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小林美和子

ブログについて

小林美和子

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

2012年は4年に一度のアメリカ大統領選の年。アメリカの大統領選では、まず各党から大統領候補者を選出する予備選挙が行われますが、二大政党のうち民主党の方は、現大統領であるオバマ氏が再選を目指している事もあって、注目は共和党の候補者選びとなっています。

そんな中、3月6日には”Super Tuesday”を迎えました。Super Tuesdayとは、多くの州で予備選挙が同時に行われる火曜日のことであり、この結果が今後の選挙戦に大きく影響を及ぼす事からも注目されます。結果はミット・ロムニー氏が10州中6州で勝利し、共和党の4候補者の中で優位にたっています。しかし、翌日のNew York Timesに ‘Mr. Roboto’ and the Bible Belt と題して、共和党候補であるにもかかわらず、Bible Beltのように保守派が多い地域では勝てていないことから決してロムニー氏にとって良い状況ではない、といったことを述べる記事が登場しました。ちなみにタイトルにある’Mr. Roboto’は、ロムニー氏がロボットのように表情に乏しくぎこちない、と皮肉ったものです。

 

ここでものすごーくおおざっぱに背景説明を加えると、

  • 共和党ー一般的に保守派。小さな政府、自由競争(いわゆる伝統的なアメリカ的考え)、反同性愛、反中絶。ブッシュ、レーガンは共和党。
  • 民主党–一般的にリベラル。貧困者、中小企業はなどに対して政府が守る。社会福祉に対してより積極的。クリントン、オバマは民主党。

ということで、キリスト教保守派が多いとされるアメリカ南部のBible Belt地域は共和党支持者が多いとされています。ちなみに、ジョージアに引っ越してきた当初、日曜日にお酒が買えないことに初めは驚きましたが、これも安息日である日曜日の禁酒、という考えから元々は来ているようです(もっともレストランなどでは普通にお酒が飲めるのですが。。。)。

先に挙げたNew York Timesの記事に戻ると、記事の背景には共和党→保守派→Bible Beltの人たちに支持されやすい、という構図があるのですが、このことをギャラップ調査にもとづく地図を加えて説明しています。

(以下が実際の調査結果)

http://www.gallup.com/poll/152459/Mississippi-Conservative-State-Liberal.aspx#1

この調査の結果では、21の州が政治的に「保守派より」と捉えているそうなのですが、このうち共和党予備選挙が既に行われた7州のうち、ロムニー氏は1州でしか勝てていない、としています。ちなみに地図をみると、たしかにBible Beltと呼ばれる南東部に「保守派より」の州が多いですね。したがって、保守派州の支持が得られなかった共和党候補が最終的に大統領候補になっても、はたして支持をしてもらえるのか、というわけです。

 

選挙の話が長くなってしまいましたが、アトランタでは残念ながら依然としてAIDSを発症して初めてHIVが診断される方を多くみかけます。アメリカのHIV感染はMSM(men who have sex with men)によるものが一番多いのですが、以前にCDCのBehavioral Scientistの方とアトランタのHIVについてお話していた際に、アトランタという南部では大きな都市ではあるものの、Bible BeltにあるためやはりMSMは肩身の狭い思いをしている。そして、HIV=gayというレッテルを貼られるのを恐れるがために、検査を恐れ、診断が遅れているのではないか、ということを伺ったのが記憶に残っています。「アトランタは南部ではない」「かなりリベラルだ」とは耳にしますし、Bible Beltでなくても多少なりともこういった偏見は存在するのではないかと思いますが、特に黒人男性のHIV患者さんが”Gay”というレッテルを貼られるのを恐れているのは確かに経験します。一方で教会というコミュニティーのサポートによって社会的にも精神的にも立ち直っていった患者さんがいることも事実で、あらゆる意味でキリスト教がこの地域の人々の生活に根付いている事を感じる日々です。

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