随分ご無沙汰してしまいました。今回は、感染症フェローシップの外来研修の1つである、トラベルクリニックについてご紹介したいと思います。
1月から6月までの半年間、通年の病棟コンサルトサービスに加えて、Harborview Medical Centerで週1回感染症外来を担当していました。Harborview Medical Centerの感染症外来では、海外渡航前のトラベルクリニックも請け負っています。
トラベルクリニックとは?
海外渡航前の予防、カウンセリングから帰国後の体調不良の対応まで、海外渡航を予定される方の健康をサポートするための外来です。特に熱帯地域や発展途上国への渡航を予定されている方が多く来院されます。
問診に際しては、
・渡航先はどこか?どんなルートで移動するのか?
・渡航の目的は(観光・ビジネス・留学 etc)?
・渡航する期間はいつからいつまでか?
・誰と行くのか?
・どこに泊まるのか?
・どんなアクティビティを予定しているのか?
・既往症
・内服薬
・予防接種歴
などなどお聞きする内容は多岐に渡ります。
それらの内容をもとに、ワクチン接種、マラリア予防薬、(必要ならば)抗菌薬を処方します。必要なワクチンはその場で接種することができます。
カウンセリングの内容も多岐に渡ります。蚊を含めた虫刺されの予防、現地での食べもの飲みものの注意点、渡航中の性交渉についてのカウンセリングなど、感染症に関わることから、交通事故など、感染症以外のことがらも話し合います。
日本では成人の患者さんの予防接種歴を把握するのが非常に大変だったのですが(母子手帳の記録がアップデートされていないことも多く、またそもそも母子手帳が手元になくて参照できないことも多々あります)、ワシントン州では州内で接種されたすべてのワクチン接種が保健局によりオンラインに記録されて残っており、電子カルテに自動的に収集・反映されます。このシステムは、必要なワクチン接種のタイミングを逃さないためにも、無駄な繰り返しを防ぐためにも、ものすごく便利です。
行ったこともない世界各地への旅行予定をお聞きするのはそれだけでワクワクします。
マラリア、デング熱、腸チフス、結核、性感染症…海外渡航にまつわる感染症のリスクはリアルだからこそ(海外渡航の後に不運なことにこれらの感染症を発症されて入院された患者さんを診察することもしばしばです)、安全な旅へのお手伝いができるのはとても意義深い仕事と思っています。
海外渡航を予定されたときは(とりわけ熱帯・亜熱帯地域)、是非トラベルクリニックの受診をご検討ください。