Skip to main content
浅井章博

ブログについて

Born in Japanだが医者としてはMade in USA。日本とは異なるコンセプトで組み立てられた研修システムで医師となる。そんな中で、自分を成長させてくれた出会いについて一つ一つ綴っていく。

浅井章博

岐阜県産 味付けは名古屋。2003年名古屋大学医学部卒。卒業後すぐにボストンで基礎研究。NYベスイスラエル病院にて一般小児科の研修を始め、その後NYのコロンビア大学小児科に移り2010年小児科レジデント修了。シカゴのノースウェスタン大の小児消化器・肝臓移植科にて専門医修了。現在はシンシナティー小児病院で小児肝臓病をテーマにPhysician-Scientistとして臨床と研究を両立している。

★おすすめ

(この記事は2012年4月13日 CBニュース http://www.cabrain.net/news/ に掲載されたものです。)

米国の医師免許試験が、日本で受けられるのをご存知ですか? 日本だけにとどまらず、世界中の主要都市で受けられるのです。何故そんなことが可能なのか。そこにはどんな意図が込められているのか。今回は、USMLE(US Medical Licensing Examination、米国医師試験)の制度とその内容を見ることで、日米の医師制度とその規制の違いにスポットライトを当ててみようと思います。

USMLEにはStep1、2、3と3つの段階があります。Step1は基礎医学分野の知識を問う問題。日本の医学部の4年生までに学ぶ分野です。Step2は臨床の知識と技量を問う段階。模擬患者さんを実際に診察する実技が含まれます。Step3は最終段階で、病院や診療所での実際のケースを解決するための知識が問われます。Step3は、米国では多くの場合、医学部を卒業して1-2年後、つまり研修中に受験することになります。実技以外はすべて点数で評価され、ある水準以上の点数を取れば合格となります。

 ■受験資格を広げる米国と、制限する日本

医師免許試験における日米の違いはいろいろありますが、その中でも特筆すべきは、”競争”の有無でしょう。

まず、USMLEの受験資格ですが、世界に例がないほど多くの人に開かれています。基本的には医学部の学生、または卒業生であれば受験できます。アメリカの医学部である必要はなく、、米国の認定機関にカリキュラムを認められている医学部なら、世界中どこの国の医学部出身でも受験できます。

実技以外のStep 1、2は、米国まで行かなくても、世界中のテストセンターで受けられます。。試験会場も、TOEFLを受けるときと同じような、とても身近な場所です。さらには、1年中、いつでも受けることができます。 これは資格試験という性格にしては、画期的で、驚くべきことだと思います。

 日本の場合は、受験資格が厳しく制限されています。外国の医学部を卒業した人が日本の医師国家試験を受験するには、まず卒業した国の医師免許を取得していなければなりません。また、学生には受験資格がありません。受験希望者を一人ずつ書類審査して、さらに日本語能力を審査した上で受験資格を認めるという仕組みです。米国のように、認定した大学に所属、または卒業さえしていれば受験を認めるという制度とは大きく異なります。

 世界中の医学生がそれぞれの国で受験できるという体制は、明らかに、より多くの人が受験できるように設計されています。より多くの人が世界中から受験すること、それは受験者間の競争を加速することにつながります。

 この試験をパスし、つまり知識と技量が基準に満たされるかを確認するだけで、より多くの外国人が医師免許を取得していきます。まるで、世界中から人材の流入を促進するかのようです。米国政府では試験によって医師の数を制限しようとする意図がないように見え、実際の医師の質や数は、それ以外の所でコントロールしているとしか思えません。

一方、日本の試験には、受験資格からいって、医師免許を取得できる人間を、試験によって制限しようという意思が見えます。免許を制限することでその業界の人材流入をコントロールしているように思います。これは面白い違いだと思います。

 ■「USMLE何点だった?」―競争によって維持される試験の質

そして、試験の内容と、評価の仕方にも競争の原理が見られます。米国では卒業後の研修医の選抜がマッチングで行われ、その際にUSMLEの点数が大きな影響を及ぼします。ただ合格するだけではなく、良い点数で合格することが必要となります。これが、原動力となって、毎年ごとに平均点が上がっています。合格最低点も、問題の内容の難易度も年々上がっています。日本の試験のように合否だけが重要で、点数は無視されている状況とは対照的な構造になっています。

さらに、外国人にとって試験の点数は別の意味を持ちます。私が面接に訪れた研修医プログラムでは、面接の最初に、”君、USMLE何点だった?”と聞かれました。これは、どこの馬の骨とも分からない外国人を、ある程度知識のある人材かどうかチェックするためによく使われる質問です。本当ならばそんなことで人を計ってはいけないのですが、世界中からさまざまな人材が集まってくる米国では、この試験が唯一の共通の試験なので、一つの基準として使われています。

さらに言うと、病院側にとっては、米国人よりも”使える”外国人を採用しないと、わざわざ英語の下手な外国人を雇う意味がありません。だから、外国人は米国医学生よりも良い点数を取ることが求められます。これが、結局は米国の医学生にとって外圧となり、試験の難易度を上げていく原因の一つとなっています。試験の品質の維持機能を、競争によって内在させるというのは、一つの立派な手段かもしれません。

 ■世界中から人材を集める米国医師試験の仕組み

このように、USMLEは世界中で受験され、医師の基本的知識のワールドスタンダードとしての地位を確立しつつあります。より多くの人に機会を与え、人材の流入を促進し、競争させることで、業界の質を維持し、向上させるという、米国の典型的なパターンを、医学試験を通して見ることができます。必ずしも競争が医師の資格試験に必要であるとは思いませんが、世界中から良い人材を集めることに成功している米国の構造には驚嘆せざるを得ません。

 日本の医師国家試験で必要とされる知識量が米国のUSMLEでのそれと比べて少ないとは思いません。日本の試験は質が良い印象があります。しかし少し想像してみて下さい。韓国、台湾や中国、シンガポールやマレーシアの医学生がみんな同じ試験を受け、評価が点数の差となって表われる、という医師免許試験を。東京大学の平均点と北京大学の平均点が比べられるような事態を。医学生が今よりももっと勉強するようになると思いませんか?

このままUSMLEの受験者集が増え続けたら、もしかしたら、USMLEが各国の医学生の知識量を比べ、競争を促す機能を果たすかもしれません。試験で測ることの出来る医学知識は、医師の一側面にしか過ぎません。

しかし、知識は力です。薬の作用機序や、病気の診断基準など、より多くを知っていることは、良い医師の条件の一つです。特に卒業前の医学生には、自分の医学知識が、世界中の医学生と比べてどのレベルにあるのかを客観的に測るという体験は貴重なものになると思います。せっかく日本で受けられるのですから、ぜひ受けてみることをお勧めします。

21件のコメント

  1. USMLEは文字通り米国の医師免許試験なのであって、世界のスタンダードとかそういうものではありません。米国が世界中から人を受け入れているというだけです。ただし、米国では全国(国内)ニュースのことをワールドニュースと呼びます。本当のワールドはもっといろいろな試験制度や教育カリキュラムがあるといって間違いないと思います。ヨーロッパみたいにそれぞれの国の制度をお互いに認め合うのもあります。
    また、米国でも研修そのほか若い人たちが育っていくにはそれぞれ個人的な成長過程が非常に重要視されているようで、日本であまりききなれないメンターという指導者に個別指導を受ける形ですので、画一的な試験制度で決定的な力を評価することはありえません。
    一流病院の新任のチェアマンの紹介でも、まず研究費がたくさん取れて、前任地での業務拡大にどれくらい寄与したか、それとメンターシップがどうかが紹介されます。
    米国の医学教育を特徴付けるとすればメンターシップとお金にあると思われます。
    USMLEはあくまでも足きり試験です。

    • コメントありがとうございます! 今回の記事は、ちょっと挑戦的な内容を盛り込んだのでどんな反響があるかと楽しみにしていました。コメントいただけて嬉しいです。
      USMLEはだたのアメリカの医師免許試験です。まったくもってその通りです。 しかし、なんでそれを世界中の都市で受けれるようにしているのか、というのがポイントなのです。そこにどんな意図が込められているのか、というのが記事のテーマでした。 私は、そこに、アメリカが自国のスタンダードを”世界”のスタンダードにしようとする意図があるように思えてならないのです。もちろん実際は、そんなことはないので、標榜にすぎないのですが、どうしてそんなことをするのか、ということを考えてみたかったのです。 
       日本のように医学部の歴史がしっかりあって制度も整った国からすれば、USMLEは他山の石に過ぎません。 しかし、実際に卒業生のほとんどがUSMLEをうけるという医学部も世界には存在するのです。USMLEの受験者数は単なるアメリカの医師免許試験としての数を超えています。 世界でこんなに沢山の人に受験される職業資格試験が他にあるでしょうか? NYの弁護士試験ぐらいしか思いつきませんが、NYの弁護士試験にも似たような性格があります。 NYで弁護士活動をしないのに日本、韓国、中国から、中東、南米からおびただしい数の人が毎年受験し、”NYの弁護士”という、ひとつの”スタンダード(基準)”を手にしようとしています。それが、母国での仕事に影響するからでしょう。インドや、中国、南米の医学部生が競ってUSMLEをうけるのにも似た構造があるように思います。 さらには、資格試験である以上、試験内容はその業界のスタンダードを規定するものになります。免許試験を施行するということはスタンダードを設定することにもなるので、世界中に受験者を募るという事の効果を想像できないでしょうか? こういった事が、単なる資格試験以上の意味をUSMLEに持たせていると思うのです。
       それから、ここはちゃんと書きたかったのですが、アメリカ人医学生にとってUSMLEは大した意味がありません。点数なんかほとんど誰も気にしません。おっしゃるとおり、画一的な試験が個人の能力を測るなんて誰も信じていませんから、パスするだけで十分です。意味を持つのは、外国人医学生にとってです。アメリカ人の医師が、外国人医師を雇う場合に、その出身国の医学部の程度がわからないので、医学部の成績ではその人の知識レベルを測れなくて困ってしまいます。それで、アメリカ人も受けるUSMLEを受けさせて、点数化して、足切りに使っているわけです。アメリカ国内のアメリカ人から見たらUSMLEはその程度の意味しかありません。
       最後になりますが、医学教育について。アメリカで研修を受けてきましたが、メンター制度が機能しているようには思えませんでした。市中病院と大学病院の2つのプログラムを経験しましたが、どちらもメンター制度は形骸化していて、何の恩恵もありませんでした。そもそも、メンターとは個人的な人間関係で、制度化するものではないと思うのですが、それはまた別の話。メンターシップがアメリカの医学教育の特徴であるとはちょっと同意しにくいです。個人の経験に基づいているので、一般化してはいけないので、今後このウェブサイトで企画をして他の研修医の人達に聞いてみたいと思います。ついでに、研修医の給料は政府から出ていて、Medicaid Medicareの患者をみることでお金が出ています。チェアマン達が、研修医や医学生の教育にお金を引っ張ってくることはあまり考えられないと思うのですが、、、。その必要はないはずです。
       とてもいいコメントでしたので長くなってしまいました。ありがとうございました。

    • 最後の部分について。 ”お金がアメリカ医学教育の特徴” というイソベさんの指摘には100%同意します。でもそれが、Chairmanが取ってくる研究費と絡んでいるとは思いません。もっと別の仕組みで、お金が投入されていると思います。それは、人件費だったり、昇給審査のときの項目だったりするわけですが、まだまた討論の余地があると思います。
      とても的確な指摘だったので、いろいろと考える機会になりました。また、このサイトでも討論をする機械を設けたいと思います。

  2. 初めまして
    私は今大学で海外医師の災害時の受け入れについて話し合ってます。

    ディベート形式で話し合いを行うのですが、
    私たちは外国人医師の災害時の日本での受け入れはやめたほうがいいという意見として
    話し合いを行うつもりです。
    本当はいいとは思うのですが。。。諸事情でこっちの意見になってしまいました。

    ということで
    私たちは一方的にだめだということはせず

    今の日本ではなぜ外国人医師が働けないのか

    というところをまず見て行こうと思ってるんです。
    今まで日本ではどんな状況でも外国人医師の受け入れは拒否してきたはずなのに
    東日本大震災の時には受け入れました

    しかし、
    最低限の医療行為のみと厚生労働省では言っています

    必要最低限というのはどこからどこまでだとおもいますか?
    それに

    なぜ日本では外国人医師が採用されないんだと思いますか?

    そちら様の意見を聞かせていただきたいとおもい

    場違いかもしれませんがコメントさせていただきました。

    メールに返信で待っています。

    • コメントありがとうございます。 返信をメールアドレスのほうに送りましたが、バウンスしてきます。
      おって、こちらのコメント欄に返信しようと思います。 もしくは、別のアドレスにて再コメントいただければ、そちらに送ります。

      • >震災時に今の日本ではなぜ外国人医師が働けないのか

        とても大事な質問です。私もいろいろ考えてきました。

        まず、震災のときに実際に南三陸において支援ボランティアをした経験から言います。
        イスラエル軍医療班がわれわれの避難所の横に来ていたので、何度か見学しましたし、患者さんの付き添いもしました。

        僕がついたのは震災から14日ぐらいたったときでした。イスラエル軍はほとんど機能していませんでした。せっかくの設備もたくさんの医師たちも、患者が少なく、仕事がない状況でした。

        ポイントはタイミングです。
        いろいろな原因がありますが、
        0.イスラエル医療班がついたときはもう急性期を過ぎていた。
        1.まず言葉が通じない。
        2.厚生省/外務省がイスラエル医師の単独診療を禁止して、日本人医師の付き添いを義務付けた
        3.当時の現場の医療ニーズと彼らの機能がマッチしない
        4.日本の自衛隊をはじめとする医療チームがフルで活動しているため、医師不足という状況ではない。

        といったところがあげられます。
        1.日本の田舎で日本語ですらなかなかわかりにくいところに、英語しか話せない医療従事者がいっても機能しません。通訳がいますが、すぐ隣に日本人の医療チームがある中で患者もわざわざそちらに行く必要はありませんね。

        2.については、厚生省の判断が正しいと思います。外務省が政治的な判断から受け入れをしたんだとは思いますが、日本国民の健康に責任を持つのは厚生省です。かれらは、日本人患者の治療を外国人がすることを認めませんでした。どんな薬を使うか、もし副作用があった場合にどう対処するか、過失があった場合は?といったことに、外国人医師は日本の法律の範囲外ですから、治外法権にするわけには行きません。

        3.2週間が過ぎたときは慢性期への移行が始まっていました。糖尿病や、高血圧の管理、アレルギーや風邪などの対処がメインのニーズでした。イスラエル軍のトラウマユニットなどは必要ありませんでした。

        さて、以上からわかるように、日本のように先端医療が発達して医師も薬もたくさん存在する国では、外国の支援に頼らなければ人が死んでいくような状況はなかなか想定できません。唯一ありうるのは、災害発生後72時間の間だけですが、それも怪しいです。日本の医師団、自衛隊がいけないところにどうして外国の医師団が行けるでしょうか?さらに、通訳をつけて現場に急行できるでしょうか?

        >必要最低限というのはどこからどこまでだとおもいますか?

        事故発生後72時間で現地入りできて、自己完結型で食料、水、自衛手段すべてをそろえている場合で、人命救助ができるならそれは大変助かります。外傷外科や、コンパートメントシンドロームに対応する能力が必要です。それには、ヘリを持って自分で燃料を持っているユニットである必要があります。日本の後方病院とスムーズな連携が取れる必要があります。瓦礫の下で死にかけている人を救えるのなら、それはすごい助けになります。この点から、72時間もしくは多めに見ても1週間以降は、医療支援は必要ありません。むしろ、土木工事、水の運搬などが必要です。

        >なぜ日本では外国人医師が採用されないんだと思いますか?
        災害時に限って話をします。日本人の医師団で十分対応できるからです。ハイチや中国などの災害と違って日本は先進国です。物も、人も十分あります。自衛隊医療班だってあります。自分の国の災害に対応できないようなことはありません。外国人医師を入れることで増える法規的処理や外務省の対応負荷を考えると、外国人医師による日本人へのベネフィットはほとんどありません。日本人の医師が足りないといっても、それが外国人医師で代用できるような状況は、ほとんどありません。最初の72時間ぐらいです。1週間ぐらいしてからは、足りないのは日本人医師で、医師そのものではないのです。

        >なぜ日本で外国人医師が働けないのか

        という問いと、災害時の受け入れとは問題が違います。一般論として、どうして東京に外国人医師が居ないのか、ということに関してはまったく異なる議論なのでそれはここでは申し上げません。

        以上です。わからないことがあったらまた連絡ください。 それから、せっかくの議論なので経過を教えてください。楽しみにしています。

  3. はじめまして。現在、都内の中堅私立医学部に通う新2年生になるものです。まだ具体的なものとはなってはいないのですが将来的にUSMLEを受験し、研修医ないしは研修終了してからなど海外で医師をしていきたいという目標があります。
    スポーツがとても好きでバレーボール部と野球部のマネージャーをやっているのですがその合間をぬって、その目標を叶えるために何か今から少しでもプラスになることがあればしたいと思っているのですが、先生の立場から見られて、例えばTOEICを受ける、英会話に通う、長期休みに短期留学する、医学英語を鍛えるなど学生のうちにこれはやっておいた方がいいというものがありましたら教えていただければ嬉しいです。

    • コメントありがとうございます。
      医学部の早い時期から将来を考えて行動を起こすのはとても大切です。頑張ってください。まず大前提があります。USMLE step1を4年生が終わるまでに取ること。5年生のポリクリが始まる前にStep1をアメリカの医学生の平均点より高い点数で、1回でパスすること。これは、今までたくさんの似たような相談を受けてきた経験から言えるかなり確実なアドバイスです。4年生の終わりが無理なら5年生の終わりまでに。ただ目標は4年生の終わりまでにしておいてください。それができた人と、できなかった人では、その後のMatchingにまで行ける確率にはっきりと差がでます。すぐにでもUSMLE Step1 First Aid を買って、大学の授業で出てきたところを片っ端から暗記していってください。心理学や倫理学、統計のところは現段階でも理解できるでしょう。

      TOEICではなくてTOEFLを受けてください。ただし、まだ急がなくてもいいです。2年で執行するのでMatchingの2年前に受ければいいです。

       以下は僕の個人的な経験に基づくn=1の症例報告なので、自分の場合に適応するかどうかは十分吟味してください。

      お金に余裕があれば英会話に通うのもいいですが、English Native speakerと友人になって会話をたくさんすれば無料ですよ。都内に住んでいるならそういう人と知り合いになる機会は探せばいくらでもあるはずです。サークルやバイトなど探してみては?英語のドラマや映画を音声だけでもダウンロードしてひたすらBGMとして流し続けるとか、耳をひたすら英語にならすのも、最近ではけっこう簡単にできるはずです。
      短期留学もいいと思います。ホームステイをするプログラムはより良いと思います。私はそれよりも、ひたすら世界のあちこちを旅行しました。バックパックを担いで夏休みはいつも旅行に行きました。どこにいってもある程度はなんとかコミュニケーションを取れるようになるいい訓練でしたし、知らないところへ行って、そこが安全か安全じゃないかという判断をする嗅覚も鍛えられた気がします。自分の生まれ育ったところではない異国で、生活するにはそういった経験が役に立ちました。どこにいっても必要な情報を自分で集めて、判断して、目標を達成する、というのは大切なことです。
      あと、大学にいるのなら、文系の授業を取りましょう。私は法学部の授業に行って、論理学の授業を聞きかじりました。今思えばもっと行っておけばよかったです。最近では東大やHarvardの授業ですらオンラインで見れるので、そういった授業を片っ端から聴くのも今の内にできるとても贅沢な時間の使い方です。英語の勉強より日本語で教養を深めることが今の時期は大切です。英語は所詮、物事を伝えるツール。伝いたい事象がなければ、空虚な会話が続くだけです。人と議論をするには論理学が役に立ちます。人として何が正しいか考えるには倫理学が役に立ちます。プラトンの哲学やカントの哲学の話を英語で言われた時に、とっさに自分の思うことを口にできるには、一度はちゃんと自分で考えておく必要があります。世界史をひと通り学ぶと、世界が広がります。会話の途中にローマ時代のカエサルの言葉を引用された時に、とっさに何を言っているか理解して、アレンジして返すことができれば、その人と友人になることができます。ヨーロッパ出身の人と一緒に仕事をした時に、その国の風物や食べ物、歴史について語り合うことができればすぐ仲良くなれます。インドや中国の歴史にも理解があれば、友人は無限に増えていくでしょう。
      何より大切なのは、こういったことを楽しいと思えるかどうかです。スポーツが好きならば、スポーツで自分の中の引き出しを増やしていけるかどうか、が鍵になります。まだ2年生ですが、もう2年生です。3日前の自分が今日の自分とあまり変わってないのなら、何かがおかしいと思って考えてください。時間の使い方に工夫がいると思います。頑張ってください。

  4. 非常に的確なアドバイスありがとうございました!
    自分の目標までの道がより、はっきり見えたように思えます。
    そうですね、もう二年生という気持ちで一日一日、レベルアップするためにすぐに行動に移して行こうと思います。モチベーションが上がる刺激的なお話、聞けてよかったです。がんばります!

  5. 初めまして、関東の医学部の現在四年生の者です。
    残りの学生生活を本気でusmleにかけてみようかと考えております。

    今すぐに始めるべきこと、具体的にいつまでにこのレベルまで持ってくる必要があるのかなど教えていただけるとありがたいです。
    先生は四年生までにstep1をとるのが理想とおっしゃっているのですが、現時点で自分はすでに出遅れているのでしょうか?
    教えていただけるとありがたいです。

    • 4年生の後半から始めるのでもまだ間に合います。やや出遅れているかもしれませんが、英語の能力が高ければまだまだ出足の早いほうかもしれません。英語の能力が普通なら、まだ間に合う、といった感じです。ただ、本気でかけてみる、というのなら、という条件付きです。 まず部活、バイトなどは極力制限することがまず一歩。できれば部活などはやめたほうがいいでしょう。そこで自分に言い訳のできない状況を作ることが大事です。 すぐに始めることはFirst Aidを買って、本一冊を丸暗記すること。 それから、Question Bankのようなオンライン模試を一度試しに受けてみること。 それから、最近のUSMLEの平均点の状況がわかりませんが、オンラインの米国の医学生も受けるような模試を(Kaplanなど)をうけて平均点を撮ることが最初の目標で勉強始めて6ヶ月でここまで達成すること。そこから3-6ヶ月の追い込みで偏差値で言うと60ぐらいは確保してから受験するといいでしょう。

  6. はじめまして。都内の中堅都立高校(偏差値60〜65)に通う、新高3になる者です。少々長くなります。私には、将来米国にて医師として働きたいという夢があります。しかしそのように思い始めたのは最近のことで、そもそも英語力が高校生の標準(英検準二級)程度です。英語は好きですが学校の成績は下から数えた方が断然早いです。一応数3を学校で勉強し国公立理系(医療系)と担任と両親には伝えていますが、私が医師を志していること、米国で働くことを望んでいることは言っていません。経済的な理由で予備校へ多大な投資をする訳にもいかず、正直自宅浪人というのを覚悟しています。

    ここでやっと本題に入ります。将来米国で医師として働くには、
    1、日本の医学部へ入りUSMLEの試験を受ける
    2、海外医学部へ入りUSMLEの試験を受ける
    のどちらの方が有益でしょうか。

    少し的外れな質問だということは重々承知しています。それでも、相談できる方がおらずどうすればいいのか途方に暮れています。お答え頂けたら嬉しいです。
    ちなみに、私は日本国籍ではなく韓国籍の永住者です。

    • 高校生の時から、先のことを考えながら戦略を練るのは大変素晴らしいと思います。まずは、質問に答えます。

      1vs2 という質問に対しては、ズバリ2と答えます。将来米国で医師としてやっていくのならば、米国の医学部へ入るのが一番真っ当で、一番効果的で、一番意味があります。”海外医学部”というのが何を意味するか不明でしたが、アメリカの医学部だと解釈します。あなたが、米国で生きていくつもりならば、人生のできるだけ早い段階で渡米し、教育、学歴、キャリアを米国ベースで築いていくべきです。日本で得られる教育や経験は、ほとんど米国では評価されることはないでしょう。ですから米国で一生生きていく医師を目指すなら、一刻も早く日本を出るべきです。

      米国の医学部へ入った日本の高校出身の人を数人知っています。不可能なことでは全くありません。ただ、日本の高校を卒業後、アメリカの普通の4年の大学へ入学し、さらにそこから受験をして医学部へ入ります。いきなり医学部へは、一部のまれな例外を除いて、入学はできません。

      経済的なことを書いていらっしゃるので、一言だけ。米国の4年大学は、普通に払ったら4年で最低二千万円はかかります。いい大学ほど高くなり、4年で四千万もザラにある話です。さらに、その後医学部へ入学てきたとして、卒業までにさらに3-4000万円はかかります。いい大学ほど高いです。ですから、4年+4年で8年間の大学生活で5000万〜7000万円弱ほどの借金を抱えることになります。でも、それはアメリカのどの学生もやっていることで、無利子のローンが借りられます。卒業して医師になってから返せばいいわけで、ほとんどの医師がこちらではそういう人生を送っています。奨学金がもらえるほど優秀であれば話は楽なのですが、全米でも上位5%に入れるぐらい優秀であれば、返済不要の奨学金がありますが、まああてにはできないでしょう。借金を抱えることに抵抗があって無理だと思うなら、日本の医学部が一番コスパがいいです。そこからUSMLEを受けて、米国での研修医を目指せばいいわけですが、米国が医師過剰になる10年後などは、海外からの医師の受け入れは、今よりも相当難しくなると予想されます。あまりあてにしないほうがいいでしょう。

      海外医学部が、米国以外のその他の国の医学部だとした場合、それはなかなか難しい話だと思います。学費が日本の医学部より安いならいいですが、そうでない場合、そこを目指す理由が見当たりません。

      というわけで、高校生なら、まだまだ時間があるので、今から、米国の名門私立大学を受験することを目指して、自分の人生をかけて必死に勉強してください。SATなどの米国統一試験を受験して、高得点を取る必要があります。その後、日本から直接受験願書を送ることができますが、面接のために渡米し、各大学を訪問する必要があるでしょう。日本の様々な支援団体から奨学金をもらえるように、あちこちの公募に応募してまずは大学への留学費用を支援してもらうように努力してください。無理でも、学費ローンを借りればなんとかなります。

      入学が認められれば、4年間生物学や化学などの”Pre-med”とよばれる学部コースをとり、学士をよい成績で取得してください。そうすれば、やっと医学部への入学の道が見えます。

      せっかくメールをいただいたので、本当のことを率直に書きました。ショックかもしれませんが、これが現実です。米国でも何万人もの高校生が、医学部に入るために血なまこになって受験しています。外国から、その競争に参入するには、その人たちの数倍の努力が必要でしょう。一刻一秒を惜しんで勉学に励んでください。

  7. 返事を頂いてから、現実的な面でこれからしたいことを明らかにすることができました。海外医科大学と表記したのは、日本よりも英語圏又は英語と言語的に近い国の方が良いのではないかという憶測からです。しかし、メリット・デメリットを考えるとできるだけ早い段階で米国ベースの生活をすべきだということがわかりました。まずは米国の大学合格目指して頑張ります。

    実は、一刻一秒を惜しんで勉学にはげんでくださいと言ってくださった後にも関わらず、気になった事があり、自分で色々と調べてみました。その時疑問に思ったことがあったので、再度質問させてください。

    Pre-medとよばれる学部コースをとるには私立大学でないとだめなのでしょうか。

    • Pre-medという学部は、一部の例外を除いて存在しません。Pre-medというのは、Biology、Biochemistry, Physiology, Neuroscience, などのMajorの学部を取っている学生のうち、卒業後医学部に行くことを念頭に置いて、医学部に入学願書を出すための必要な単位を揃えるように、単位を取っている学生のことをいいます。ですから、Pre-medという学部を受験するわけではありません。Biology, biochemistryなどの学部に入学希望の願書を出すことになります。または、Science Majorという形で入学願書を出す大学もあります。要は理系ということになります。
      アメリカでは日本と私立大学と公立大学の位置付けが、大きく異なり、一概に私立大学といってその性質を語ることは難しいです。ただ、一般的に公立大学の方が学費が安いですが、両親がアメリカに住んで納税していない場合、公立大学の特別安い学費が適応されないので、公立大学だから安いとは言えません。
      有名私立大学をめざせ、といったのは、それぐらいの大学に入れる実力がないと、外国人が第2外国語の英語を使って卒業後に医学部に行ける可能性はかなり低くなってしまうからです。ただ、4年間の学部学生生活で英語能力を一気に上昇することができれば、十分可能性は出てくるでしょう。

  8. 「Pre-med」というのが医学部(院?)入学願書を出すための単位を取っている学生のことを指すとは知りませんでした。ご指摘ありがとうございます。

    私立・公立大学に関してですが、やはり日本とは大分制度の違いがあるのですね。おかげで色々と勘違いしていたことがたくさんあることに気付くことができました。もっと詳しく調べようと思います。

    とても勉強になりました。貴重なご意見ありがとうございます。

  9. はじめまして。関東で私立大学医学部に通う学生です。新3年生です。

    私もUSMLEの勉強を考えていて、これから先のことも踏まえつつご相談があります。

    まず最初に、私は基本的には日本で医師としてやっていきたいと考えています。
    しかし、自分が勉強したり仕事をする上で海外(ほぼアメリカ限定ですが)での経験が様々な形でプラスになるなら、より積極的に動き準備をしたい、と考えています。

    一時的(どれくらいの期間かは想像できませんが)にアメリカで勉強し、それを生かして日本で頑張りたいという考えは効率悪いのでしょうか?日本にいるつもりならば日本でもっと別のことに時間を費やすべきなのでしょうか?

    一言で「アメリカに行く」といっても様々な時期、いくつかの手段があると思うので(自分も把握し切れていませんが)、コメントしづらいかと思いますが、よろしくお願いします。

    また、メールでのやりとりは可能なのでしょうか?
    社会人を経て受験したので、個人的な細かい事情も今後ご相談させていただきたいと思っています。

    • コメントありがとうございます。基本的にはオープンな形で質問に答えていきたいと思っています。今後、似たような質問をしたいと思う人が読めるようにしておきたいです。

      どうやら価値観についての質問になりますね。
      まず、海外で仕事をするということは様々な形で、必ず、プラスになります。それは医者でなくても、どの職業でも言えます。
      あと、21世紀に医師として働くならば、英語でのコミュニケーション、論文の読み込み、などの面で、英語は 必須です。自動翻訳の性能も上がるでしょうが、もう少し時間がかかるでしょうね。英語をしっかり身につけるには、アメリカで働くことがプラスになります。

      ただ、いい医者になる、というのが目標でしたら、アメリカで働く必要はありません。日本でも十分、いい医師になる訓練を受けられます。

      もし、移植外科になりたいなら、アメリカで修行したほうが手っ取り早いかもしれません。

      もし、Physician-scientistになりたいなら、アメリカでその道を目指すことが必要かと思います。ただ、日本に戻ったら意味がなくなりますが。

      というわけで、日本で、いい医者になりたいというのが目標でしたら、アメリカに行く必要ははっきり言ってありません。

      人生の冒険として、海外で自分の力量が通用するかどうか、全く違う環境で自分がどこまで適応できるかを試す、困難な状況に自分を置いてみて自分の器を広げる、という目標でしたら、アメリカは面白い場所だと思います。つまり、海外に移住することそのものが目標にできるかどうか、それが先決です。

      • 分かりやすいご回答をありがとうございました。

        自分の中で何となく、漠然としていたものがすっきりとしてきました。

        様々な先生方の経歴を拝見したり臨床留学について調べていて疑問に思ったことがありまして、追加の質問をさせてください。

        主に臨床を目的として渡米される日本人医師は少ないですか?受け入れ先の制限や、競争率の高さなど、ハードルはかなり高い印象を受けました。

        さらに渡米した後も先生方の様に勉強を進めていける方というのはほんの一部、という印象を受けたのですが。

        もしそのような状況ならばUSMLEはじめ様々な勉強や努力はしないと言う意味ではなく、それらの勉強は私の人生にとって大切ということはよく分かるのですが、それとは別に、目標とする世界の現実的な情報を知りたいと思いました。

        重複した内容が他に記載されていましたらそちらを拝見したいと思います。

        よろしくお願いします。

        • 近年、日本の研修医制度が始まってから、臨床のために渡米する人は減っている印象があります。あと、米国で医学部が増えたことで研修医の定員割れがなくなってきて、外国人の入る枠が減ってきました。ですから、どんどん難しくなります。さらに言うと、5ー10年後には日本の医学部を卒業してもUSMLEを受ける資格がなくなるかもしれないと言われています。状況はどんどん難しくなるでしょう。

          ただ、自分が成長したいと思って物事にあたる場合、それが困難であればあるほど、(成否にかかわらず)やる意味があるはずですよね?成長を望んで挑戦するのであれば、その困難度合いを前もっていろいろと測ることに何の意味もありません。それよりも、自分と同じような境遇からスタートした過去の人間たちが、1人であれその目標を達成したという事実のみに注目すべきです。なぜならば、それは人間にとって到達可能な目標であり、可能な事象であり、時間と努力でなんとかなったことだからです。本当の困難は、過去に誰もやったことのないことを達成しようとした時にのみ、慎重に評価すべきなのです。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。


バックナンバー