コードブルーよりもっとブルーになる瞬間、それはもしそれが今までに診たことのある患者さんだった場合でしょうか。
つまり先にERから帰宅させた患者さんが、その数時間後にコードブルーで自宅からERに舞い戻ってきた時など。
例えばこんなシナリオです。
パラメディックのお兄様たちが胸骨圧迫しながら救急車から降りてきて救急車専用入り口から小走りにストレッチャーを押しながら入ってきます。
そして自分が帰宅させた患者さんがこんな形でERに戻ってきたことを悟った瞬間、も、もちろん担当救急医の顔面は蒼白!
医師の顔色はコードブルーの患者さんより真っ青になります。
頭の中で走馬灯のようにいろいろな疑問が駆け巡ります。
いったいどんな見落としがあったんだろうか。
帰宅させないで入院させるべきだったのだろうか。
いったいなんで?なんで?
そして最後はやっぱりこれ、
医療訴訟の四つの漢字が頭をよぎるわけです。
ましてや不幸な結果に終わった場合はまさしく、戦線恐々ですね。
こんなこともありました。
集中治療室で急に容態が悪化した患者さんの気管挿管をたのまれたときのことです。
集中治療室に集中治療専門医がいないときにはよくお声がかかります。
「先生、こちらです!早く早く」
ICUに到着するなりたくさんのスタッフがバタバタと挿管の準備をしていました。
「マックですか?ミラーですか? チューブにジェリーつけますか?」
矢継ぎ早に質問攻めです。
「ドラッグは何を?」
まだ意識のある患者さんの場合そのままでは気管に管を通せません。まず薬で眠らせて、それから別の薬を使って筋肉を弛緩させてから挿管します。
入れ歯もはずします。
敗血症のショックからその患者さんの顔はとても青ざめていて触るととても冷たかったです。うっすら冷たい汗がべっとりと手袋をした私の手にも感じられました。
患者さんはご高齢のおじいちゃま?に見えるがほんとうはまだ若い人なのかも。。。
実は挿管を頼まれただけなので細かい情報はもらっていませんでした。
管を気管に通し終わってICUを後にしかけてやはりいったい誰なのかちょいと気になりカルテをのぞきますと。。。
な、なんとそれはわ、わたしの患者さんでした。
シフト始めに入院していただいたおじいちゃま。
救急室から入院病棟に移されたあと容態が急変したそうです。
その時はまだお元気にお話ができ、「もうこれでお呼びが来たのかなあ」と泣いておられたおじいちゃま。
こんなに変わり果てた姿になってまたこんなところで会うなんて。
ほんの数時間の間に急激に悪化されたようでした。
挿管している間にまったく誰なのか気がつかずじまいだったわけは、あまりにも容態が悪化していたためにお顔がまったく変わってしまっていたから。
コードブルーからは縁の切れない毎日を送っています。