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ブログについて

私の受けたアメリカの医学教育の話、スタンフォードでの内科レジデント生活、 Physician Scientistを育成するシステム、シリコンバレーの学際的環境について、といった内容で情報発信できればと思っております。

川名 正隆

東京に生まれ育つ。小学校卒業後1年半をテネシー州で過ごす。東京大学教養学部を卒業後再渡米し、ブラウン大学医学部を卒業。現在スタンフォード大学病院で内科レジデント、2012年より同大学循環器内科フェロー。心筋症・心不全などの心筋収縮異常の病態メカニズムに興味あり。基礎研究と臨床のバランスの取れたキャリアを模索中。

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2012/04/16

参加型臨床実習の現場より(5)臨床実習評価

3.学生評価とモチベーション

最後に臨床実習の評価に関して書こうと思います。3年生のコア実習においてはNBME(USMLEも作っている組織)が発行しているShelf Examのスコアと、インターン・レジデント・アテンディングの病棟での実習の様子が合わさって成績がつきます。実習内容の評定の比重はコア実習全体の成績の50%を占めるので、良い成績を取るには試験だけではなく実習でも頑張らないといけません。

内科のコア実習の評価内容には、病棟現場において学生が医療従事者としてどれだけ「Reporter・Interpretor・Manager・Educator」になれたかという4項目と、「Professionalism & Interpersonal Communication」という項目が含まれます。Reporterというのは患者さんの基礎データを集めてカルテに記載し、回診中に理路整然としたプレゼンができるか、Interpretorは基礎データの内容を正確な病態生理の理解の基に解釈してまとめることができるか、Manager/Educatorの項目では実際の患者さんに対してどのような検査や治療方針を立てて、説明・指導することができるか、ということが判断されます。多くの3年生はReporterとInterpretorになれれば合格、さらにManager/Educatorとしての働きが認められれば「Sub-I同等の能力あり」という高評価になります。Professionalism & Interpersonal Communicationにおいては、患者さんに対して医療従事者としての接し方の基本的マナーがしっかりしているか、スタッフ間との意思疎通は十分にできているか、チーム内でどれだけ信用を勝ち取って、チーム医療にどれだけ貢献できたか、というようなことが判断されます。評価をする側は、こうした項目一つ一つに、実際の現場であった症例など具体例を添えて書くことが求められます。

Sub-Internshipにおいては、以前も書いたように試験なしで臨床実習のみの評価になり、上記のコア実習と同様の評価項目が含まれ、特にManager/Educatorの項目が注目され、ProfessionalismとCommunicationに関しては総合的にどれだけインターンと同じような業務が遂行できたかが判断されます。こうした評価作業は、実習終了後に紙に書いて渡されるだけでなく、直接学生に対して個人面談を行ってフィードバックを与えることが実習中に2度(実習半ばと終わった後)義務付けられていています。こうした記述式の評価は、マッチングの際に「Dean’s Letter」という大学からの推薦状にそのまま引用されることが多く、各学生は自分の志望する専門科の実習で頑張った証をDean’s Letterに書いて貰うように努力をします。実際の臨床現場での評価において、具体例がなく漠然とした印象しか書かれていない推薦状は決して良い評価には繋がりません。どんなに試験の成績が良くても、それだけでは駄目なのです。

以上のように、教える側はかなり詳細な内容のEvaluationを求められ、特にレジデント(研修2・3年目)は学生教育の一番の担い手になるので、その責任はかなり大きくなります。同時に、他人に物を教える時ほどしっかり勉強してから内容を伝えるようにしますから、レジデントにとっても自分がインターン時代に身につけた知識を確かなものにする大きな機会にもなります。どれだけこのような教育に時間を費やすかはレジデントの判断に任されますが、今までに書いてきた通り学生さんもレジデントの裁量次第でいくらでもチームの戦力になってくれますので、それに報いるべく、学生さんに教育的に良い時間を過ごしてもらうためにレジデント達は日々努めています。(続く)

2件のコメント

  1. 浅井 章博 より:

    実際にレジデントのマッチングのときに、一番影響力があるといっても過言でないのは、Sub-Iを一緒にしたレジデントとインターンからの評価でしょう。一ヶ月間一緒に病棟勤務をすれば、人柄もわかりますし、翌年一緒にレジデントとして働きたいかどうかが よくわかります。マッチングの最終候補を絞るときに、非公式ですが、レジデントたちがプログラムディレクターのところへ行って、自分が一緒に働いたSub-Iをとるべきかどうかの率直な意見を伝えます。ここで、いい評価があった学生はまず間違いなくマッチングします。逆に言えば、Sub-Iで評価が悪ければ、マッチングは無理でしょう。
    遠く離れた医学部から、または、マイナーな医学部から、人気レジデントプログラムに一発勝負をかけてSub-Iをやる学生が毎年たくさんいます。そのためSub-Iはいつも応募学生が多く、残念ながら外国人医学生にはあまり機会がめぐってきません。しかし、アメリカで研修を考えている人には、とても貴重なチャンスなので、ぜひ目指してほしいとおもいます。

    • 川名 正隆 より:

      浅井さん、コメントありがとうございます。Sub-Iの評価は仰るとおりとても重要ですね。
      以前、私も面接シーズンの時に感じたことを書いたのですが、インターンやレジデントが実際にマッチングのプロセスに関わるというのは大きいですよね。Sub-Iは、内科だと比較的空いている時期があったりします。内科実習はわりと3年生の早い時期に履修する人が多いのですが、Sub-Iをする前には一通りコア実習が全て終わっていることが前提なので、4年生になった7月以降に多くのSub-Iがやってくる一方、3年生の1月~4月くらいはあまり多くのSub-Iを見かけない気がします(内科志望の学生がこの時期にSub-Iをやるのでは遅すぎるため)。したがって学期開始時期がずれている日本の学生さんも、空いている時期を狙って応募してみるのが良いかもしれません。

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