昨年の11月と12月は2度目のVeterans Affairs(退役軍人病院)でのローテーションでした。昨年1月から2月の研修とほぼ同様の勤務内容でしたが、血液内科、腫瘍内科の知識、経験が増えたことで、より独立して診察、治療にあたることができたと感じました。General hematologist/oncologistの診療は、日々アップデートが必要な知識量が非常に多く、日々学習していくことが必要です。日本では血液疾患とがんの一般的な診療を広く行う医師はあまりなじみがないため、この研修ができたことは貴重な経験になったと感じております。
2022年の記事で言及しましたが、hematology/oncology fellowとして当直業務があります。今回はそのスケジュールや業務内容についてご紹介したいと思います。
オンコール
平日の営業時間外(午後5時から午前8時)の間、電話での問い合わせに対応する業務です。平均的に週に一回程度、担当が回ってきます。腫瘍内科は病棟がなく、化学療法を受けている症例についても、Hospitalistが主治医として夜間も病棟対応を行うため、腫瘍内科のオンコールが病院にいる必要はありません。血液内科は病棟がありますが、レジデント(内科研修医)が病棟対応を行うので、血液内科のオンコールとしても病棟にいなくてよいとなっています。彼らは一般的な内科疾患の対応に精通しているため、ほとんどの緊急対応をしてくれますが、血液内科、腫瘍内科に関する専門的な質問がある際に私にPagerで連絡をくれて、電話口で対応について話し合うという流れです。すでに血液内科、腫瘍内科がフォローしている症例だけでなく、新たに血液、腫瘍内科のプロブレムが発生した症例のコンサルトも受けますが、ほとんどの場合は病院に行って直接診療するのではなく、電話で初期対応のアドバイスをして、営業時間になってから担当チームが正式にコンサルトを行います。
病棟対応以外に対応することとして、血液内科、腫瘍内科の外来患者さんが自宅で新たな症状が発生したり、その他質問がある際に病院電話番を通じてオンコールに連絡が来ます。自分のPCで自宅から電子カルテにアクセスできるため、そこで診療記録を見ながら患者さんと電話し、必要に応じて、救急外来の受診、経過観察、薬局への処方を行います。対応内容について電子カルテに記録して、外来主治医にメッセージでアップデートするという流れです。救急外来に患者さんを送る場合には、その救急外来に電話して患者さんの背景や治療内容、救急で行ってほしい検査や治療についてあらかじめ伝えておきます。
その他の内容としては、外来患者さんに関して、検査室から緊急対応を要する検査値異常(Critical Value)についての連絡を受けることがあります。白血病や化学療法中のがん患者さんが多く通院されているので、Critical Valueとタグが付く好中球減少、血小板減少は頻繁にみられますが、多くの場合は想定されていた異常であり、本当に緊急対応が必要なことは稀ですが、検査値異常を受けて救急外来受診を進めることもあります。
当院での特殊な対応内容として、ニューハンプシャー州、バーモント州の他の病院からのコンサルトを受けることがあります。これらの州は人口が少なく、多くの病院は小規模で血液、腫瘍内科の専門医がいません。そういった病院の救急外来や病棟の患者さんについて質問がある場合にもオンコールに連絡が来て、対応について話し合います。必要であれば当院への転院を行います。転院とならなかった場合は、営業時間になってもコンサルトチームが直接診察できるわけではないので、完全なコンサルテーションサービスを提供できるわけではないのですが、可能な限りでのアドバイスをするように努めています。
これらの電話対応が一晩でおよそ5-10件ほどあることが多いですが、一件当たり15-30分弱で対応できるので、夜間寝られないということはほとんどありません。1年目と2年目のフェローでオンコールを回しているので、あと6か月程度で当院でのオンコールは終わりになりますが、意外にオンコール中の症例で文献を調べることも多いため、良いlearning opportunityと考え、精一杯対応にあたりたいと思います。
2024年1月は二度目のNeuro oncology外来のローテーションです。幸い1月の1週目は休暇をいただけたので、ゆっくり休んでから研修に戻りたいと思います。