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Dr.Yumi

ブログについて

研修を終えてスタッフとして働き出してからは、アメリカ医療の現実をさらに実感するようになりました。よいところも悪いところもあるアメリカの医療の日常に、循環器のホットなトピックを交えて発信していきたいと思います。

Dr.Yumi

名古屋大学医学部卒業後、1年間のスーパーローテ研修を経て、アメリカにて臨床研修開始。内科レジデンシー、循環器フェローシップ、循環器インターベンションフェローシップを終え、現在ニューヨークのMount Sinai Beth Israelにてスタッフとして働き6年目。専門は循環器、特に心臓カテーテル治療。2人の娘の子育てと仕事に奮闘中。

毎日忙しく過ごしていると時の経つのがあっという間で、本当に久しぶりの投稿となりました。今年は定期的に投稿したいと思っていますので、よろしくお願いします。

先週末は緊急カテのオンコールだったのですが、患者さんが急性心筋梗塞と心停止でやってきました。救急隊によって心拍は再開していたので、とりあえず緊急カテを行ったところ、閉塞していたのは小さな右冠動脈で、心機能自体はほぼ正常、ステント治療を無事終えて低体温療法となりました。ただ、心停止後に救急車が来るまで心臓マッサージがされていないので、脳の機能が回復するかは微妙なところです。心臓を救っても、心停止による脳障害があっては患者さんは救えません。

私は仕事柄、心筋梗塞による心停止の患者さんはたくさん診て来ているのですが、助かるかどうかは「運」だなあ、と思う事がよくあります。心筋梗塞の時の心停止は、V.fib(心室細動)によるものが多いのですが、心室細動は電気的除細動によって取り除く事ができるので、いかに早く除細動を行うかが患者さんを救うためには最も重要です。そのため、どこで心停止したかは非常に重要で、病院内で心停止した場合は、除細動1回で何もなかったかのように戻る事もありますが、誰もいないところで心停止した場合は、そのまま亡くなる事がほとんどです。人通りの多い道とアパートでは救急車が到着するまでの時間も違って来ますし、選べるものではないのですが、運命の分かれ道です。

院外の心停止はまれな事ではなく、2013年にはアメリカでは359,400人が心停止で病院に運ばれて来ており、退院まで至ったのは9.5%です。私たちカテーテル治療を専門とする循環器内科医は、急性心筋梗塞の患者さんをいかに救う事には特に熱意を持って取り組んでいるので、緊急には24時間体制で対応しています。ただ、心停止の患者さんは、緊急カテーテル治療を行ったり、低体温療法を行ったりしても、心停止の時間(=脳虚血の時間)が長いと脳が回復せず治療の意味がなくなってしまうので、病院に来る前の治療を改善する事の方が大切です。

心停止後にいかに素早く有効な心臓マッサージが行われたか、いかに素早く除細動器が使われたか、という事がポイントとなるので、社会としてのシステム向上が必要になります。最近では、至る所にAED(自動対外式除細動器)が設置されるようになってきましたが、誰もが心臓マッサージを行える事も大切です。 心停止に対する取り組みで有名なシアトルでは、救急隊への心停止対応のトレーニング、住民へのトレーニング、などに力を入れており、2014年の心停止の患者の生存率は62%まであがったと報告されています。

私の後輩アーザンが、去年高校で心臓マッサージを教える法案を通すための運動をしていましたが、そう言った地道な取り組みが大切になってくるのだと思います。

 

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