今から17年近く前、最初に通った大学の4年生の時に、僕は神谷町にあったアメリカの公共ラジオ局(Public Radio International)の東京支局でインターンをしていた。東京支局から本国に配信されるレポートのほとんどは経済ニュースで、当時の僕の仕事といえば、新聞や経済誌のクリッピングやファイリングをしたり、支局長の取材に同行したり、日本語のインタヴュー・テープのvoiceover(英語への吹き替え)等をさせてもらっていた。
ある時、メリルリンチのエコノミストにインタヴューをするために、メリルの東京オフィスに所属するエコノミストのリストをFAXで送信してもらったことがあった。送られてきたリストを見て驚いた。エコノミストのほとんどが女性だったからだ。「どうしてメリルリンチのエコノミストは女性ばかりなんですか?」と、僕はそばにいた支局長と記者(いずれも女性)に尋ねた。
「当たり前だわ。正当に能力が評価される職場は外資系くらいしかないからよ」。
普段は笑顔を絶やさない記者が、珍しく吐き捨てるように言ったのを、僕は今でも覚えている。
僕が学んだ大学では、3年生の半ばになると、いろいろな企業から就職に関するダイレクトメールが届いたり、名前も顔も知らない同じゼミの卒業生から、就職に関する勧誘の電話がかかってくるのが常だったが、どういうわけか僕の元に届く関連書類の量は、友人たちと比較して明らかに少なかった。当時の僕は、卒業後はアメリカの大学院に進学すると決めていたから、就職に関する情報量の差を懸念する必要はなかったのだけれど、そんな僕でも不自然に思えるくらいの差があった。
しばらく経って、それが一見して女性のものにしか見えない僕の名前に起因していたという事実に気づくことになった。また、非常に優秀だった同期の女性たちが、名の知れた企業の「一般職」という不可解なポジションに就かざるを得なかったり、就職に際して男性と比較して明らかに不利な状況に置かれているのを何度も目にした。
そんな出来事を経験し、日本を離れていくつかの国で生活をしていくなかで、あの時に感じた違和感はよりはっきりとした確信に変わり、再び日本に戻って医学界や医療現場の状況を目にした時、それは激しい怒りを伴うものになっていた。日本にはとんでもない性差別が存在している。とりわけ医学・医療分野はそう言える。そして、この性差別はどう考えても正当化などできるものではなく、実際に多くの女性に精神的・肉体的苦痛を与え、頭脳流出や医師不足の温床となり、ミクロおよびマクロレベルで日本経済に悪影響を与えている。そして、この日本の歪んだ現状は、(気づかない人は多いが)世界における日本の立場を著しく貶めている。
以降、数回に渡って、この問題について、具体例をあげて考えてみたい。
ヨーロッパの状況が本やネットでの情報しかないですが、いいんでしょうね。Economistの昔の記事では北欧とかになると何%は女性でなければならないなど逆にゆがんでたりするみたいですが。
昔女性のキャリアについて友人たちとはなしあったことがありますが、難しい問題ですよね。特に会社側としては終身雇用、年功序列制度(人材の流動性のなさ)が強い限りは一度仕事から離れるということが非常に難しかったりもすること、子供を預ける方法がないこと、上の世代が理解が乏しいことが多いこと。女性としてはアメリカと比較すると子育てに対してウェットであること、そもそもキャリアアップを考えていないこと。国として(日本は国が機能しなくなってきていますが)女性の社会進出に対する政策を実行しないこと。
いろいろなことが結果だけでは語れないというか。Positionによる女性の獲得率でみるのは簡単ですが、たとえば多くのキャリア女性が結婚出産を考える20台後半から30代前半の女性を対象に、全体で何%昇進したいと思っている人がいて、そのうち何%昇進したかでみる方がいいのでしょうが、そういうStudyはいまだかつてみたことない気がします。そういうので測るのが一番女性の社会進出のし易さを把握する上で、正確なんでしょうね。
せっかく会社も教育に相当な資金を投じてるわけですから、生かさないのは本当に大きなロスですよね