老年医学フェローによるワークショップ
筆者の所属する老年医学フェローシッププログラムでは、フェローによる医学部生に対する老年医学スキルワークショップを行なっています。
ワークショップでカバーされるのは、老年医学の5Mのうち3つのMでMobility(運動機能評価)、Medication(薬剤チェック)、Mind(認知機能にフォーカス)で、老年医学フェローが事前にファシリテーターとしての打ち合わせを行なってからステーションを担当します。
今回は、その中でも認知機能評価に関するワークショップについて紹介します。
認知機能評価ワークショップの目的と概要
認知機能ワークショップを受ける医学生の学習目標としては以下の項目が挙げられます。
- 認知機能に変化があった患者さんから病歴を聴取する
- ADL/IADLについて聴取する(練習)
- 認知機能評価テストの実施の練習(MoCAを使って)
- Mini-Cogなど他のスクリーニングテストのレビュー
概要としては、30分のセッションのうちで、最初の5-10分程度でロールプレイを通して認知機能低下の可能性がある患者さんからの病歴聴取で聞きたいことのチェック、ADL/IADLの評価の仕方を確認します。
その後、学生は前もって代表的な認知機能スクリーニングテストであるMoCAの実施のデモビデオを見ているので、模擬のシナリオを使いながら認知機能低下に関する病歴聴取、ADL/IADLの聴取を5-6分ほどで。
病歴の聴取で想定している項目としては以下のような項目が挙げられます。
- ADL/IADL
- 認知機能低下の原因を鑑別できる病歴(進行の仕方、脳梗塞などの既往、パーキンソン症状、性格変化や幻覚など)
- せん妄、興奮、身体的/言語的な攻撃性など
- 症状のタイプ(言語、失行、記憶、注意)
- 聴力、視力、失禁、体重減少、睡眠、転倒など老年医学的なROS
- 薬剤
- 家族歴
- 社会歴:教育レベル、職業、アルコールやドラッグの有無なども
- サポート体制や家族/ケア提供者の状況
その後、少しフィードバックと短いレクチャーを挟んでMoCAを使った認知機能評価の練習を行います
MoCAの練習と老年医学外来実習
施設によってどの認知機能スクリーニングを使用するかは多少違いがあるようですが、私のフェローシップを行っている病院ではMontreal Cognitive Assessment (MoCA)を使うことが多いです。(ライセンス的にも他の有料のスクリーニングと違い、無料でトレーニング/使用が可能)
MoCAなどの認知機能スクリーニングは、それぞれの評価項目で推奨される実施の仕方、患者さんへの指示の仕方があるので、それを一つ一つ確認していきます。
医学生に特にこのMoCAを練習してもらう理由の一つに老年医学科での外来実習が挙げられます。
私の所属する病院では医学部生は必ず老年医学の入院チームと外来診療をローテションで回るので、特に外来ローテーション中によく出会う認知機能に関するコンサルト症例に対してMoCAを実施してもらうことがあるので練習を事前に行うことが必須になっています。
老年医学フェローがワークショップを担当する意義
私の所属するフェローシッププログラムでは、医学部が併設されている病院であることもあり、医学生と一緒に働くことが多いです。
医学生に診療の合間に教育を行うこともフェローの仕事の一つなので、今回のワークショップのような予め教える事がある程度カリキュラムとして定められていて、事前の準備なども明確に用意されているワークショップは、駆け出しの指導者であるフェローにとっては教育に関わり始める立場としてとても有意義な経験でした。