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宮下浩孝

ブログについて

腫瘍内科の歴史が長い米国での臨床トレーニングの体験をシェアすることで、医学生や若い医師が腫瘍内科に興味を持つきっかけになりたいです。

宮下浩孝

2017年東京大学医学部卒業。東京大学附属病院での2年間の臨床研修、ニューヨークのマウントサイナイベスイスラエルでの3年間の内科研修を経て、2022年7月からダートマス大学にて血液、腫瘍内科フェローシップを開始。 固形腫瘍に対する新たな治療の確立に貢献したいと考えています。

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2023年4月は家庭の事情で、1か月間のお休みをいただきました。私が所属している研修プログラムでは事情に合わせて特別にお休みをとれるようになっており、1か月間休みましたが、プログラムの修了には差し支えないようにしていただきました。前の病院でも感じましたが、アメリカの職場は家庭や家族を理由に休みを取りやすいようになっており、あくまで家族優先で行動できるような仕組みになっています。

5月は職場に復帰し、今年度2度目の腫瘍内科コンサルトとして勤務しました。平日は朝8時から夕方5時(過ぎることもしばしばですが)の勤務で、プラスアルファで木曜午前の外来と、週に大体1度の夜間オンコール、月におよそ1度の週末オンコールを担当します。前回は昨年12月に同じ研修を行いましたが、当時に比べて知識や経験も増えたため、より独立して勤務ができたように思います。

前回12月の記事で腫瘍内科コンサルトについてはある程度書きましたので、今回は同時に行う凝固異常コンサルトについてご紹介したいと思います。

 

凝固異常コンサルト

病棟に入院している患者さんのうちで、血栓症や出血傾向などの問題がある患者さんがコンサルトされます。特に合併症のない深部静脈血栓症の治療に関してコンサルトされることはほとんどなく、それに加えて出血のリスクがある症例でどのような抗凝固が適切かといった質問や、抗リン脂質交代症候群の患者さんの抗凝固に関するコンサルト、また、病棟特有なものとして、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の対応などを質問されます。HITに関しては、業務分担上、一般的な血小板減少は血液内科コンサルトが診察する一方で、ひとたびその原因がHITだと判明したらそれからは凝固コンサルトが診療を続ける、というやや煩雑な手続きが存在します。

一方で出血傾向に関するコンサルトは様々で、血友病や肝疾患などの凝固因子に関するもの、Von Willebrand Diseaseなどの血小板異常を疑う症例などのコンサルトを受けます。血栓症かつ出血傾向のものとしては、播種性血管内凝固(DIC)がしばしばコンサルトされますが、治療は原疾患の治療に終始するため、DICだけを理由にコンサルトされることは稀です。

直接経口抗凝固薬(DOAC)の出現とともに、血栓症の治療は患者さんにとってかなり受けやすいものとなりました。それまではワーファリンを使って、定期的に採血をおこない、抗凝固の程度をモニターする必要がありましたが、DOACによって、その必要が多くの場合でなくなりました。一方で治療を提供する側としては、どの症例ではDOACを使ってよいか、またそれを支持する十分なエビデンスがあるか、ということに関してより詳細な検討が必要となりました。例えば同じ抗リン脂質抗体症候群でも、Triple positiveと呼ばれるAnti B2GP1 Ab, Anti cardiolipine Ab, lupus anticoagulantがすべて陽性の症例ではDOACよりもワーファリンが適切とされていますが、それ以外の抗リン脂質抗体症候群の症例では、DOACを使用してよい場合も多いとされています。このあたりのエビデンスは日々新たなものが示されているため、新しい知見を逐次フォローアップしていく必要があります。

 

2023年6月は今年度2回目の血液内科病棟での勤務になります。これをもってフェローシップの1年目が終了になる最後のローテーションなので、気を引き締めて取り組みたいと思います。

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