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三枝孝充

ブログについて

「日米腎臓内科ネット活動ブログ」で腎臓に関する話題を中心に書いています。「日米腎臓内科ネット」は、腎臓内科における臨床教育、研究、移植の発展に興味を持つ日米の医療関係者が、メーリングリストやブログ、セミナーなどを通じて情報交換をしていくことを目的とした団体です。

三枝孝充

米国NY生まれ。10歳で日本へ戻り帰国学級でリハビリ後、何とか大学を卒業。防衛医科大学校病院などで研修をし、2006年にN programのサポートを得てNYの Long Island College Hospitalで内科研修、2009年からMedical U of South Carolinaで腎臓内科研修中。日米腎臓内科ネットメンバー。

SLED(sustained low efficiency dialysis)

急性腎障害(AKI)の治療に関してはここ50年、透析方法、透析量にかかわらず死亡率は大して改善していません。血行動態の不安定なAKIはICUでの管理が必要になります。AKIは透析を要さない場合と、体液過剰による呼吸・心不全/電解質・酸塩基異常/尿毒症症状などともなった症例など、透析が必要な場合に分かれます。透析方法は1) 間欠的血液透析(IHD)2)持続的血液透析(CRRT)と3) SLEDがあります。血行動態が安定していればIHDを行うことができますが、不安定な場合、CRRTやSLEDを選択するべきです。あまり聞きなれないSLEDとはなんでしょう、そしてそのメリットとデメリットは何でしょうか?
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SLEDは通常の透析よりも血流・透析液ともに低く設定され、長時間、頻回に血液透析を行うものです。除水量もIHDよりも透析時間が長いため緩除になります。例をあげると、IHDが週3回、各4時間、血流400ml/min、透析液800ml/min程度であるとすると、SLEDは週6回、各8時間、血流200ml/min、透析液350ml/minといった処方になります。SLEDは通常の血液透析器を使用し、透析ナースが管理し、抗凝固は通常使用しません。メリットは通常の透析器で行えること、透析膜や回路等はCRRTのそれよりも安価であること、通常の透析ができるナースがいれば可能であること。デメリットは、ナースがこの患者のために余計に必要であること、除水による血行動態の変化はCRRTよりも大きいことと抗凝固は使用しないことが多いため回路凝固が1/4程度あることです。(アメリカではnafamostat(フサン)は認可されていません)

一方、CRRTは持続的に透析濾過を行う方法ですが、血流は100-300ml/min、透析量はIHDにくらべ極めて低く20-35ml/kg/hr程度になります。CRRTは専用の透析器/透析膜/透析回路を使用し高価で、ICUナースがこの管理方法を習得している必要があります。メリットは余計に透析ナースを要さないこと、24時間で投与した輸液や体液過剰を除去するため体液管理が容易であること、抗凝固はクエン酸を使用することが多く回路凝固の頻度はSLEDよりも低いことなどが上げられます。デメリットはCRRTを管理するスキルを持った施設(ICU)とICUナースが必要であることとコストが余計にかかることです。

IHDでもCRRT/SLEDを選択してもAKIの生命予後に変わりがないことはたくさんのstudyからわかっています。コスト、抗凝固や溶質除去に関してSLEDの利点を主張する小さなstudyもありますが、最近では透析量の多い少ないにかかわらずAKIの予後に差がないことが示されています。 ICU管理を要する重症のAKI患者にCRRTはとても便利なわけですが、そういった設備や環境を備えていない場合SLEDという透析方法もあります。

T.S

3件のコメント

  1. SLEDは私もアメリカに来て初めて学びました。
    日本でCHDFをするとき、サブラッドは1日15Lほどしか使っていなかったのですが、それをアメリカの先生に話すとそんな少量じゃいい透析できないよと言われてしまいました。CRRTは大量に高価な液が必要だという点がSLEDに負ける点で、同等の効果が出るというエビデンスがあるのでSLEDで十分だと言っていました。
    ところで、なぜSLEDだと抗凝固を使わないのですか?
    今のNYの病院は通常の透析でもヘパリンを使っておらず、SLEDでももちろん使っていません。SLEDは一般的に抗凝固を使わないものだとは知りませんでした。

  2. 入院患者の間欠的血液透析にへパリンはよほど過凝固でない限り当院では使用しません。その理由は入院患者さんはsickで出血riskがある場合が多いのと、日本と違い血流が400-500ml/minと早く必要としないからです。ただし、外来の透析ではほぼ皆さんへパリンを使用します。これはダイアライザーの再使用(reuse)をしているところが多く、なるべくダイアライザーを長生きさせたいからという目的からです。reuseについてはまたの機会に書いてみます。

    SLEDで使用しないのは、CRRT同様、出血傾向のある患者さんが多いからです。米国にはフサンがないのでクエン酸を使用しますが、クエン酸はカルシウムと結合しますので、クエン酸の輸液ポンプのほか、カルシウムの補液ポンプも必要とします。管理はやや煩雑でダイアライザーの出口でのカルシウム測定に加え、末梢血でのイオン化カルシウムの測定が必要となります。また透析液はCa濃度がゼロである必要があります。またCRRTの機械ではクエン酸やカルシウムの輸液ポンプの接続や設定が容易なのですが、通常の透析器ではやや煩雑になるので使用しないというのが理由かなと思います。(無理ではありません)
    フサンがあると良いなとこちらに来て思いますね。

  3. 所が変われば色々違いがあるのですね。血流が多いのもびっくりします。それでヘパリンがいらないというのもびっくりです。我々はCHDFで慣れているので新しい試みはしていません。フサンも便利です。面白いものですね。

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