(この記事は、『アメリカでお医者さんにかかるときの本』の内容を一部抜粋・修正して掲載しています。書籍の概要は保健同人社、Amazonでご確認ください。)
前回に引き続き、アメリカの医療保険のしくみをみていきましょう。
・保険プランを選ぶときに気をつけること
雇用主を通じて保険に入る場合には、数種類のプランに絞られることが一般的ですが、自分で加入する場合は多くの商品があるので、どれが最適な保険なのかを判断して選ぶのはたいへんかもしれません。
保険プランを選ぶ際にしっかり確認しなくてはいけない項目は、保険料(Premium)と自己負担割合(Coinsurance)、免責額(Deductible)、最大自己支払額(Out-of-Pocket Maximum)、ネットワーク内医療提供者(In-Network Provider)です。
Premiumは月々の保険料の支払額のことです。
Coinsuranceは、医療サービス料金の何割を自分が支払い、保険が何割を支払ってくれるかという自己負担割合を示します。日本では一般的にこれが3割ですが、アメリカでは保険プランによっては2割や1割などと数字が異なってきます。
Deductibleは、保険が適用される前に個人で負担する金額のことを指し、一般的には年間の総額があらかじめ設定されています。たとえばDeductible が年間500ドルだった場合、1年で最初にかかった医療費のうち500ドルは100%自分で支払わなくてはいけません。500ドルを超えると、医療保険の支払いが始まり、Coinsuranceなどに応じた割合の自己負担が生じることになります。最近はHigh Deductibleといわれる保険プランが増えてきており、年間5000ドルや1万ドルといった高額の自己負担が必要となる場合があります。
Co-paymentは、外来1回につき自己負担する固定額のことです。
Out-of-Pocket Maximumは、年間に自己負担すべき最大額で、自己負担総額がこれを超えると、それ以降の医療費はすべて保険で支払われることになります。
In-Network Provider は、その保険プランで受診可能な医師や医療機関のことです。これに含まれていない医師や医療機関にかかると、上記のCoinsuranceやDeductible の設定が高くなり、より多くの自己負担金が生じるか、もしくは全額が己負担となってしまいます。
・アメリカの保険商品のしくみ
アメリカでは、前項で説明した要素の組み合わせによって、さまざまな保険商品が作られます。似たようなしくみのものとして、車の保険をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。Deductible(免責額)が高いと、一般に保険料は安くなります。ここ数年、保険料が高騰していることから、数千ドルのDeductible を設定することで保険料を抑える商品が増えてきています。このタイプの商品では、保険が利くまでにかなりの額が自己負担となるため、被保険者は無駄な受診を控えようとします。そのため、結果的に受診抑制効果を生み出し、保険会社が支払う金額が少なくすむため、保険料が低くなるというわけです。また健康を保ったほうが出費が抑えられるので、被保険者がより健康に気をつかうようになるという効果も期待されます。
なお、歯科保険と眼科保険は別枠で提供されることが多いため、注意が必要です。自分で保険に加入する場合、歯科保険や眼科保険がプランに含まれているか確認し、含まれていなければ別に加入する必要があります。歯科や眼科も他科と同様に、保険外の自己負担で受診すると非常に高額になります。眼科保険は一般的に眼鏡やコンタクトレンズ購入もカバーします。
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