Skip to main content
マーティンもと子

ブログについて

ERを駆け巡ることな、なんと100年! 砂漠の町テキサス州エルパソから発信します。 元女性管制官第一号。航空機の緊急事態を処理できる能力を救急の世界に応用できる異色のおもろい元管制官医師。絶対にぶつけへんで~! Clinical Assistant Professor at Texas Tech University

マーティンもと子

女性管制官第一号として11年間運輸省勤務後渡米。アメリカ人と結婚、5人の子宝にめぐまれる。夫婦そろってメディカルスクールを苦労して卒業後夫は内科軍医、私は救急の世界へ。 日米の医師免許取得。大阪府高槻市出身テキサス州エルパソ在住 Clinical Assistant Professor at Texas Tech University

最近同じシフトの間に 二人の患者さんから日本語で「アリガトウ」と言われた日がありました。一人は日本人と結婚しているというメキシコ人。もう一人はなんとむかしJALに出向していたというアメリカ人のパイロット。昔、私が東京で管制官していたと言ったら話が盛り上がりましたよ。

さて、今日のお話は珍しく愚痴になります。

ここ数年ERで急にやりにくくなったこと、それは救急医療現場が時間で評価されるようになったことでしょうか。

患者さんがERに一歩踏み入れた時間から10分以内に医師が診察をしないといけないルールができてしばらく経ちます。この時間をGreeting Timeと呼んでいますが、10分以内というのは非常に非現実的な数値なわけです。うちのERのように常に緊急度の高い患者さんの集まるERでは特にそうです。

コードブルーで心肺停止でやってきた患者さんを蘇生している間にも患者さんは次から次へとやってくるわけです。どの患者さんにも10分以内に診察を行うなんてはっきり言って無理ですが、毎日その平均値が発表されて各病院ごと比較されるので病院側も数値が高ければ高いほど目が吊り上がるわけです。

10分という数値だけではありません。緊急度の低い患者さんは到着から帰宅まで90分以内とか、緊急度の高い患者さんは180分以内に入院させなければいけないとかとにかく数字にしばられまくり。。。

患者さんの満足度も数字でドクターごとに表示されます。まるで通信簿。この通信簿がどうしても上がらなかったドクターが首になったという話、最近聞きました。おそろしや~

この満足度を上げるためにまずやらなければいけないことは、患者さんのお部屋に入ったらニコニコ顔でごあいさつ。そのあと必ず椅子に座って同じ目線でお話を。そして患者さんの肩にやさしく触れて同情の念を表現。。。

こうやって一生懸命言われたとおりに訓練されたとおりにやっても、麻薬目当ての患者さんの担当になったあかつきには通信簿はどうしてもがくーんと下がります。なぜなら麻薬目当てと分かっていて麻薬を平気で出す医師はいませんからね。

ちなみに隠語ですが、ERにはいくつか変なビタミンがあります。

ビタミンA=Ativan、不安障害のお薬

ビタミンX=Xanax、同じく不安障害のお薬だが依存性高し。

ビタミンD=Dilaudid、モルフィネの7倍の強さと言われる鎮痛薬、これを目当てにやってくる麻薬し好の患者さんいるんですよねぇ。

こういうビタミン?を使わないで正攻法で患者さんの痛みを取り除こうとすると、あの医者は患者のニーズに応えてくれなかった、となり通信簿は地の底へと沈みます。おわかりでしょうか。

また、最近はCT検査のオーダーの数も数字で出されてドクターの評価の材料に使われるようになりました。どうしてCT検査が必要なのかをしっかりカルテに説明しないとのちのち足をすくわれます。うちのように高度な外傷患者を扱うところでは全身CT検査はめずらしくないですから。

ほんと、救急救命やたらとやりにくくなりました。でも、アリガトウ、と言われればこんな愚痴も吹っ飛びます。こんな私でもこうやってアメリカで医師として生かされていると思うと、やはり何かきっとわけがあるんでしょうかね。

 

 

 

 

8件のコメント

  1. 頑張るモコへ
    企業の成果主義の極端な数値主義じゃないけど、測れないものを測ろうとすると矛盾が出るよね。困ったもんだ。
    測れないものを無理に測らず、もしくは適切に評価する能力を測る立場の人に考えてほしいわ~

    • コメント、ありがとう!!
      なかなか的確に表現してもらってうれしいです!!
      ほんと、ありがとうね。

  2. げろげろ。そんなことになっていようとは…。緊急で病院に行っても、さほど緊急の状態でなさそうな人もいるし、「もうあかん!」って人もいるから、時間制限はトリアージ次第ではないか???うむむ・??

    • 初コメありがとうございます!!
      救急の世界の実情です。。。なんでもかんでも数字でしばられまくり。
      それで目標数値を達成すれば給料が上がるとかではないんですよね。。。
      目標数値を達成できずにいると罰が下るだけ。
      なんか割に合わないとはみんな思っているわけです。
      それはともかくまたランチでも!

  3. gooでブログされていた頃に何度かコメントしたことがある者です。
    こちらの存在を知らなくてずっと更新がされていなかったからお元気かな、と気になっていました。ふとググってみると新しいブログを発見!!バリバリ活躍されている様子を垣間見れてなんだか安心しました。
    これからも先生のペースで更新されるのを楽しみにしております。

    • ありがとうございます!!
      私を見つけてくださってほんとうにうれしいです。ちょくちょく体調崩しながらも元気にしています。
      先日はスキーリフトから落っこちて脳震盪起こしてERに担ぎ込まれたりしましたが。。。どじですよねぇ。
      ブログ、なかなか書けずにいますが2月はけっこうお休みがありそうなのでまた書き込みしようと思います。
      またコメント下さいね!!

  4. 初めまして、みみと申します。
    2、3日前に肝臓癌を患っている義父のことでアメリカの治療をググっていましたら、もと子さんのブログにたどり着きました。そこから毎晩子供達を寝かせた後、ブログを読ませていただいています。
    私はもと子さんの”人生は選択の連続”という言葉がすごく心に残っています。私もそれなりに色々とあり、ただただ看護師として働いてきてリセットのつもりできたアメリカでまた看護師になりたいと思い、看護師になることができました。子育てで病院を退職しましたが、アメリカの看護があまりにも日本と違っていて心が折れてしまったのもあります。
    でも私はやっぱり好きなんですね。もと子さんのブログをみて最近戻りたいなって。

    お忙しいことと思いますが、またお時間ができた時にでもブログを更新してください。
    楽しみにしております。
    お身体も大事になさってくださいね!

    • みみさん、 コメントありがとうございます。
      お返事が大変遅くなりました。ほんとうにごめんなさいね。
      看護師さんなんですか。もしお近くならぜひ一緒にお仕事したいところです。
      ぜひぜひまた現場に戻っていただいてこちらでもブログを書いてくださいね!!
      うれしいコメントほんとうにありがとうございました。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。


バックナンバー