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小林美和子

ブログについて

小林美和子

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

2012/02/24

ACIP (1)

2月22日、23日の2日間にかけて、ACIP(Advisory Committee on Immunization Practices、ワクチン接種に関する諮問委員会)の会議がCDC(アメリカ疾病予防管理センター)メインキャンパス内で行われたため、近所であることからも参加してきました。ちなみに本題に入る前にちょっと脇にそれて余談ですが、CDCがなぜアトランタにあるかご存知でしょうか。知らなかった方には、「えっ、ワシントンDCあたりにあるんだと思った!」とよくいわれますが、これには理由があります。もともと第二次世界大戦中のマラリア対策に端を発っすることもあって、CDCが1946に創設された当初はマラリア対策が主な課題でした。そして、アメリカ南部でマラリアが特に問題になっていたため、その前線に近い場所が選ばれた、というわけです。また、現在のCDCメインキャンパスはエモリー大学に隣接しているのですが、これは、エモリー大学に多額の寄付をしていたコカコーラの元CEOのRobert W. Woodruffの要請によって広大な敷地が提供されたためなのです。

ACIPについては以前に神戸大学の岩田健太郎先生が週刊医学界新聞に投稿されており http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02857_03, また、Annals of Internal Medicine(2009;150:45-49)にもACIPについての論文が載っています  http://www.annals.org/content/150/1/45.full?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=ACIP&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT#F1

。ACIPの役割や、メンバーの選出方法についてはこれらに詳しく説明されているので、ここでは簡単に説明しますと、ACIPのメンバーは15名のエキスパートより成り、実質的にアメリカのワクチン行政の方針決定を行っています。アメリカではワクチンが開発されると、まずはその安全性と効果を調べるためにFDAで審査を受けます。FDAの承認を受けると、一般市民への推奨ワクチンとして適当かどうか、対象疾患の疫学、ワクチンの効果、副作用、費用対効果、などに関するデータを厳密に調べた上で、最終的に年3回あるACIPの会議で審議され、そこで承認されれば晴れて正式な推奨として発表されます。

ACIPでの承認に向けて、ワクチン分野ごとに結成されたワークグループでは、日頃から外部の専門家の意見なども求めながら様々なデータを吟味しています。会議では日頃の調査内容が発表され、必要に応じてメンバーによる投票が行われます。それぞれのワークグループには必ずACIPメンバーが含まれるようになっており、その他様々な専門家から構成されていますが、ワクチン製造を行った会社の関係者は含まれません。ACIPメンバー選出の際には、ワクチンに関する専門知識を持っている事はもちろん、それぞれの専門分野、人種、出身地域に偏りがないように配慮されています。また、必ず一人は消費者代表が含まれるような構成にもなっています。この他、メンバーにワクチンに関する利害関係が生じていないか、あるいは生じる可能性がないかがかなり厳密に審査され、場合によっては投票権を失う、あるいは退任を求められることもあります。このように、可能な限り偏りを排除し、中立的な視点からデータの評価ができるような配慮がなされています。

実際の会議では、投票権を持つ15名を囲むように、各政府代表機関との兼任のex officioメンバー、そして投票権を持たない様々な学会、組織のliaison organizationsが取り囲んでおり、様々方面や立場からワクチンの議論がなされます。また、ワクチンの製造元である製薬会社の代表者も参加しており、必要に応じて回答を求められます。私のような一般人でも事前に申し込みさえすれば参加でき、パブリックコメントとして発言の機会も与えられます。

今回の審議内容はTdap(破傷風、ジフテリア、百日咳ワクチン、日本ではTdapの形では発売されていません)、インフルエンザ、13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)、B型肝炎、髄膜炎球ワクチン(日本では未承認)、MMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹の三種混合ワクチン)についてでした。時間の都合上全てには参加できなかった事と、実際に投票が行われたのはTdapだけで、あとは各種ワクチンに関連する最新情報やアウトブレークについての説明が中心でしたので、Tdapのセッションを中心に実際の様子をお伝えしたいと思います。

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