:

指導医:”Please ask ID consult.”

私:「は?(IDって何?)」

例文2:

私:「この患者の輸液には何を使ってますか?」

ナース:”D5.”

私:「は?(D5って何?)」

例文3:

指導医:”Please DC antibiotics.”

私:「は?(抗生剤をどうしろって?)」

例文4:

指導医:”Let’s ask GI for EGD.”

私:「は?(GIって何?EGDって何?一体どうすればいいんだぁーっ!)」

このようなちょっとした会話が理解できず、特に最初の一年間は本当にストレスでした(プログラム側もとんでもないインターンが来たと思ったことでしょう)。

ちなみに、ID:infectious disease(感染症科)、D5:dextrose 5%(5%ブドウ糖輸液)、DC:discontinue(中止する。ディーシーと発音します)、GI:gastrointestinal(消化器科)、EGD:esophagogastroduodenoscopy(消化器内視鏡)となります。

1990年代に日本で研修した私は、5%ブドウ糖液など「5プロツッカーと言え!」と、叫びたかったほどです(ちょっと古いか)。

 

英語がある程度ものになるには数年単位の時間がかかります。 だからと言って、英語が完璧になるまでアメリカの臨床研修を我慢する必要はありません。面接試験に合格する程度の会話ができれば、研修中にもどんどん英語力が伸びていきます。私が悟った英会話上達のコツは、

1.とにかく、自分から英語を話す。聞くだけでは上達しない(Inputだけでなく、Outputが重要ということです)。

2.大きな声で話す。日本人の場合は、恥ずかしがって声が小さくなりがち。正しいことを言っていても聞こえにくいので通じにくい。聞き返されると萎縮して、ますます声が小さくなり、ますます英語が通じなくなるという悪循環に陥ります。

3.小さな電子辞書を白衣のポケットに入れて歩く。英語での言い方がわからない時には和英辞典で調べて、その言い回しをその場で早速使ってみる。

4.(オプショナル)レジデント仲間と酒を飲む。酔っぱらうと恥ずかしさが薄らぎ、しかも声がでかくなるので、不思議と英語が通じ始める(お酒の好きな人にオススメ)。

それでも英語は日本人には難しい。これは、バッファロー大学で指導医をしていた時、仲間の指導医から聞いた話です。心不全患者の受け持ちだった日本人レジデントに、”Start Lasix”(「ラシックス利尿薬を開始して」)と指示したら、”Stop Lasix”(「ラシックス利尿薬はやらないで」)だと思い、利尿薬を開始してなかったということがあったそうです。このような話を聞くと、同じように英語で苦しんできた私はとても胸が痛くなります。。。

アメリカで仕事をするのに英語を使わなくてはならないのは当然で、そのためには日々の精進が必要です。でもそんな建前論は、ここではどうでもいいでしょう。「英語?そんなもん、わかるかっ!」というのが偽らざる私の本音です!

 

 

 

 

 

6件のコメント

  1. 私は比較的英語は苦労しなかったのですが、未だに発音では苦労しています。
    最も苦手意識を持っているものの1つは、”Rhythm”です。ECGを教えていて、”What’s the rhythm?”と聞いて、”The reason is…..”とか答えられるとやる気が抜けて行きます、、。気をつけてやっと60%の頻度で1発で通じるくらいでしょうか(笑)。
    そして、カテ室にて、”Can I have JR4?”と言って、JL4が出てくると日本人のLとRの話は本当だったんだなあ、、と実感します。スタッフに今度JRと言ってJLが出て来たら日本に帰るから、と脅してやっと最近では向こうが気を使ってくれるようになりました(笑)。
    発音矯正クラスを取ろうと真剣に考えつつ、まだ取っていません、、。

    • ユミ先生でもそうなんですか!私の苦手な発音は、12 (twelve)、problem (私の発音ではprogramと聞こえるらしいです)、AllenやAllergyなど、やはり、L(エル)がらみの単語です!たかが英語、されど英語ですね。

  2. そうですね。はなすことです。あとは開き直りです。あとは大学病院をはなれると、インド人だらけになりますので、聞き取りもかなり困難となります。インドなまりの英語になれるのは大変です。でもフェイスツーフェイスでなんとかなります。カルテも判読不能でしたが、最近は電子カルテになってほっとしています。僕が来て最初にわからなかった英語にLet It Go。があります。直訳するとそれを進めろと解釈してワイヤをすすめたら、ばしっとてをたたかれました。手を離せという意味でした。まぁ英語はまる覚えがいいですね。最近はパワースクライブで音声入力ですが、数字の2がかならずTOとなってしまいます。1.234と音声入力すると、けっこうな確率で1to34となります。まぁインディアンバージョンとかあるみたいなのですが、ジャパニーズバージョンはないようです。自分の発音を覚え指すこともかなり改善しましたが、まだまだです。3kag

    • コメントありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。当初、私は自分のへたくそな英語を聞かれるのを人に聞かれるのが恥ずかしくて人前でディクテーションができず、誰もいない小部屋を探してやっていました。途中からは吹っ切れて、「そこで俺の下手くそな英語でも聞いていやがれっ!」てな感じで、どこでも大声で電話に向かってディクテーションするようになりました。その頃から、(英語が下手でも)恥ずかしさがなくなり大きな声で会話ができるようになり、コミュニケーションの効率がぐっと上がりました。もちろん、仕事の効率も上がりました。やはり、「開き直り」は大切ですよね。

  3. 5プロツッカー懐かしいですね。
    ええ、私も術中低血糖の患者さんに50プロのツッカーを入れたい時に、それを英語で言えなくて、ドイツ人ナースに「ツッカー!!!」叫んで事なきを得たことがあります。

    ありがたや、ドイツ人同僚。

    • そうですか!ツッカー、本当にドイツ人に通じるんですね!感動ものです!

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