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日暮沙織

ブログについて

『医療、家庭、療育、教育の場』が一つとなって、地域全体で子供たちを育てていく。このブログがその一つ一つをつなぐ、小さなきっかけとなってくれたらいいなぁと思っています。

日暮沙織

東京、下町育ち/マイアミ在住。 ノースキャロライナ州の大学にて音楽療法を専攻。『日本に帰ろう』と思いつつ、マイアミ在住、早、6年。スペイン語率が圧倒的に高いこの町で、片言のスペイン語を駆使しつつ、NICUから7歳までの発達にサポートが必要な子供たちへの音楽療法を実践中。

少し前のことになってしまいましたが、、、今年の始めにテンプル グランディン(Temple Grandin, Ph.D)教授の講演を見に行く機会に恵まれました(しかも参加費は無料。 現在、コロラド大学で動物学の教鞭をとる彼女は幼いときに自閉症と診断され、自閉症と共に生きてきた一人です。

2時間弱の講演でたくさんのお話を聞くことができたのですが、中でも印象に残ったのは『早期療法』へ彼女の強い思いでした。グランディン教授曰く、なるべく早く子供の発達の遅れに気づき適切な療法を始めることが、成長のポテンシャルを引き出す最大の『カギ』だそうです。早期療法を仕事にしている私は、もちろん早期療法の力を信じているわけですが、改めて自閉症とともに生きてきた本人の口から聞くと説得力があります。

アメリカでは、発達になんらかの障害、または障害がでる可能性が高い環境におかれていることが認められた場合、0歳から無償で早期療法を受けることができます。フロリダ州の場合、0歳から36ヶ月の子供たちへの早期療法は医療サービスの一環として行われ、36ヶ月以上の子供たちへの早期療法は公立の学校教育システムのサービスとして行われます。特別支援教育、言語療法、理学療法、作業療法がメインにおこなわれ、時と場合により行動療法、音楽療法などが組み込まれるケースもあります。

多くの場合『自分の子供の発達に遅れがあるかもしれない』と認めるのはとても勇気のいることです。発達障害というのはラインが曖昧なため「もう少し待ってみようと」と早期療法を先延ばしにするケースも少なくありません。いちど医療的診断がついてしまうと、その診断名が子どもに一生ついてまわってしまうと心配する親御さんもたくさんいらっしゃいますし、誤診をおそれてる人も多くいます。

しかし、グランディン教授の言葉にもあったように、適切な早期療法をできるだけ早くはじめることが、その後の成長に大きく影響するのも事実です。実際に私の関わった子供たちの中には、一度は発達障害と診断がついたものの、小学校に上がる頃には発達の遅れを取り戻した子供たちが何人もいます。「もう少し待ってみよう」と子供の持って生まれた力を信じることも大切ですが、成長過程の限られた時間を有効に使うことも大切です。診断名の有無に関わらず、気軽にはじめられる早期療法がもっともっと広がるといいなぁと思います。

 

8件のコメント

  1. 面白いですね。フロリダ州が無償で提供する早期療法は自閉症スペクトラムに関してだけですか?それとも発達障害全般に関してでしょうか?

    • 発達障害全般です。無償と言っても、保険でカバーされたりするもののあるので実際にはすべて『無償』というわけではありません、、、。また、システムの違いにより新しくサービスを申請してからの待機時間が申請時点での子供の年齢により大きく異なります。 36ヶ月未満の場合、新規申請から2〜3ヶ月以内に特別支援教育が受け始められるのに対し、36ヶ月以上の場合6ヶ月以上かかってしまうケースも少なくありません(保険でカバーされる言語、理学、作業療法はもう少し早く受け始めることができます)。そういう面を考慮しても、発達障害を疑った場合、36ヶ月未満で早期療法をはじめたほうが時間的ロスが少なくてすむ気がします。

  2. こんにちは、OTの松田直子と申します。同じセラピストで子供を専門になさっているということで、とても嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします。

    本当に同感です。グレイエリアのお子さんの診断は専門家でも難しいですからね。でも、療法は遅れのある子にも、ない子にもすべてのお子さんに良いと思いますので、気軽に、低コストで出来る場所があれば本当に良いと思います。それにしても、グランディン教授のセミナーを無料で聞けたなんて、うらやましいです~!

    • こちらこそよろしくお願いいたします。OTは大好きな分野で、いつもOTの同僚を質問攻めにしています(笑)。特にVisual-Spatial processingとSensory Integrationは私のお気に入りトピックで暇さえあれば『どうして?』と聞いている毎日です!(どれだけ質問しても、常に新しい『?』がでてくるんですよね、、、(笑)

  3.  始めまして、日本で作業療法士として、また臨床家としても活動している者です。テンプルグランディんさんに関するページを探していたところたどり着きました。
    日常的に保育園や小学校のお子さんの支援などを行っています。
     今でも日本では、診断がつくかつかないかということには非常に敏感なところがあると思います。これはご両親自身の思いもありますが、地域社会が障害をどのように捉えるかに大いに影響を受けていると思います。地域社会が障害の診断を受けたお子さんをどのように見るかをご両親としてが気にしてしまうということになると思います 
     私自身は診断がある、診断はない、これらのことよりもそのお子さんの困り感に対して支援するということが大切と思っています。故にこの段階では診断の有無は全く関係ないことになります。しかし日本では色々な公的な支援を受けようとすると診断が必要な時があります。この辺も問題だと思いますが
     感覚統合理論は障害の有無に関係なく、年齢にも関係なく誰もが持っている機能なので、これを基本にお子さんお支援を行うことはとても重要ですね。
     私もテンプルグランディンさんのお話には共感できるところがたくさんあります。
     ちなみに私は彼女が引いた図面を下にHugmashineを作りました。おそらくいま日本には2台あります。
     NIKUMAN

    • 石井様
      コメントをいただいていたのに、メールの手違いで承認・返信が大変遅くなってしまいました。心からお詫び申し上げます。

      日本で実際に早期療法にかかわっている方のお話が聞ける機会はめったにないので、とても勉強になります。Hug Machineもご自分で作られたとのこと、びっくりです!早期療法に関しては本当に石井様のおっしゃるとおりで、診断に有無に関係なく早期から発達に必要な支援を受けられるようになるのがベストだと思います。感覚統合理論は私も大好きな分野で、保育園、幼稚園で積極的に取り入れられたらいいのになぁと常々感じています。感覚統合・早期療法の知識を持った保育士・幼稚園教諭の方がこれからもっと増え、診断がつかなくても発達段階に適した支援を日常的に受けられるようになることを祈るばかりです。

  4. 72才の男性です。今年からギターを習得し日常のストレス解消を考えています。先生の写真を拝見したらギターを治療に使われていることが分かり、治療にどんなギターを使われているのか教えて下さい。フォークギターですか。弦はナイロンですか、スチールですか。では、ご返事お待ちしています。

    • 寺田様
      コメントありがとうございます。

      写真の中で、私が使っているのはナイロン弦のクラシックギターです。セッションをしているお子さんが音にとても敏感だったこともあり、全体的にやさしい響き、柔らかい音の出る小さめのギターを使いました。
      また、今回はたまたまクラシックギターでしたが、クライエントの状況、セッションの内容に合わせてフォークギター、エレクトリックギター、ウクレレなどを使いわけています。

      ギターを始められるとのこと、、、たくさんの素敵な曲との出会いがあるといいですね!

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