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ブログについて

アメリカの一町医者として、内科・小児科を中心にしたプライマリ・ケアの実践、医学生・研修医の指導、公衆衛生大学院での勉強、クリニックの経営などを通じて、関わってきたアメリカ医療の一面を私流の独断と偏見に基づいて語りたいと思います。

金 一東

岡山大学卒業。横須賀米海軍病院、徳洲会病院で研修後、外人相手のクリニックでプライマリ・ケアを。渡米し、内科・小児科の合併研修。スクリプス・クリニック勤務後、日本人相手のクリニックの院長に。コロンビア大、SDSUの公衆衛生大学院で疫学を勉強。医療過誤の研究にも関心あり。将来の夢は、本を出版すること。

金 一東のブログ
2014/04/06

町医者のたわごと(3)-在米日本人に多い病気

今回は、がらっとトピックを変えて、在米日本人に多い病気についてコラムを書いてみました。これはサンディエゴの地元の日系誌に以前投稿したものを一部変更したものです。アメリカ在住中の健康管理に役立てば幸いです。

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 在米日本人の病気の研究としては、ハワイで行われた一世、二世、三世などを対象にした病気の推移を見た研究が有名ですが、それ以外の研究もハワイやロスなど日本人人口の多い所で行われてきました。ところが、それらの研究のほとんどが日系アメリカ人を対象としたもので、駐在員や留学生のように数年単位で滞在する日本人を対象としたものではありません。

 数年程度の在米生活でも、ライフスタイルの変化によって、病気の内容に変化があるのではないかと推測されます。日本クリニック・サンディエゴに来院される患者さんを通して、在米による病気内容の変化について考察してみました。もちろん、日本クリニックに来られる日本人の患者さんの病気の傾向が、在米日本人全体の病気の傾向をそのまま示すわけではありませんが、かなり参考になると思います。 

過去の研究 

過去の在米日本人及び日系アメリカ人の研究では、アメリカでの生活が長くなるほど、あるいは二世、三世とアメリカナイズされるほど、アメリカ白人に近い病気のパターンになっていくと報告されています。日本人に昔から多い病気は、胃がん、肝臓がん、脳内出血などですが、アメリカ白人に多い病気は、大腸がん、乳がん、心筋梗塞、肺塞栓症などです。アメリカでの生活が長くなり、食生活やライフスタイルがアメリカナイズされていくに従って、心筋梗塞、大腸がん、乳がんなど白人型の病気が増えていきます。また、ハワイよりもカリフォルニア在住の日本人の方が心筋梗塞、脳梗塞の罹患率が高い傾向があります。これは、カリフォルニア在住の日本人のライフスタイルがよりアメリカナイズされているということになります。 

糖尿病に関しては、在米日本人 (日系アメリカ人) は日本在住の日本人よりも罹患率が高いのみならず、アメリカ人白人よりも高くなると報告されています。特に、生活習慣病と呼ばれる食生活・ライフスタイルに影響される糖尿病のような病気は、在米年数が長くなればなるほど日本人に影響していくようです。 

在米日本人のグループ分け 

 在米日本人の間の病気を考える場合、在米日本人をいくつかのグループに分けると分析しやすいのではないかと思われます。ただ、ここでは、これまでの研究の対象になった移民第一世、二世、三世以外の、ここ10年内に渡米してきた日本人についてのグループ分けを考えてみます。まず、駐在員、そしてその家族、留学生、短期滞在者、旅行者、それに地元で働いている人やアメリカ人のつれあい、という具合に分けてみます。 

駐在員 

駐在員は、日本の企業から短期 (5年以内) 、アメリカに派遣された会社員ということですが、基本的に健康な人が多く、慢性的な病気が渡米前にあってもよくコントロールされている人がほとんどです。ただ、アメリカでの運動不足、食生活・ライフスタイルのアメリカ化によってアメリカ白人に多い病気が増えていきます。高脂血症、糖尿病、高血圧、痛風と言った病気です。肥満の頻度も高くなっていきます。さらに、在米中の仕事量の増加や睡眠時間の減少などでストレスに曝 (さら) される人も多く、ストレス関連の病気が多くみられます。アメリカでの新しい環境に慣れずに、適応障害になる人もいます。 

駐在員のつれあい

駐在員のつれあいの方も基本的に健康な人が多く、慢性疾患を持っている確率は駐在員よりも低いようです。運動不足は駐在員と同じくらいの頻度ですが、食生活は外食が少ない分、駐在員よりは健康的で、生活習慣病のリスクは駐在員よりは少ないようです。また、成人女性は在米年数に応じて乳がん発生のリスクが高くなるので、在米年数の長い人ほど乳がん検査が必要です。また、駐在員と同じく、適応障害のリスクがあります。

 駐在員の子供 

駐在員の子供も基本的に健康な子供が多く、慢性疾患を持っている子供はほとんどいません。ハンバーガーなどのジャンクフードを好みむ子供は肥満傾向にあり、運動不足と組み合わせてみると、子供でも生活習慣病のリスクは高くなります。学童時は日本でもよく見られる溶連菌咽頭炎やインフルエンザ以外に、日本ではあまり最近見ることがないシラミのリスクもあります。また、高校生・大学生の間では違法なドラッグに手を出す機会が多くなります。これは在米年数が長くなればなるほど確率が高くなってきます。また、性感染症のような感染症の罹患率も高くなります。

留学生 

留学生も一般的に健康な人が多く、年齢も低い (20歳代が多い) ので駐在員のような生活習慣病のリスクは高くはないですが、食生活・ライフスタイルが極端にアメリカナイズされると生活習慣病のリスクが高くなります。実際に20代の男性で、短期間で肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病、脂肪肝になった留学生もいます。

 年齢的に膀胱炎のような尿路感染症、性感染症、伝染性単核症のような感染症のリスクが高くなります。このような感染症は性的活動に関係があり、HIVのリスクもこのグループで高くなります。大学生・大学院生では、勉強のきびしさから、ストレスに関係のある疾患 (過敏性大腸炎、胃炎、睡眠障害) になる人もいます。また、環境の変化などのストレスで生理不順や無月経症になる女性も多く見受けられます。

短期滞在者

 1年以内の短期滞在者も駐在員・留学生と同じようなリスクを持っています。数か月以上の短期滞在でもライフスタイル・食生活の変化によって、高脂血症や糖尿病などのリスクは高くなります。また、年齢によってそれぞれの年齢に特有な病気のリスクはあります。例えば、若い人は性感染症や尿路感染症、高齢者は心筋梗塞、脳梗塞などです。家族訪問のために渡米し、飛行機を降りたとたんに心筋梗塞や脳梗塞になる高齢者もいます。 

旅行者 

旅行者では、旅行そのものによるリスク (例えば高齢で糖尿病などがある人は飛行機でのエコノミー症候群) と、メキシコなどに旅行すると細菌性胃腸炎などの感染症のリスクがあります。場合によっては、性感染症のリスクも考えなくてはいけません。

長期地元で働いている人及び滞在者

アメリカの企業、小売業、商業関係で長期働いている人、あるいはつれあいがアメリカ人、または何らかの理由でアメリカに長期滞在している人は、滞在年数に応じてアメリカ白人型疾患のリスクが高くなります。また、職業によってリスクも変化してきます。例えば、すし職人・料理人はアルコール摂取過多によるアルコール肝障害のリスクが高くなります。

 

 

 

 

 

 

4件のコメント

  1. 小澤州美子 より:

    ニュージャージーに住んでいます。滞米30年になります。年齢61歳。
    糖尿病になって10年ほどになります。インシュリンは使っていません。
    http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20101208.html
    上記のサイトは、NHKの「ためしてがってん」の糖尿病の治療の件です。もしお時間があったら見ていただけませんでしょうか?
    アメリカでこのような治療を受けられるのかどうか知りたいのですが。
    お返事をいただけると幸いです。

    • 金 一東 より:

      コメントありがとうございます。この「ためしてがってん」に出てくる薬は、インクレチン系の薬でGLP-1というグループに所属する薬で、アメリカでは、Byett,Victoza、Bydureon という名前で使われていますが、すべて注射薬です。順番に、日に2回、1回、週に1回皮下注射するようになっていますが、この番組で紹介されているように、運動療法や食事療法がなくてもいいわけではありません。糖尿病の治療の基本はやはりライフスタイルを代えるということで、特に今までのやり方と違うわけでもありません。番組なのでドラマチックに紹介されていますが、劇的に糖尿病の状態を改善するわけでもなく、膵炎などの副作用もあるようなので、主治医または専門医に相談してみてください。

  2. 平田 海邦 より:

    現在、山口大学医学部を一年休学して、UCSD Extensionの方に語学留学をしているものです。
    将来はアメリカで医師として働きたいと思っていて、その上で日本の医師免許取得後、どのようにアメリカで医師免許を取得するかや、アメリカで働く上での障害などについて伺いたく、サンディエゴで働かれている日本人医師について探していたところ、このブログを拝見しました。
    上記のことなどについて色々と伺いたいのですが、連絡を取ることは可能でしょうか?
    返信お待ちしております。

  3. 金 一東 より:

    平田さん、
    返事が遅くなって申し訳ありません。是非、私のクリニックにいらしてください。Shadowing といって、私について患者さんの診療の見学も可能です。12月は2人の学生(アメリカの大学の卒業生)がShadowing の予定をしています。クリニックの電話番号は858-560-8910 です。クリニックのメールは、sandiego@nihonclinic.com です。

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