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反田篤志

ブログについて

最適な医療とは何でしょうか?命が最も長らえる医療?コストがかからない医療?誰でも心おきなくかかれる医療?答えはよく分かりません。私の日米での体験や知識から、皆さんがそれを考えるためのちょっとした材料を提供できればと思います。ちなみにブログ内の意見は私個人のものであり、所属する団体や病院の意見を代表するものではありません。

反田篤志

2007年東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修後、ニューヨークで内科研修、メイヨークリニックで予防医学フェローを修める。米国内科専門医、米国予防医学専門医、公衆衛生学修士。医療の質向上を専門とする。在米日本人の健康増進に寄与することを目的に、米国医療情報プラットフォーム『あめいろぐ』を共同設立。

一歳半を過ぎてますます活発になり、要求度の増す長男の相手が大変になりつつある今日この頃。Terrible Twoと呼ばれる二歳が来ると一体どうなってしまうのか、戦々恐々とした気持ちです。最近は彼が見せてくれる様々な行動に、脳の機能発達を考えさせらることが多いです。その中で疑問に思うことがいくつかあるので、ちょっと共有させてください。

1.指の数の認識

指で形を示しながら「いち、に、さん、よん、ご」と教えた後に、指の形を見せて「これなに?」と聞きます。すると、どういうわけか「いち」「に」「ご」は答えられるのに、「さん」「よん」は答えられません。「さん」と「よん」の形を見せても、少し眉間にしわを寄せて考えた後に、「これー」と言い、たまに「にー」とか「ごー」とか言って間違えます。「さん」だよ、と言えば「さーん」、「よん」だよと言えば「よーん」と繰り返すのですが、もう一度同じ形を見せて「これなに?」と聞くと答えられません。そして「さん」や「よん」の形から、なんとか閉じている親指や小指を開かせようとしてきます。指を開くと嬉しそうに「ごー」と言います。これは何度やっても同じです。なぜ「さん」と「よん」は認識できないのでしょうか?数字の概念があるとは思えないので、手の形で覚えているのでしょうが、形状認識的に「さん」と「よん」が他と区別できない理由がいまいち分かりません。それとも、「いち」「に」までは数字の認識があって、「さん」以上は「いっぱい」で数えられず、「ご」だけ手の平の形状認識をしているのでしょうか?

2.言語認識と発話

話をしていると、かなりの言葉を認識していることが分かります。「おむつポイポイ(捨てること)してきて。」と言えば、オムツ入れにオムツを捨ててきます。レゴをしていて「もうちょっと足して高くしたら?」と言えば、ブロックを持ってきて積み上げます。その言語理解に比べると、発話は遅れて成長している印象です。二子音+母音(「コップ」「そうじ」「おやつ」など)はつなげて発音できますが、三子音(「みどり」「さかな」など)は発音できません。「みどり」なら「みどい」、「さかな」なら「あかな」になってしまいます。発話には大脳皮質の言語領域の発達と、舌の協調運動が必要です(と思っています)が、子音が上手く発音できないのは舌の協調運動が追い付いていない印象です。二語文を話すためには、大脳皮質がもうちょっと発達する必要がありそうです。この辺は個人差が大きいと思いますが、どうなのでしょう?子どもによっては発話が言語理解と同程度に発達するのでしょうか?それとも中には言語理解が発話に追い付かず、二歳前の段階でウェルニッケ失語(訳のわからない日本語をただひたすらしゃべる状態)のようになりうるのでしょうか?

完全に主観的な観察と、医学部時代の知識を元にしているので、残念ながら医学的事実の正確さを担保できる内容ではありません。どなたかこのあたりに詳しい方いらっしゃいませんか?小児科の先生から、もしくは皆さまのお子さんの観察事例からの情報をお待ちしています。

6件のコメント

  1. うちの娘(2歳1ヶ月)も数字は本(英語)をみながらone, twoぐらいはいけてもthreeは言えません。その次はnineにとびます。
    僕の観察では、さ行はなかなか言えません。スプーンは必ず”プーン”で、背中もしょっちゅう”おなか”になります。
    子どもをもつ方なら皆さん同意してくれると思いますが、我が子の成長に思いを馳せることが一日で一番幸せな時間です。

    • > 「さ」行って難しいんだな、って僕も思いました。うちも頑張って言おうとしているのですが、「あ」行か「は」行になります。あと「ら」行も難しいようです。「た」行と「ら」行って同じような舌の使い方をすると思うのですが、それでも難易度に違いが出るのが面白いですよね。

  2. こんにちは。日暮です。アメリカでの幼児発達論の視点からのアイディアを少しだけ書かせていただきたいと思います。

    まず、1についてですが、反田先生の息子さんの場合『さん』、『よん』の形の区別がつかないというよりは、息子さんにとって(彼の目線からの世界のなかで)必要のないもの、重要ではないものだと処理されているというのが私は、一番しっくりくる気がします。

    大人もそうですが、子供たちは、自分の持っている知識に関係づけられるものから覚えていくことがほとんどです。1歳半位の子供たちが日常の遊びの中で、指でつくる『さん』、『よん』の形を使う機会はほとんどありません。 3歳の誕生日が来るまで指でつくった『さん』が登場する事はまずないと思います。その上、一人で指を使って『さん』、『よん』の形をつくるのも、1歳半の子供たちにとっては大変難しい事です。 

    それに比べ、『いち』、『に』、『ご』の形を使う場面はたくさんあります。 絵本を見ながら指差しをしたり、パチパチと手を叩いたり、、、。『に』は、『いち』と『ご』ほどではありませんが、ピースをしたり、ものをとったりするときに人差し指を親中指のセットを使う場面が日常生活の中であります。(←自分はできなくても大人が使っている所を見る機会があるという意味です)。

    そういう意味で『いち』、『に』、『ご』は息子さんにとって面白いものであり、『さん』、『よん』は面白くないもの、あまり自分とは関係のないものだと思っているのではないかなぁと思います。

    ただ、反復練習をそれなりにすれば『さん』と『よん』を区別する事はすぐに出来るようになると思いますよ :) ちなみに、数字の意味(『3とは、ものが3つあることだ』ということ)を理解する力というのは一般的(アメリカでは)に2歳の後半〜3歳のはじめ頃から発達すると言われています。

    2の言語の発達速度についてですが、受容言語(Receptive Language)が、表出言語(Expressive Language)より先に発達していくのが一般です。ですので、2語文、3語文を使いこなせるようになる過程でJargonに『実在する単語』が混じっている『訳の分からない日本語』を話す期間があるのは(たいてい18ヶ月から24ヶ月位の間に多いです)ふつうです。しかし、表出言語が受容言語より先に発達してしまい『ウェルニッケ失語症』の方に見られるような日本語を話すようになる事は、一般の発達過程ではまずありません。

    発音に関しては、反田先生の書いていらっしゃる通り、3子音がある単語(3つの音が、口の中のあちこちで発生する単語)をきれいに発音する事は、1歳半の子供たちにはかなり高度な技となります。また、こうした高度な単語にぶつかった場合、子供たちはその単語を単純化し、使いこなそうとします。そのプロセスのなかで、『みどり』が『みどい』になったり『さかな』が『あかな』となるわけです。

    たとえば、『みどり』の場合、『み』は唇をくっつけ、『ど』は舌を歯の裏側の上の方、『り』は上あごの真ん中よりでちょっと舌先をカールするような動きをさせなくては、正しい発音が出来ません。一瞬のうちに、この動作をスムーズにするのは至難のわざとなります。『り』が『い』に変換してしまうのは、『ど』と言ったあとに、その舌の位置から『り』を言うときのような感じで空気を外に向かって送ると『い』になってしまうからです。

    それと同じように、『さかな』という単語も、発音しようとすると、音が発生する場所が、前(さ)、後ろ(か)、真ん中上(な)と行ったり来たりしてしまいます。『あかな』とすると、後ろより(あ)、後ろ(か)、真ん中上(な)と簡略できるわけです。ただ、『さ』といいながら、口を開けると『あ』になるので口の中での空気の流れとしては『みどり』の場合と同様に間違ってはいません。

    と、長々書いてしまいましたが、少しでも参考になれば幸いです。

  3. ちなみに、下記のリンクはAmerican Speech-Language-Hearing Associationからの外部リンクで、英語の発音のマイルストーンが分かり易くチャートになっています。

    “What sounds should my child be saying”
    http://www.talkingchild.com/speechchart.html

    • 日暮さん、ありがとうございます!このチャート面白いですね。「th」や「v」の音って、子どもにとってもやはり難しいのですね。自分の世界に関連する言葉を優先的に覚える、という視点は面白いですね。あまり考えたことがなかったですが、なるほどなと思いました。しかしいくら反復練習してもうちの子は「さん」と「よん」を覚えてくれません…圧倒的な情報リテラシー(不要なものをばっさりと切り捨てられるという意味で)なんだなと納得することにします。そういえば、うちの子が良く「あばば」と言って何かを表現しようとしていますが、何を指しているのか全く見当がつきません(笑)

  4. 「あばば」って何でしょうね、、、(笑)。職業上、Jargonプラス実在する単語を混ぜながら発話する子供たちと接する機会が多いのですが、かれらの『どうして、この大人は僕/私の言っている事が分からないのだろう、、、?』という、いかにも不思議なものをみるような目線が大好きです。

    余談ですが、バイリンガルの子供たちは2歳前後ぐらいから、この人とは英語、この人とはスペイン語をしゃべるというように、しゃべる相手によって2カ国語を使い分けてきます。私も、2歳児レベルのスペイン語はできるのですが、絶対にスペイン語では話しかけられません(笑)。子供の観察力には本当にびっくりしてします。

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