ついにアメリカでもカテーテルによる大動脈弁置換であるSapienがFDAに認可されました!とりあえずは大動脈弁置換の手術のリスクが高すぎてオペ不可能だと評価された患者さんのみが対象ですが、カテーテルによる弁膜症治療の第1歩を踏み出したと言えるでしょう。重度の大動脈狭窄症の治療には開胸による心臓手術が必要となりますが、心臓手術は体に負担が大きく、リスクの高い患者さんに対してのカテーテルによる弁膜症の治療はとても魅力的なオプションです。
さて、私の専門は循環器、その中でもinterventional cardiology(循環器インターベンション)です。アメリカでは循環器のインターベンション(いわゆるカテーテル治療)をするためには、循環器のフェローシップの後、最低1年間のインターベンションのフェローシップが必要です。この循環器インターベンション、もともとは冠動脈インターベンション(PCI)が中心でしたが、最近ではどんどん多様化してきています。
まずは抹消動脈のインターベンション。鎖骨下動脈、腎動脈、そして足の血管のカテーテル治療も最近ではほとんどの心カテ室で行われています。まだ新しい分野ではあるので、データは少なく、用いる器具も様々で冠動脈のように標準化されていせん。最近は循環器内科のドクターが末梢動脈の超音波診断も行うようになってきています。私も実は最近、この超音波診断の講習を受けに行ってきました。足の血管は血管外科の領域ではあるので、循環器内科と血管外科での症例の取り合いになる感が否めず、いかに協力してやっていくかも大事なポイントです。
そして頸動脈狭窄症に対するインターベンション。脳梗塞の原因となる頸動脈狭窄症には頸動脈内膜剥離術(CEA)が標準の治療ですが、最近手術のリスクが高い患者さんにはステントによる治療が可能になってきました。まだまだいろいろなデータが発表されている段階で、適応となる患者さんがはっきりと定まっていない印象ですが、この頸動脈ステント治療、循環器のインターベンション専門医が行っている病院も多いようです。私の病院では循環器科医はこの治療を行っていませんが、今後は血管外科と神経内科とのチームによるアプローチが必要になってくると思います。
ここに今回の弁置換が加わると循環器インターベンションもさらに幅が広がります。カテーテルによる大動脈弁置換術は既にヨーロッパではほぼ標準治療となってきています。今後さらに進む高齢化社会、そして弁膜症の頻度を考えても、これはインターベンション専門医なら誰もが習得したいと思っている技術ではないでしょうか。私の病院でも同僚と、いかに今後この技術を取り入れていくかがホットな話題となっています。カテーテルによる弁膜症の治療としては僧帽弁逆流症も現実的になってきており、これからが楽しみです。