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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

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(この記事は、2013年5月8日に若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に掲載されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

米国では、研修医も研究に携わることが強く推奨される。多くは臨床研究で、基礎研究に従事する研修医は少ない。理由は単純で、フェローシップの応募やその後の就職の際に過去の研究成果が大きく影響するからだ。医学生のうちから先を見据えて研究に携わり、レジデンシー開始時点で数本の論文に共著者として名を連ねる実績がある人もいる。指導医も臨床、教育の傍ら研究に取り組む人が多い。

ニューヨークの内科研修プログラムでも、レジデントの研究参画を促すための委員会があり、本人の興味に応じて研究のアイデアを一緒に話し合ったり、将来目指す分野の指導医を紹介して研究テーマを見つけるのを助ける取り組みがなされていた。進路に影響するといっても、全ての研修医が研究に強い興味を持っているわけではなく、自分からテーマを見つけて研究を始められる人は比較的少ない。プログラム側としても、自分のところの研修医が良いフェローシップに行くのは業績になる。したがって、研究に取り組みやすい環境を作ることは双方の理にかなっている。

内科であれば、忙しいとはいえ、通常業務を続けながら選択研修の期間を利用して研究を進めることが可能だ。しかし、外科研修となるとなかなかそうはいかない。ところが外科でもその後の進路に研究が影響するので、外科研修の途中で1年間休んで研究に従事する人が多いようだ。私の知り合いの医師も、5年の外科研修のうち3年が終わった時点で1年間休みを取り、研究に従事していた。

実際に私も、レジデンシー中に血液検査のプロセス改善に関する取り組みと研究に携わった。そしてその成果を全米規模の学会や病院の管理者たちの前でプレゼンするなど、非常に良い経験をさせてもらった。私の場合は一般的な臨床研究というよりも、病院の仕組みをどう変えてシステムを最適化するかという取り組みだが、最近は医療分野でもそういう研究が増えてきている。

臨床だけでなく研究にも興味を持ち、幅広い能力を持った医師を育てる教育システムと好意的に捉えるか、好きでなくても将来の進路のために研究をやらざるを得ない無駄の多いシステムと捉えるかは人それぞれだろう。確かに、その後開業してずっと臨床だけをする人には効用が少ないかもしれない。しかし、臨床研究であれ基礎研究であれ、医師が研究に携わることの価値を多くの人が認めるのではないだろうか。実践されている医療に常に批判的吟味を加えることで、現場の医療は進歩していく。研究心や正しい解釈手法を持たないと、客観的な現状分析はできない。必ずしも論文を書く必要はないが、研究に必要な能力は臨床医学を実践する上でも必須だろう。

最後に、そういった意味では突出して恵まれたメイヨーの環境を紹介したい。臨床研究を行う上で常にボトルネックになるのが統計解析だと思うが、メイヨークリニックには統計専門家が100人以上いる。そして、好きなときに好きな回数だけ個別の統計解析相談をすることができ、電話すれば翌日にも予約が取れる。私もすでに3回利用した。この環境は極めて例外的であることを知っているが、利用可能な資源は最大限活用させていただきたいと思っている。

3件のコメント

  1. はじめまして。
    今回、”米国臨床留学”で検索して、”あめいろぐ”にたどりつきました。
    今日本で初期研修医1年目で、今後ニューヨークでの臨床留学を考えています。

    何故アメリカに行きたいのかは漠然としてはいるのですが、
    日本とアメリカの両方の医療を知ることで自分の医師としての深みが増しますし、
    単純に考えて日本とアメリカの2国から情報が入ってくるのですから、
    チャンス、知識、情報も単純計算で2倍入ってくるような気がしています。

    今回の記事で臨床医でありながら研究にも携われるという点が書かれていて、
    統計専門家など興味深いことも書かれておられます。

    私自身、臨床医として今ある技術で治せる病気を治す仕事をするだけでなく、
    臨床研究など別の形で新しい治療の開発に少しでも携わりたいと思っています。

    アメリカで臨床留学をした場合、そういった臨床をやりながら、
    新しい治療の開発や研究に携われるキッカケやヒントなどはあるものなのでしょうか。

    新参者で申しわけないのですが、
    コメント頂ければ嬉しいです。

    • コメントありがとうございます。「アメリカで臨床留学をした場合、そういった臨床をやりながら、新しい治療の開発や研究に携われるキッカケやヒントなどはあるものなのでしょうか。」という点に関してですが、もちろんそういうことも可能だと考えます。基本的に、本当にやりたいと思っていることがあれば、それが実現不可能ということはありません。アメリカでの臨床留学は、その可能性を高める一つの選択肢になりうるのではないでしょうか。ぜひ頑張ってください。

      • 反田様

        ご返信ありがとうございます。
        「本当にやりたいとおもっていることであれば実現不可能はない。」
        確かにそうですね。
        これからもアメイログを見て励みにしながら頑張りたいとおもいます。
        ブログ更新楽しみにしています。

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