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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

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(この記事は、『アメリカでお医者さんにかかるときの本』の内容を一部抜粋・修正して掲載しています。書籍の概要は保健同人社Amazonでご確認ください。)

複雑で高額なアメリカの医療保険。まずはしくみをしっかり理解しておきましょう。

・渡米したら民間保険に加入します

アメリカの医療保険は複雑です。おそらく、日本では考えられなかった問題に遭遇することもしょっちゅうでしょう。したがって、アメリカで医師にかかる際には、医療保険のしくみをしっかりと理解しておくことが大切です。まずは大まかに医療保険の構造を見ていきましょう。

アメリカの医療保険は民間保険と公的保険にわかれます。公的保険はメディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)に大別されます。メディケアは主に65歳以上の高齢者を対象とし、メディケイドは低所得者および障害者を対象とします。永住権の取得などさまざまな要件を満たさないと、これらの公的保険には入れませんので、日本からアメリカに行く場合、ほとんどは民間保険に加入することになります。公務員や企業に勤めている人の場合、雇用主が保険料の多くを負担することがほとんどです。学生の場合は、学校を通じて比較的安く保険に加入することができます。自営業などの場合は、自ら保険に加入することになり、保険料は割高になります。

高額なアメリカの診療費

日本とくらべてアメリカの保険料は高額です。2012年時点で平均的な一家族の年間保険料は1万5000ドルを超え、所得が低い人々は保険への加入が困難でした。その結果、2012年時点では無保険者が全人口の約18%に及ぶという事態になってしまいました。アメリカでもこの状況が問題視され、「オバマケア」と呼ばれるPatient Protection and Affordable Care Act(患者保護並びに医療費負担適正化法)が議会で可決されました。保険に加入する際に所得に応じて補助金が出るなどの施策により、多くの低所得者が保険に加入できないという状況が改善されようとしています。

保険に入っていないと、医師にかかったとき、医療提供側の言い値で請求を受けることになります。日本でも美容整形などの医療行為は保険対象外ですが、その請求方法と同様と思えばよいでしょう。ほとんどの場合、診察や検査などの医療行為の料金は表示されていません。事前にクリニックに電話して料金を聞くことはできるかもしれませんが、診察にかかる時間や検査の数により料金は大きく変わってきますので、実際に支払う金額は診察が終わるまでわかりません。良心的な医師であれば、裁量により多少割り引きしてもらえるかもしれませんが、あまり期待しないほうがよいでしょう。

1回の受診にかかる料金は最低でも100ドルからで、検査などを受ければすぐに1000ドルを超えます。無保険で入院した場合、1万ドル以上はかかると思ったほうがよいでしょう。手術を受けるなどすれば、10万ドルを超えることもあります。もちろん無保険者に対する救済策もありますが、場合によっては破産するかもしれないほどのリスクを考えると、保険料が多少高額であっても保険に入っておいたほうがよいでしょう。

 

※以上の情報は2014年時点のものですが、日本からの渡米者の状況に関して言えば、大枠で変化はありません。ただ、オバマケアにより、個人が”手の届く値段”で医療保険を買えるMarketplaceが整備され、(個人の意志により)医療保険に加入しない場合には税金(Penalty)が課されるようになりました。自営業で渡米する方にとっては医療保険に加入するメリットが増えた、と言えるでしょう。

 

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より詳細な内容を知りたい場合は、アメリカで活躍する20人の医療従事者が執筆した『アメリカでお医者さんにかかるときの本』をご参照ください。保健同人社AmazonKindleアメリカ紀伊国屋、など多くの書店およびオンラインショップで手に入れることができます。

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