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最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田 篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

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2017/12/20

「アメリカでお医者さんにかかる」診察料のしくみ

(この記事は、『アメリカでお医者さんにかかるときの本』の内容を一部抜粋・修正して掲載しています。書籍の概要は保健同人社Amazonでご確認ください。)

実際に診療が終わるまでわからない料金。アメリカの医療費は独特のしくみによって決まります。そのしくみを簡単にみていきましょう。

医療機関と保険会社の交渉で決まる診察料の金額

日本と違い、アメリカでは同じサービスに対する料金が一律ではありません。同じ症状で同じ診察時間で同じ検査を受けても、加入している保険と診てもらう医師により、料金は違ってくるのです。状況によっては料金が2倍も3倍も違うことがあり、しかも、実際に医師にかかるまで金額がわからないのも不安になる要因です。なぜ料金が表示されないのか、それを理解するために、料金が決定されるしくみを見ていきましょう。

日本では、医療サービスの料金は全国一律に決まっていて、保険診療を行っている限り、それより高く請求することも、割り引きすることも禁止されています。また自己負担割合も決まっているので、患者さんが支払う料金はどの医師にかかっても同じです。しかしアメリカでは、医療サービスの料金は医療機関と保険会社の交渉で決まります。

たとえば、ある医師が経験や専門性をもとに、あなたの30分の診察料を300ドルと設定したとします。あなたの加入している民間保険会社は、診察料の大部分(あなたの自己負担分以外)を負担することになるので、その額を下げようと交渉します。医師は交渉に応じないと、その民間保険会社と提携することができません。提携できないと、その医師の診察にはあなたの保険が適応されません。すると診察料が全額自己負担になってしまうので、あなたはその医師にかかろうとはしないでしょう。医師からすると、これはあなたを含むその医療保険に加入している患者さんを失うことを意味します。したがって、その医師は保険会社との交渉に応じて、診察料を下げざるをえないというわけです。

保険会社にとっても、交渉を決裂させるのは得策ではありません。無理に診察料を下げようとすると、その結果、多くの医師との交渉が決裂し、他の保険会社に医師を取られてしまいかねません。提携している医師が少ないと、その保険に加入している人にとって医師の選択肢が少ないことになります。いろいろな医師を選べない保険プランは加入者にとって魅力が少ないので、保険会社は顧客を失うことになります。したがって、保険会社としても多くの医師と提携することが重要になってくるのです。

・去年と今年では診察料が違うことも

金額の交渉には当然、力関係が影響します。たとえば、ある保険会社の保険プランに、ある医師が開業している地域の3割が加入していたとします。医師はその保険会社との提携に失敗すると、その地域に住む3割の患者さんを失うことになり、大打撃を受けることになります。したがって、医師は多少悪い条件でも保険会社と契約を結ぶしかありません。

一方で、医師も一人では分が悪いので、グループを形成して交渉に臨むことがあります。たとえば100人の診療グループを作り、保険会社と交渉します。保険会社はその交渉が決裂すると、一気に100人の医師との契約を失うことになりますので、妥協せざるをえません。また、医師は医療機関に所属することで、医療機関を交渉主体とすることもできます。医療機関は数百人などという多くの医師を抱えているので、交渉力も強くなります。

このようにして、医師の診察料は交渉力によって変わってきます。その結果、たとえば最初に300ドルと設定した希望額は100ドルなどに減額されます。その100ドルのうち、自己負担割合や窓口負担料で決まった分をあなたが支払い、残りを保険会社が支払うことになります。

この交渉は常に行われており、医療機関と保険会社の力関係や財務状況などからその都度交渉結果が変わり、それによって診察料が80ドルになったり、150ドルになったりします。ですから、昨年の料金と今年の料金が違うこともあるのです。また、診察する医師が専門医資格をもっているか、経験豊富か、多くの患者さんを集めるほど人気があるか、なども料金の決定に影響を与えます。

ここでは民間保険に加入した場合の料金の決定のしくみを解説しましたが、公的保険では政府がより強い交渉力で料金を決定します。

・正確な金額が診察後にしかわからないのはなぜ?

以上のようなしくみで、医療保険に加入していれば、保険会社があなたにかわって料金の交渉をしてくれますが、無保険の場合はその交渉の恩恵を受けることができません。

たとえば今、保険会社との交渉で診察代が100ドルに減額されたとします。しかしながら、無保険だった場合は、同じ診察を受けても、医療機関側の言い値の300ドルを請求されかねません。良心的な医師であれば、無保険の場合の相談に応じてくれる可能性もありますので、受診する前に相談してみることをおすすめします。しかし患者個人の交渉力は弱いため、残念ながら保険会社と同様の交渉は無理というもの。したがって、やはり事前に保険に加入していることが、アメリカではとても重要なのです。

医療機関にとっては、あなたが加入している保険の種類によって診察料が変わりますので、事前に料金を表示することができません。また、日本と違い、診察料は時間によっても変わります。実際に診察を受けるまで、診察が10分で終わるのか、30分かかるのかわかりません。なおさら医療機関は診察が終わるまで、はっきりとした料金を示すことは困難なのです。

というわけで、正確な料金は診察後にしかわかりませんが、親切な医療機関であれば、事前に相談することで自己負担金の概算を教えてもらえるかもしれません。もし不安なら、予約する前に一度聞いてみるとよいでしょう。

 

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より詳細な内容を知りたい場合は、アメリカで活躍する20人の医療従事者が執筆した『アメリカでお医者さんにかかるときの本』をご参照ください。保健同人社AmazonKindleアメリカ紀伊国屋、など多くの書店およびオンラインショップで手に入れることができます。

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