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宮田(野城)加菜

ブログについて

日本の医療、在米邦人の方々の医療に少しでもお役に立てるよう、情報を発信していきたいです。

宮田(野城)加菜

東京医科歯科大学医学部を卒業後、腎臓内科研修を開始。在沖縄米国海軍病院を経て2011年夏よりアメリカ、ニューヨークにて内科研修後、ロサンゼルスにて腎臓内科専門研修を行い、指導医となりました。

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私は昨夏ロサンゼルスに移り、念願の腎臓内科専門研修(フェローシップ)を開始して、早くも半年が経ちました。自分が本当にやりたかったことが毎日できるということは、幸せなことなんだな、と実感しています。どんなに頻回に緊急透析で夜間呼び出されても、患者の急変で夕方遅くまで帰宅できずとも、なんとなく毎日充実感で溢れ、さらにいきいきとしてくる自分を不思議に思います。

さて、米国レジデンシーに入るための参考書は今までに何冊も出版されていますが、専門研修(フェローシップ)に関してはあまり知られていないと思いますので、私や友人の経験を基にここに記載しておきたいと思います。

レジデントというのは研修医。その科の一通りの疾患を診ることができるようになるために、内科や家庭医療科は3年間、外科は5年間、産婦人科は4年間などと決まった期間研修します。あまりにも評価が悪い場合は落第することもありますが、大抵のレジデントは決められた期間に必要とされる分野を習得し、卒業していきます。例えば内科レジデンシーを修了すると、一般内科のアテンディングとして、ひとりで患者を見ることが許されるようになり、開業医グループに入ったり、病棟勤務医として働くことができます。私の内科プログラムからは毎年30人近くが卒業しますが、3分の1程の人は一般内科のアテンディングとして働くことを選び、3分の2の人はさらなる専門分野(血液腫瘍内科、呼吸器集中治療科、老年病科、消化器内科など)の研修に進むという印象です。一般内科アテンディングの給料は、専門研修を継続するよりも数倍良いものですから、“とりあえず忙しかったレジデンシー生活からの休憩”や“とりあえず医学部学費の借金を返してしまいたい”という理由で、専門研修を将来やるつもりでも数年先送りして、まずは一般内科のアテンディングをやるというアメリカ人レジデントもとても多いです。

日本から渡米する先生方は、多くの場合すでに日本で専門研修を開始されており、内科レジデンシーを始める前からどのフェローシップに行きたいかが決まっている人が多いように思います。私もそのうちの一人、腎臓内科を日本で始めて、腎臓内科を学びたくて渡米を決意し、そのために内科レジデンシーに入りました。もちろん、専門を診る前提として、内科医として全身を診ることができなくては本末転倒ですから、内科をみっちり3年間研修できたことは大きな収穫でもありました。

さて、フェローシップの応募もレジデンシーと全く同様で、まず履歴書やPersonal Statement(志願理由書)、所属する内科プログラムからの推薦状などを行きたいプログラムに提出し、面接に呼ばれれば面接に行き、希望のプログラムの順位を提出してマッチングが行われ、全員同日にマッチ結果が公表されます。少しでもいいプログラムに行くためには、その分野で有名なアテンディングからよい推薦状をもらうこと、日常の内科研修でよい評価をもらうこと、興味分野の研究に携わり論文作成や学会発表に少しでも多く取り組むこと、が大切とされています。もちろん、USMLEの試験結果も関係してきますが、こちらに関しては内科レジデンシー開始以前に終わってしまっていることなので、3年間の努力でどうにかできるものではありません。同様に、アメリカの医学部を卒業していないという点が一つ欠点として残りますが、こちらも仕方ないことですので、他の点で挽回する必要があります。幸い私は渡米した直後に、フェローシップマッチで大成功された日本人の先生にアドバイスをいただけたおかげで、レジデント1年目からフェローシップに向けたよいスタートが切れました。腎臓内科のアテンディングたちと臨床研究をしたり、学会発表の症例をもらって一緒に取り組んだり、有名な腎臓内科の先生が他州からいらっしゃるときには呼んでもらい講義に入れてもらったり、また時にはアテンディングの一家と別荘に泊まりがけで連れてもらったり、コンサートに連れていってもらったり。。。腎臓内科部長始めその科のアテンディングたちにとてもお世話になった3年間でした。

腎臓内科のフェローシッププログラムは全米で130箇所程度、毎年400人程のスポットがあります。人気のないプログラムは埋まらないということもありますが、人気のあるプログラムはもちろん競争率が高くなります。特に私の場合、希望はアメリカ人が大勢住みたがり、競争率が激しいカリフォルニア。当時の彼氏(現在の夫)がすでに翌年ロサンゼルスに移ることがわかっていましたので、どうしてもロスに行きたかったわけです。誰に聞いても、IMG(international medical graduate)にはカリフォルニアは厳しいよ、と言われるばかりでしたので、これは実際に行ってみて気に入ってもらうしかないと考えました。レジデント2年目の“選択期間”を使ってロサンゼルスの現在の病院で腎臓内科のローテーションをさせていただきました。私の一ヶ月間の給料や医療訴訟保険が研修中のニューヨークの病院からカバーされる点など、50枚ほどの書類を数か月間かけて準備して病院間の契約書を結んでもらい、やっとその病院のレジデントとして働かせていただく準備が整いました。その1か月間は、コンサルトの患者を何人も持たせてもらい、透析カテーテルを入れるなどの手技をやったり、カンファレンスで積極的に質問をしたり、ラウンドで読んできた論文を参考に挙げたり、精一杯働いたおかげで、アテンディングやフェロー達にも気に入ってもらうことができたようです。アカデミックでかつ臨床の力も十分に養える、理想的なプログラムでしたので、第一希望として提出した結果、無事マッチすることができました。

最近の傾向として、全米で腎臓内科の人気は落ちてきており、希望のプログラムに行くことも以前ほど難しくなくなってきています。その他の内科のフェローシップとしては、循環器内科、消化器内科など手技が多い(=給料がよい)科は相変わらずアメリカ人に人気で、難易度が上がります。抗がん剤治療もよいお金になりますので、血液腫瘍内科も年々難しくなってきています。逆に、手技が少ない(=給料がそこまでよくない)膠原病や感染症科はあまり競争が激しくないようです。緊急性のないアレルギー科は、医師のQOLが良いこと、プログラム数が少ないことなどから難関のようです。いずれもトレンドは年々変わりますので、最新の情報を手に入れて準備に取り掛かることが大事だと思われます。

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