小児がんの主要な発生原因が、正常細胞に生じた遺伝子異常であることは、はっきりしていますが、その遺伝子異常が起こる原因はまだ未解明です。生まれつき小児がんを発生しやすい遺伝背景も知られていますが、小児がんの原因としてはごく一部に過ぎません。食生活などの環境因子が小児がん発生に与える影響はほとんど無いと考えられています。小児がんにおいては、早期発見のための検査やスクリーニングはあまり有効ではなく、いまのところ小児がんの予防は確立されていません。
成人のがんと同様に小児がんも、体のあらゆる部位に発生しますが、頻度はずいぶん異なります。成人のがんで多い、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどは、小児期にはほとんど発生することはありません。小児多いのは、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽細胞腫といった、血液や神経細胞を起源とするがんです。症状は、がんの種類や発生部位によって様々です。白血病では、発熱などの全身症状のほかに、正常な血液が作られなくなるため、貧血や出血といった症状や、白血病細胞が異常に骨髄で増殖するため、痛みも生じます。脳腫瘍では、頭痛に加えて、痙攣や麻痺などの神経症状で発症します。それ以外の固形腫瘍の場合、大きな腫瘍が周辺の臓器を圧迫するためにおきる症状が特徴的です。
(続く)
ブログについて
小児がんの診療と研究における最新の話題を提供したいと思います。米国のNational Cancer Instituteが発行しているCancer Bulletinや学術雑誌などから、米国発の関連ニュースを提供したいと思います。日本ではなかなか情報が入らない、新薬の治験結果なども積極的に取り上げたいと思います。
寺島慶太
名古屋大学医学部を卒業し、6年間の国内研修後、ニューヨークで小児科レジデント研修を行う。その後ヒューストンで小児血液腫瘍および小児脳神経腫瘍フェローシップ研修を行う。現在、小児腫瘍専門医として、テキサス小児病院およびベイラー医科大学で、小児脳腫瘍の診療と研究に従事している。日本で小児脳腫瘍の包括的診療研究プログラムを立ちあげるのが目標。
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