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宮田(野城)加菜

ブログについて

日本の医療、在米邦人の方々の医療に少しでもお役に立てるよう、情報を発信していきたいです。

宮田(野城)加菜

東京医科歯科大学医学部を卒業後、腎臓内科研修を開始。在沖縄米国海軍病院を経て2011年夏よりアメリカ、ニューヨークにて内科研修後、ロサンゼルスにて腎臓内科専門研修を行い、指導医となりました。

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(この記事は、若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に寄稿されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

渡米2カ月目のある日、外来研修中の話です。

 「今日は薬の変更はありませんので、今までと同じものを飲んでください。無くな    りそうな薬はありますか?」
 患者「ええ、無くなりそうな薬のボトルを持ってきました」

患者さんは鞄の中をごそごそ探し始めました。その間、私は電子カルテを見直し、必要事項がすべて記載されているかを確認していきます。社会歴を見ると、こう記載されていました。

”週末だけ少量のアルコール。タバコなし。たまにMJ。”

ここの外来の電子カルテでは、現病歴は毎回新たに入力しますが、既往歴・社会歴などは前回のカルテの内容がそのまま引き継がれます。私は、昨年卒業したレジデントの患者さんを引き継いでいるので、そのレジデントが記載したのでしょう。それにしても「MJ」とは何だろう?

患者さんはまだ薬のボトルを探しています。私は電子カルテの表示を縮小し、代わりにGoogleを開いて「MJ」と検索してみました。するとその瞬間、様々なアングルで撮られたマイケルジャクソンの写真が画面いっぱいに映し出されました。

「わあっ、消さなきゃ」。そう思うと同時に、薬のボトルを見つけた患者さんの頭が上がりました。きっと、「この医者はなぜマイケルジャクソンの写真を眺めているんだ?」と思ったことでしょう。気まずい時は正直に話すのが一番です。

 「以前のカルテの社会歴に、あなたがたまにMJするって書いてあるのですが、こ    れは何でしょうね?(たまにマイケルジャクソンしているの?)」

患者「ああ、それはマリファナだよ」
 私 「…」

そうなのです、アメリカに来て大ショックを受けたことの一つがドラッグ文化。コカイン、モルヒネ、ヘロイン、マリファナ…。私は実物を見たことがないので分かりませんが、中でもマリファナはタバコのように吸えてお手軽らしく、アメリカの高校生達も大勢やっているようです(恐ろしい…)。ある指導医は、大学時代に一度もドラッグをやらなかったことで周りの学生に不思議がられたと話していました。

指導医「カナ、日本では皆、何のドラッグをやっているの?」
 私  「普通は何もやりません」
 指導医「えー、カラオケで盛り上がったりして、何かやるんじゃないの?」
 私  「お酒を飲んで酔っ払いますが、ドラッグをやっている人を見たことはありませ     ん」
 指導医「へえ、信じられないねえ」
 私  「…(それはこちらのセリフです)」

日本で研修した数年間に、患者さんにドラッグのスクリーニング検査をしたことはほとんどありませんでした。でも、こちらでは毎日のように実施し、しかも陽性の結果が頻繁に返ってきます。入院フロアで働いていると、7~10人程度の受けもち患者のうち、3分の1程度はドラッグをやっている、もしくはメサドン(ヘロイン中毒者に処方される別の麻薬)内服中です。多くの患者さんが、ドラッグもしくはその離脱による意識障害、それに引き続く誤嚥性肺炎、コカインによる胸痛、注射針の使い回しによる肝炎やHIV感染などで病院にやってきます。

島国という地理的特徴からこれまで独自の文化を創り出し継承してきた日本ですが、インターネットの普及などで、物や情報の流通が格段に容易になりました。国際化はとても大事なことですが、このドラッグ文化だけは何としても日本に持ち込みたくないものです。ドラッグは絶対にいけません。

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