内科レジデントの入院管理トレーニングにおいてモーニングレポート(Morning report)は大きな役割を果たしています。
●モーニングレポートの参加者
月曜、水曜、木曜:医学生、2年目もしくは3年目の上級レジデント(症例提示)、ホスピタリスト指導医、教育部長(DME)、チーフレジデント
木曜のみ:上記参加者+1年目レジデント(症例提示)
火曜のみ:医学生(症例提示)、医学生担当指導医、チーフレジデント
●モーニングレポートの形式は?
朝の時間に行う症例カンファレンスのことなのですが、開始時間やフォーマットに多少の違いはあっても下記の2種類に大別されると思います。
1)前夜の夜間帯入院の複数症例を振り返る「申し送りカンファレンス」
2)1つの症例を提示し、参加者で診断や治療過程を吟味する「臨床推論カンファレンス」
当プログラムでは後者(2)の形式を取っており、自分がレジデントの頃は勉強になる症例に触れることができてとても好きなカンファレンスでした。今はチーフレジデントとして司会進行ができるのは大きな喜びです。
色々と改善をして、現在のタイムテーブルは以下のようになっています。
- 7:30-7:35am チーフレジデントから参加者への連絡事項
- 7:35-7:45am 上級レジデントからのMini journal club (前回のモーニングレポートで発生したclinical questionに答える形での論文紹介)
- 7:45-8:05am 担当者からの症例提示(問診と身体診察をプレゼンテーションした後に鑑別診断を議論して、その後の検査や治療選択を話みんなで話し合う)
- 8:05-8:15am 担当者(もしくは相方のインターン)から症例に関するミニ講義
45分間に全部をこなすのは大変な作業ですが、事前に症例を知らされているので議論が脱線せずに目的地にたどり着けるように司会進行していきます。
●いいカンファレンスとは?
朝カンファレンスルームに来て、全員が積極的に参加(engagement)できて、Take home messageが明確に伝わったときには「いいカンファレンスだった」と満足感も大きいです。
あまりにも静かな参加者ばかり(flower on the wall)だと盛り上がらないので、その場合には医学生などに宿題(ex. 発熱+皮疹の+関節炎の鑑別は?)を渡しておくと、自信をもって挙手してくれたりします。
●チーフレジデントとしての工夫は?
議論の方向性を的確に導くために、前日までにどのような症例がプレゼンテーションされるのか、そしてミニ講義のテーマは何か?を知るようにしています。
カルテに目を通し、以下の点をチェックします(時間があれば)
- 診断までの流れに矛盾はないか?
- 必要な情報はそろっているのか?
- 結果待ちの検査はないか?
- 事前に入手すべき病理写真はないか?
- どの画像を供覧するべきか?
その上で、議論のポイントをおおまかに計画します。
- 〜という主訴に対する鑑別疾患を話し合うのか?
- 診断は容易なので、マネージメントを話し合うのか?
限られた時間内であれもこれもするのは不可能なのでたいていどちらかに絞ります。
最終診断がみんなの挙げる鑑別リストにない場合は、Framework (anatomical, etiological, mnemonic)を駆使してなんとか論理的に引き出すようにします。
準備時間が足りない場合には、予備知識なしで司会していきますが、
その場合にはたいてい予定時間をオーバーしてしまいます。
●モーニングレポートが終わったあとは?
発表者の採点をして、症例と発表者と他の症例カンファレンス(Oncology, pathology, bedside diagnostic conference, Pulmonology, Infectious disease case conference)に応用できるかどうかなどをアーカイブします。
そして、発表者から講義スライドをもらい、チーフレジデントブログに簡単な要約とともに投稿します。
ブログの書き込みは、残念ながら参加できなかったレジデントにURLを送って共有します。
そして、今回の症例から派生したClinical Questionを検討して、次回のモーニングレポートの冒頭で発表する予定のレジデントと検索可能なものを決めます。
⚫︎まとめ●
- モーニングレポートではひとつの症例を通じて臨床推論の訓練をしている。
- チーフレジデントとして準備を周到にすることで、全員参加型の充実したカンファレンスに近づくことができる。
- モーニングレポート終了後はしっかりアーカイブすることと、共有することを重要視している。