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ブログについて

ハワイは温暖な気候と全米一のCultural mixが見られ、医師としての幅広さを養うにはいい環境と感じています。
旅行だけでは見えない、ハワイ在住の魅力もお伝えできればいいなと思います。

野木 真将

兵庫県出身、米国オハイオ州で幼少期を過ごす。京都府立医大卒、宇治徳洲会病院救急総合診療科の後期研修を修了。内科系救急を軸とする総合診療医として活躍したい。よきclinical educatorとなるため、医師としての幅を広くするため渡米。2014年よりハワイで内科チーフレジデントをしながらmedical education fellowshipを修了。2015年よりハワイ州クイーンズメディカルセンターでホスピタリストとして勤務中。

野木 真将のブログ
2015/01/23

卒後医学教育の評価法とNAS

*注)この記事はNAS; Next Accreditation Systemについてのお話であり、Network Attached Storageについてではありません。
チーフレジデントの仕事のひとつに、レジデントを評価するというものがあります。
毎月のローテーション毎に多くの評価票が作成されますが、最終的にはClinical Competency Committeeと呼ばれる評価委員会で各レジデント(研修医)の最終成績が決定されます。そのときに、どのようなシステムで成績を決めるのか?
複雑ですが、考え抜かれたシステムなので簡単にご紹介したいと思います。
まずは歴史的な転換点について。
  • フレクスナーレポートとは?
1910年 当時の米国では卒後医学教育の質にばらつきがあり、各地で信頼度の低い医師が目立つようになっていました。カーネギー財団が投資し、全米の医学部を一斉調査した有名な報告書があります。通称「フレクスナーレポート(Flexner report)」と呼ばれるものです。このレポートで唯一高評価を得たのはウィリアムオスラー率いるジョンズホプキンス大学および病院でした。そこから、ジョンズホプキンス大学の医学教育が米国卒後医学教育のモデルとして注目を受けるようになります。
その後、1920-1940年代の卒後研修指導の質は主に専門医学会が保証していました。
1933年のABMS (すべての専門医学会のまとまり組織)、1970年代のACGMEという非営利の監査機構の設立を経て、医学教育の標準化に多大な時間と労力がかかりました。現在では約9500もの研修プログラムがACGMEから認定および監査されています。
  • アウトカムプロジェクトとは?
1999年にACGMEと各専門医学会が合同で、研修医教育の柱となる6つの分野が明文化されました。
これはコンピテンシー(competency)と呼ばれるもので、
  1. Patient care
  2. Medical Knowledge
  3. Practice based learning and Improvement
  4. Interpersonal communication
  5. Professionalism
  6. Systems-based practice
の6つから成り立ちます。いわゆる「優れた医師」の素養とは何か?と聞かれたときに多くの人が思いつく素質を整理したものと思っていただければいいと思います。
ここから研修医の評価は「どういう授業、実習を提供するか?」というプロセス中心の見方から、「どういう医師に育っているのか?」というアウトカムを重視する評価方法に転換していきます。
Competency based training, Outcome projectなどと呼ばれるようになります。
すべてのカリキュラムから評価用紙まで、この6項目を中心に組み立てられるようになり、約2年かかって全米に浸透し、10年後の2009年に再評価されることになります。
当プログラムでは、6つのコンピテンシー毎に10段階で成績がつき、さらにコメント欄に自由記述で詳細に各研修医のパフォーマンスが記載されていました。
  • NASってなに?
上記のCompetency based trainingの普及と実践の途中である2002年頃より、卒後医学教育は試練にさらされます。
1965年にMedicareと呼ばれる公的医療保険が設立され、研修医の給料や教育は税金が主な財源となっていき、卒後医学教育は一般市民の注目を集めることになります。研修医による医療事故のニュースが流れたり、医療コストを度外視する医師の行動が目立ったり、医療不信が少しずつ育ち始めます。レジデント(研修医)の教育はどうなってるのだ?というパブリックビューの中で、Competency based trainingは抽象的すぎて一般市民からは支持されませんでした。また、十把一からげと評されるこのシステムでは、プログラムごとの工夫が出しにくい点や問題のある研修医の早期発見が難しいという点が指摘されます。
そこで、よりイメージしやすく客観的な研修医評価方法が検討され始めます。
この大きなACGMEの動きが、Next Accreditation System(NAS)と呼ばれるプロジェクトで、その一環として2009年からMilestones projectが提案されます。
私が米国の卒後医学教育に興味を持ち始めたのは日本の医学部を卒業した2006年頃からでした。一生懸命 competency based trainingの概念を勉強し、当時いた日本の病院での初期研修医教育に取り入れようと奮闘したことを覚えてます。
しかし、2011年に渡米したときにはもうすでに米国では次の段階へと移行していたのを知って驚きました。2013年よりphase1として各地のプログラムが移行期に入り、2014年度から全てのプログラムが移行しました。
次回はNASの柱となる、MilestonesCLERという2つのプロジェクトについてまとめたいと思います。
  • まとめ
  1. 2000年頃より、Competency based trainingと呼ばれる、アウトカムを重視した卒後医学教育が中心となっていた。
  2. 2009年より、そのシステムを見直して改良する動きがNASである。
 (ACGMEから公式発表されている英語のスライドです。)
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