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寺島慶太

ブログについて

小児がんの診療と研究における最新の話題を提供したいと思います。米国のNational Cancer Instituteが発行しているCancer Bulletinや学術雑誌などから、米国発の関連ニュースを提供したいと思います。日本ではなかなか情報が入らない、新薬の治験結果なども積極的に取り上げたいと思います。

寺島慶太

名古屋大学医学部を卒業し、6年間の国内研修後、ニューヨークで小児科レジデント研修を行う。その後ヒューストンで小児血液腫瘍および小児脳神経腫瘍フェローシップ研修を行う。現在、小児腫瘍専門医として、テキサス小児病院およびベイラー医科大学で、小児脳腫瘍の診療と研究に従事している。日本で小児脳腫瘍の包括的診療研究プログラムを立ちあげるのが目標。

4. 分野別施策と個別目標

7. 小児がん

(取り組むべき課題)(続き)

「小児がん経験者が安心して暮らせるよう、地域の中で患者とその家族の不安や治療による合併症、二次がんなどに対応できる長期フォローアップの体制とともに、小児がん経験者の自立に向けた心理社会的な支援についても検討する。」

「小児がんに関する情報の集約・発信・診療実績などのデータベースの構築、コールセンター等による相談支援、全国の小児がん関連施設に対する診療、連携、臨床試験の支援等の機能を担う中核的な機関のあり方にちて検討し整備を開始する。」

(個別目標)

「小児がん患者と家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境の整備を目指し、5年以内に、小児がん拠点病院を整備し、小児がんの中核的な機関の整備を解することを目標とする。」

国のがん対策推進基本計画が、小児がんサバイバーへのフォローアップや自立支援にまで、配慮していることは、とてもすばらしいと思います。地域のリソースの実情や、多様な個々のサバイバーに合わせた、きめ細かな支援が必要なので、指針が出たからすぐに最適な支援が始まるわけではありませんが、とても大きな一歩だと思います。

最後の課題として挙げられている「中核的な機関」は漠然としていますが、患者診療とは別次元で、小児がんに患者や診療について包括的に情報収集し、支援する組織を創設しようという意思が表明されています。個々の代表的な小児がん診療機関、小児がん学会、がんの子どもを守る会、各小児がん臨床研究グループなども、これまで取り組んできた課題ですが、現時点で患者や家族、多くの医療者も満足していないということなのだと思います。

アメリカでは、National Institutes of HealthやNational Cancer Institutesなどの行政が主導している情報提供の部分、もともとは多施設共同臨床試験グループであるChildren’s Oncology Groupが担っている大規模コホート研究と、そこから生まれるフォローアップガイドライン、American Society of Pediatric Hematology and OncologyおよびAssociation of Pediatric Hematology and Oncology Nurseによる小児がん医療従事者の教育など、複数の機関がタイアップして小児がん医療を支えています。

日本では、各小児がん疾患、とくに固形がんの臨床研究グループがまとまっておらず、リソースが分散し発言力も弱いのが現状です。小児がんを包括的にカバーする全国統一した臨床試験グループは世界の流れです。臓器別大学講座制などの弊害によって、歴史的には小児よりずっと遅れていたはずの成人がん臨床試験は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)として成人の固形がんの主要な臨床試験を統一して行うグループに成長し、今では強力な推進力を持っています。小児固形がんの臨床グループの間でもでも統一組織に向けた動きがあることは聞き及んでいますので期待していますが、HematologyとOncologyのオーバーラップが大きな小児の場合、白血病リンパ腫の研究グループ(JPLSG)との最終的な統合がもっとも自然だと思います。その統一された臨床研究グループと、日本小児血液がん学会、厚生労働省主導の「中核的な機関」が連携する形が理想的だと考えます。

個別目標に関しては、やや具体性や数値目標が欠けているので、もうすこし議論が深まる必要があると思います。それでも、総合的に評価すれば、広い視野の展望に基づいた本格的な計画を国が策定するという事実は、せべての小児がん患者・家族・関係者にとって、おおいに歓迎すべきことだと思います。

この「素案」がどのように「最終計画」にまとまるか、注目していきたいと思います。

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