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新道悠

ブログについて

日本でも徐々に拡がってきている緩和医療と、高齢化が進みながらもあまり馴染みの無い老年医学について、米国でのフェローシップを通じて学んでいく予定です。 私自身、卒後8年目での渡米で、日本での医療をよく知る医師の一人として、日米の医療の違いなども含めて、日本人の先生にシェアしていきます!

新道悠

2012年に千葉大学医学部を卒業後、福岡県の飯塚病院/頴田病院にて初期研修医と総合診療専門医(家庭医)の専門研修を行う。 卒後8年目の2019年よりNYのMount Sinai Beth Israel 病院の内科にてレジデンシーを行い、2022年からMount Sinai Hospitalの老年/緩和フェローとして勤務中。

老年医学フェローによるワークショップ

筆者の所属する老年医学フェローシッププログラムでは、フェローによる医学部生に対する老年医学スキルワークショップを行なっています。

ワークショップでカバーされるのは、老年医学の5Mのうち3つのMでMobility(運動機能評価)、Medication(薬剤チェック)、Mind(認知機能にフォーカス)で、老年医学フェローが事前にファシリテーターとしての打ち合わせを行なってからステーションを担当します。

ワークショップの流れ

ワークショップの目的は、実際の診療ですぐに使えるスキルを学ぶことなので、どのステーションも模擬患者を想定したファシリテーターのケースを元に、病歴聴取+診察+鑑別などを話し合った後に、短いレクチャーが行われます。各ステーションはフィードバックも含めて20-25分くらいで行われます。

運動機能評価ワークショップ

今回は、ワークショップステーションの中でも運動機能評価のワークショップについて解説します。
流れとしては以下のようになります
  1. 自宅での転倒を主訴に定期外来に来院した高齢患者さんのケース
  2. 学生さんに5分くらいで病歴聴取をさせてフィードバック(転倒の状況、転倒歴、原因となるもの:めまい/失神/バランス/筋力低下、普段のADL/IADLや補助器具、薬剤など)
  3. どのような身体所見をとりたいか(起立性低血圧の評価の仕方、認知機能のスクリーニング、視力/聴力など)
  4. 歩行とバランスについてフォーカスしたレクチャー
  5. 補助器具についてフォーカスしたレクチャー

高齢者の運動機能スクリーニングあれこれ

ここでは、歩行/バランス評価のレクチャーで解説するスクリーニングについて紹介します。

  • 手すり付きの椅子を壁に背もたれをつけて固定した状態からスタート
  • 3 m (10Feet)先まで行って引き返して座るまでの時間を計測
  • 補助器具が必要なら使用可能
  • 12秒以上かかると転倒リスクが高い可能性あり
  • 長い廊下がある場所などで実施
  • 計測するのは「4mの距離を5秒以内(0.8m/sec以上)で通過できるか」ですが、加速用の1m、減速用の1mを計測部分の前後に設けるのが必要です
  • 患者さんには普段の歩行スピードで、普段と同じデバイスなどを使用して歩いてもらいます
  • 歩行器などを使ってる患者さんでも判定できるのが良いです
  •  30秒の間に椅子の手すりを使わず何回椅子から立ち上がれるかを計測します
  • 年齢性別でカットオフが少しずつ異なります
(https://www.cdc.gov/steadi/pdf/TUG_test-print.pdf)
  • 患者さんのそばにいて、バランスを崩した場合に備えます
  • 特にバランスに不安がある場合に好んで実施されます

杖の選び方

杖についてのレクチャーポイントとしては

  • 適切な杖の長さは患者さんが起立時の手首の関節の高さ(前腸骨棘というせつもありますが、高齢者の場合は脊椎の圧迫骨折/湾曲などで上半身が短縮してることがあるので手首が推奨されています)
  • 左の真っ直ぐの杖から湾曲のあるもの、4本足のものになるにつれてかけられる荷重が増えます
  • 少しバランスに不安があって、時々しか荷重しない(平衡感覚/視力異常など)→真っ直ぐな杖
  • 片側の体に免荷が少し必要(股関節/膝の変形性関節症など)→湾曲杖片側の体に免荷が少し必
  • 片側の体に免荷がかなり必要(片麻痺)→4本足の杖

など、杖の適切な高さの調整から、一般的な杖の種類と選び方についてレクチャーをします。

まとめ

今回は、老年医学フェローとして医学生に行う運動機能評価ワークショップについてその内容を運動機能評価スクリーニングと杖の選び方/調整方法レクチャーについて紹介しました。

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