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小林美和子

ブログについて

小林美和子

世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。

アメリカで医療に携わるようになって気付いた違いの一つ。それは、特に外来において「痛みの評価」の記載がバイタルサイン同様に求められるということである。その理由として、Joint Commission(JC)という機関が患者さんの痛みの評価とそのマネージメントを行う事を、2001年よりJCに認定されるための項目に加えていることが挙げられる( http://www.jointcommission.org/pain_management/)。 米国にはJCという医療施設の認定機関があり、多くの州で、JCによる認定をMedicaidの支払いの条件としている。よって、JCの認定を受けられない事は、病院にとって死活問題につながりうることで、必死になってそれを避けようと努めるのである。近年ではJCは抜き打ちの視察を行うようになり、以前に努めていた病院ではJCの視察が予想される時期には認定を受けられるよう、病院全体で必死になって様々なキャンペーンや啓蒙活動が繰り広げられていた。

 

先日HIVのセミナーに参加した際、ある講師(薬物中毒専門家)が「痛みの評価をバイタル同然に扱うようになったのは、医療史上最悪の過ち」と豪語していた。これは決して患者さんの痛みなどどうでも良い、と言っているのではなく、アメリカの異常とも言えるオピオイド(モルヒネなどが分類される。多幸感をもたらすため、乱用されることがある。)乱用をさらに煽った一因として嘆いた上でのコメントなのである。

 

ある報告では、アメリカ合衆国は世界人口の5%未満しか占めないにもかかわらず、世界の80%のオピオイドを消費しているという。また、アメリカで、世界の三分の二もの違法薬剤が消費されているという。そして、1999年から2006年までの間に、処方鎮痛薬を違法に使っている12歳以上の数が倍以上に増加したという報告もある。

(その(2)に続く)

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