6月から7月にかけたこの時期は、4年に1回、人によっては仕事どころではない日々となります。サッカーW杯です。連日アツい試合で世界は盛り上がっていますが(多くの日本人は日本がグループリーグ敗退となりすでに盛り下がっているかもしれないですが)、アメリカでも「今はアメフトよりもサッカーだ!」といったテーマのCMが流れていたり、アメリカがグループリーグを突破したのもあってなおさらサッカー熱が高まっているように思います。
そんな『仕事どころではない日々』に、休暇と引越し準備で最後のレジデントの日々を少し早めに終え偶然TVスケジュールを気にしながら過ごせることになったサッカー好きの私ですが、実はW杯に勝るとも劣らない重大イベントが5月にありました。ヨーロッパのクラブチーム最高峰のトーナメントでスペインのチームが念願の10回目のヨーロッパ制覇を果たしたのです。
サッカーの前置きが長くなってしまいましたが、この話をしたのはこのチームを優勝に導いた名将監督が述べていた言葉を、今回優勝するよりも以前に偶然目にして心を打たれたからです。
『サッカーは世界のそれほど重要ではないもののなかで最も重要なものだ』
この言葉には『世界のそれほど重要ではないもの』という客観的な事柄に『最も重要』という主観的な部分が含まれているように思います。私はここにプロフェッショナルの本質があるように感じたのでした。
医師も一般的にはプロフェッショナルな存在とされています。一人一人の医師が『最も重要』とされるものを見つけ、それを極めていこうとする作業の継続。では、医療は『世界のそれほど重要ではないもの』に含まれるでしょうか?私も含め多くの人は「ノー」と答えたいのではと思います。サッカーが私のような人間に夢、情熱、元気といったものを与えてくれるのに対し、医療はより直接的に多くの人の命に関わっているという論理からです。物事の優劣をつけたいわけではありません。単純に、私がプロフェッショナルでありたいと思うものが医師であることに感謝するとともに謙虚であり続けないといけないと思うだけです。
3年間のレジデント研修を終えた今、 同期の仲間も様々な方向に歩みを進めていきそうです。先の名将に言わせればプロのサッカー選手とコミュニケーションを取ることのほうがアマチュア選手とよりずっと簡単と言います。プロは自分を律し、今どういう状況で自分が何をしなければいけないか分かっているからと。さて、私は、また仲間は、一体どんなプロフェッショナル像をそれぞれ作り上げていくのでしょう。少なくとも私はもっと自律した存在にならねばと・・・。そして主観的に『重要なもの』をもっと客観的に『重要なもの』に常につなげていこうとする努力が医療に関わる人間には必要なのだろうとも思います。フェロ―に進む自分に対し自戒の念をこめて。
“There is no exercise better for the heart than reaching down and lifting people up.” – John Holmes