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ノール玲子

ブログについて

日本にはないミッドレベル医療従事者(Mid-Level Provider)が、どういう風に医療貢献できるか、勤務経験を元に書いていきたいと思います。

ノール玲子

医者でもない看護師でもない、ミッドレベル医療従事者—フィジシャンアシスタント(PA)。アルダーソンブローダス大学PAプログラム卒業後から救急医療科勤務。

Instinct vs physical exam. どれを何処まで信じて、どちらを頼りにしますか?
8歳の女の子が、軽い衝突事故で運ばれてきました。メディックに聞いたら、車には、あまり損傷はないとの事。”何処痛いの?”って聞いたら、1cm未満の裂傷した足だけ。お腹押しても、何処触っても痛くないって・・・。でも、何か違う。何だろう。顔色も悪くない、お腹押しても、背中触ってもどこもいたくない。どこにも、痣等もない。怪我したのは足だけ。バイタルサインも普通。でも、何かが違う。何だろう、どこが、何がどう違うんだろう? 
 わだかまりを無視しながら、切った足の縫合して、そろそろ家に帰そうと思っていた所、お母さんが、この子が血尿だしたんだけど・・って報告に来た。あー、腎臓裂傷してるかもって不安になってきた。再診察する。この子に、“お腹痛い?”って聞いたら、”うん。ここ痛い。”って左腹と背中を指差ししてくれた。”いつ痛くなったの?”って聞いたら、”おしっこした時に痛くなった。それまで、痛くなかった”って言う。”痛いの我慢してたの?”って聞いたら、首を横にふってた。
すぐ、CBC、CMP, UA, INT, Type&screen 2 units, 点滴等オーダーする。クリアチンが戻って来た直後に、CTオーダー。すぐにradiologyの先生から電話が入る。”この子、交通事故なの?え?そんな低スピードだったの?脾臓と腎臓、両方裂傷してるよ。お腹に結構、血がたまってるね。すぐに外科医に連絡しなさい。” 外科医に連絡いれたら、すぐに診に来てくれた。グレード2の脾臓裂傷と2カ所の腎臓Lower poleの裂傷。すぐSICUに入院が決まる。手術はせずにオブザーブするとの事。この子にはガーディアンエンジェルがついて、私に教えてくれたのだろう。”ああ、まだ病院にいてくれてよかった”とほっとする。もし、フィジカルがネガティブであっても、何かが違う、悪いと感じた時に、血液検査、CTやレントゲン等、何をどこまでオーダーすればいいのだろう。子供達には、無駄な放射線はあびさせたくない、かと言って悪い所がないか確認するためにレントゲン等オーダーしなければいけない。自分の本能が、どこか悪いと伝えているのに、異常なしのPhysical exam。どちらを信じて、どこまで追求すればいいのだろう。これは、医療がどんなに発展しても、何年経っても、どんなにベテランの先生方であっても、いつも頭のどこかに潜んでいるのではないだろうか?救急はつねに臨機応変でいないといけない。この日は、頭が痛くなる程いろいろ考える一日だった。

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