間違い探しです。
上記の病院のうち、ボストン近郊に実際に存在しないものはどれでしょう?
こたえ: OSH:Out Side Hospital
私の臨床経験はフェローからでしたので、医学生あるいはインターンを経験したものなら当然のように知っている略語が分からなくて相当苦労したものです。その際たるものが、このOSHなる病院。ERやらICUから送られてくる患者さんの記録にしょっちゅう出てくるのが、このOSH病院でした。ボストン近郊の病院は大抵の場合、3文字あるいは4文字での略称がついているので、このOSHも当然、どこかの病院の略称だと思ったわけです。
あんまり患者さんを搬送してくるので、
「この、OSHちゅー病院はひどいところですね。一体どんな病院でしょうか!?」
と、周りに聞いてしまったほどです。
当然、周りは失笑です。
親切な同期がそっと教えてくれなければ、私のなぞはいまだになぞのままであった可能性があります。
このOSH、Oーなんちゃら、Sなんちゃら、HOSPITAL、の略ではなく、Out Side Hospital、つまり、院外からの搬送、の略語だったのです。要は、ブリガム以外の病院から搬送されてきた患者さん、あるいはうちの病院以外の病院への通院暦のある患者さんはすべてOSHの患者さんになっているのです。いまだにカルテ上にOSHの文字を見ると、思い出し笑いをしてしまいます。
以下、ボストン市内近郊のメジャーな病院の早分かり案内です。
BWH: Brigham and Women’s Hospital ハーバード医学部の教育基幹病院としてMGHと張り合おうとしていますが、天下のMGHさまには及ばないのです。でも、うちのほうは臨床重視だから!と言い訳していますが、二番手は二番手です。稼ぎを出すことはMGHよりは上手だと思われます。MGHとはなんだかんだ言いながらも縁の切れない仲の悪い兄弟です。何かあるときはお互いに頼りますが、それは本当に最終手段です。
MGH: Massachusetts General Hospital 天下のMGH様。有名な本にはMen’s Greatest Hospitalとして登場したこともある、歴史、実績ともにナンバー1の病院。New England journal of medicine はここの院内誌。BWHとともにハーバードの教育基幹病院。MGHとBWHでパートナーズという巨大な医療グループを作っています。
SSH: South Shore Hospital ボストンの南のほうにある民間病院。パートナーズの系列病院。比較的諦めが早く、さっさとMGHやBWHに搬送手続きをとる。ちょっと遠いので、来るときはヘリで送り込んでくることが多い気がする。
MAH: Mt. Arbon Hospital 川の向こう側、ケンブリッジ側にある民間病院。地味で少数ながらここもハーバード系列だったりする。だが、その事実は知らない人も多い。民間病院なので、小奇麗。
OSH: Outside Hospital 手に負えない患者さんを次々と外に送り出すひどい病院、ではなく、院外、という意味の略語。
BMC: Boston Medical center ボストン市内、近郊の外傷を一手に引き受けているボストン大学の付属病院。え?癌?それ、なんていう外傷?というジョークはここでしか通じない。市民病院としての役割もあり、市から結構な予算をいただいているらしい。羨ましい。
TMC: Tafts Medical center かつての名前をNew England Medical Center, NEMCという、タフツ大学医学部の付属病院。地味ながら、歯学部、フローティング子供病院をそろえている。実は歯学部はトップレベル。ボストンのダウンタウン、中華街のど真ん中にあるため、院内の張り紙の半分は中国語いう不思議な空間。黒人の技師さんが意外と見事な中国語を話してくれるので、夜中に行くと結構癒される。
DFCI: Dana Farber Cancer Institute 入院施設を持たない癌センター。外来機能にのみ特化し、入院が必要ならば、お隣のブリガムに丸投げという潔い診療体制。製薬会社と組んだ最先端の治験がガンガン行われているが、プロトコールがすべて数字とアルファベットの羅列なので、カルテをみても何をしているのかがさっぱり分からない謎なプロ集団。
BIDMC: Beth Israel Deaconess Medical Center ブリガム、MGHとならぶハーバード医学部教育基幹病院。だが、万年赤字のためパートナーズの参加できなかったという比較的暗い政治的過去がある。最近はハーバードバンガードというプライマリケアグループと契約を結び、打倒パートナーズに全力を注いでいる。
Outside hospitalと言えば、私はどうしてもあのYoutubeで数年前にヒットしたジョークのビデオを思い出さずにはいられません。見ていない人はぜひどうぞ。YoutubeでOutside hospitalで検索できます。”We can cath you.”
見ました。そのビデオ。
アカデミックホスピタルのレジデントのフラストレーションがよく伝わる名作だと思います。大笑いをしてしまいました。
プライベートホスピタルのレジデント上りとしましては、OSHの気持ちもよく分かるので、ちょっと微妙な気持ちになります。
御返事遅くなりました。すみません)