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青柳有紀

ブログについて

アメリカで得られないものが日本にあるように、日本では得られないものがアメリカにはある。感染症、予防医学、公衆衛生学について、ニューイングランドでの日常を織り交ぜつつ、考えたことを記していきたい。

青柳有紀

Clinical Assistant Professor of Medicine(ダートマス大学)。国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒(学士編入学)。現在、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびルワンダ共和国医師。米国内科専門医。米国感染症専門医。米国予防医学専門医。公衆衛生学修士(ダートマス大学)。

10月11日に、American Board of Internal Medicine (ABIM)が主催する、2012年度のSubspecialty Board on Infectious Disease Certification Exam(米国感染症科専門医試験)が実施されました。2年間の感染症フェローとしてのトレーニングを終え、現在は3年目のフェローおよび予防医学科のレジデントとして勤務している私も、この試験を受験してきました。

 

米国の感染症フェローシップは基本的に2年間で、多くのプログラムでは1年目は病棟のコンサルト業務を通して臨床感染症を学び、2年目は週1回の外来や週末のオンコール業務を担当しつつも、病棟でのコンサルト業務自体は1−2ヶ月程度に制限され、研究中心の勤務形態をとることが一般的です。研究を継続するために3年目のフェローを行う医師は一部のアカデミックな施設を除けば少数派で、その場合、2年目を終えた時点で専門医試験を受験するか、3年目を終えた時点で受験するかは、各自の判断に任されています。

 

私にとっては、ちょうど10年前に前職を辞して医学部に学士編入したもともとの理由が、「世界で通用する感染症専門医になること」だったので、今年この試験を受験して、一日でも早くboard certifiedされることは自明の目標でした。また、来年の同時期に米国予防医学専門医試験も控えているため、目の前の課題を可能な限り片付けておきたいという気持ちもありました。

 

当日は州都のコンコードという町のテストセンターで受験したのですが、私の隣の席に座っていたのは、オフィスが斜め向かいの指導医の一人でした。ABIMは各領域の専門医試験を10年ごとに更新することを求めています。彼女は今回が2回目の更新とのことでした。試験はコンピューター形式で、120分で60問を解くセッションが4つありました。正味8時間のかなり精神的にも体力的にも疲弊する試験でしたが(更新試験の場合は3セッションのみ)、無事にまずまずの成績で合格することができました。

 

試験結果は、最初にメールで通知が届き、それから数日後に詳細なスコア・レポートが郵送されてきます。公表された今年のデータによると、初回受験者の合格率は95%で、(不合格による)再受験者の合格率は42%、全体の合格率は90%とのことでした。

 

試験を終えてみて、10年越しの目標を叶えることができた充実感と、支えてくれた妻や家族、恩師、友人達への感謝の気持ち、専門医としての責任と、これからの自分に対する期待が複雑に混じり合った、不思議な感覚を覚えました。試験それ自体は合格率が示す通り、米国における専門医としての(最低限の)質を保証し、同時期にトレーニングを受けた全国の感染症医の中での自分の位置を知るためのものであって、合格すること以上に、過去2年間に感染症フェローとして厳しい環境の中で培った経験こそがより重要なのは言うまでもありません。私も、むしろそのことに誇りを持っています。

いずれにせよ、これは自分にとって新たなスタートなので、いつまでも余韻に浸っているのではなく、心に決めた次の目標に向かって、また一歩を踏み出したところです。

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