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小林 美和子

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

小林 美和子のブログ
2012/05/06

痛みとPatient Satisfactionと中毒(2)

その(1)つづき)

ニューヨークで仕事を始めたときに驚いたのが、Methadone Maintenance Program(MMTP)の存在である。MMTPとは、ヘロイン中毒の患者さんのヘロイン乱用解消を目的に、合法的に長期作用型のオピオイドであるMethadoneを投与するプログラムのことである。患者さんは入院すると、MMTPに所属していることと、その使用量を証明した上で、入院中も処方を受ける事ができた。MMTPでは、通常スタッフの目の前でMethadoneを内服するのだが、認められれば数日分まとめて受け取る事もできる。しかし、噂では、口にしたフリをしてあとで吐き出し、闇市場で売ったりすることも行われているそうである。もちろん、処方薬がそのままそのような闇市場に出回る事もある。そしてもう一つ驚いたのが、オピオイドの使用の閾値が非常に低い事である。日本でも、担癌患者の疼痛コントロールにはよくオピオイド系鎮痛薬を使っていたが、それ以外の疼痛コントロールにはあまり使う事がなかった。しかし、アメリカではNSAIDS(ボルタレンなどの系列)の副作用を嫌ってか、アセトアミノフェンが効かなかったら、かなり容易にオピオイドを含む鎮痛薬が次の段階として用いられている。加えて上記の「痛みの評価」も加わって、痛みの対応を求められる局面が多く、処方の機会の増加につながっているのは否めない。

 

アメリカ南部に移ると、薬物中毒の性質も少し変わり、あまりヘロインなどオピオイド中毒者をみかけなくなったのだが(一方コカイン中毒が多い)、ニューヨークにいたときは、オピオイド中毒のせいか知らないが、オピオイド系の痛み止めの処方を求めて凄まじい勢いで医療者に迫る光景に何度か遭遇した。

 

先の講師の話に戻るが、薬物中毒の話に関連し、非常に興味深い話をしていたのでここにご紹介したい。ある動物実験で、ラットをヘロイン中毒にし、檻に入れてラットがボタンを押すとヘロインが注入されるようにしかけた。するとラットは観察期間中、何百回もボタンを押した。次にそのラットの檻に穴をあけ、他のラットがいる広い部屋にしばらく放置した。するとラットはヘロインがある檻には残らず、他のラットとともにどこかへ行ってしまった、とのことである。

 

ラットが檻に閉じ込められてボタンを押す、という選択肢から逃れられないから何百回でもボタンを押すが、逃げるという選択肢を与えられれば逃げてしまった、ということである。薬物中毒の行為を正当化するつもりはないが、自分の患者さんで薬物中毒のある人たちを振り返り、この例えを耳にして改めて彼らのがなぜ薬物に手を出すようになるのかを考えずにはいられなかった。

 

参考文献/サイト:

http://www.jointcommission.org/

http://emedicine.medscape.com/article/287790-overview

Wang J, Christo PJ. The influence of prescription monitoring programs on chronic pain management. Pain Physician. May-Jun 2009;12(3):507-15.

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