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三枝孝充

ブログについて

「日米腎臓内科ネット活動ブログ」で腎臓に関する話題を中心に書いています。「日米腎臓内科ネット」は、腎臓内科における臨床教育、研究、移植の発展に興味を持つ日米の医療関係者が、メーリングリストやブログ、セミナーなどを通じて情報交換をしていくことを目的とした団体です。

三枝孝充

米国NY生まれ。10歳で日本へ戻り帰国学級でリハビリ後、何とか大学を卒業。防衛医科大学校病院などで研修をし、2006年にN programのサポートを得てNYの Long Island College Hospitalで内科研修、2009年からMedical U of South Carolinaで腎臓内科研修中。日米腎臓内科ネットメンバー。

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わたしは腎臓内科フェローシップ中「polycystic kidney disease (PKD)におけるciliaと高血圧の関係」というテーマで基礎研究を2年間行いました。今後もこのテーマで研究を続けていく予定なので、現在進行中の臨床試験「HALT」というスタディーの結果は気になるところです。PKDでは腎臓でのレニンアンジオテンシン系が亢進していると考えられ、それが腎嚢胞の形成促進や腎機能低下に関与していることが動物実験では指摘されています。HALTは多施設、無作為化二重盲検試験で、レニンアンジオテンシン系阻害薬(ACEIとARBとACEI単独)を正常腎機能(GFR>60ml/min)のPKD患者に投与し、通常血圧と低血圧に保ったグループとに分け、腎機能や腎臓の大きさを観察していくスタディーです。またGFR25-60ml/minとすでに低下したグループへの投与も観察します。このスタディーに関してこんな中間報告論文が腎臓病関連の分野では良いとされる雑誌に載りました。

ところが内容を見て残念に思いました。要旨に書いてあることと、内容が一致していないからです。要旨には「我々の分析の結果、腎臓の大きさと機能パラメーターに「強い」関連性がある」と書かれていますが、中身を見るときわめて弱い関連しかありません。またMethodの項でしっかりと“Because of the exploratory nature of the analysis, adjustments were not performed”と書いているにもかかわらず、上記結論を導いています。ほとんどの人は「題名」とせいぜい「要旨」しか読みませんのでこれは誤解を招く可能性があります。論文を読む際、良いジャーナルからの記事はしっかりと吟味された上で出版されていると思いがちですが、やはりしっかりと内容を確認するべきだと感じます。またそういったスキルを身につけることが大事であることは言うまでもありません。
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もうひとつ指摘したいのが、臨床試験ではこういった中間分析を論文として発表する必要があるのかということです。この結果をどう臨床に生かせるのでしょうか?これを見て、誰がどういった恩恵を受けるのでしょうか?そもそも臨床試験はデザインされた時点で施行方法に関しては変更できないわけですし、オンラインで試験の内容を確認できる時代にデザインに関する論文をあえて掲載する必要はあるのでしょうか?個人的な意見ですが、こういったアクセサリー的な論文を出す理由の多くはグラント更新のための材料、ファカルティーポジションの確保や昇任目的の論文数稼ぎと推察します。たしかに昨今の不景気からリサーチマネーの確保が難しい状況を考慮すると、理解できないわけでもありません。ただいったい「誰のための論文なのか?」と思ってしまいます。わたしは決してこの論文を書いた人たちをターゲットとしているわけではなく、一般論としてこの疑問を投げかけます。それにしてもこのラスト筆者は大変有名な方で670以上も論文があります。これに1つ加えて得るものと、もしかしたら失ってしまう要素を比較するといろいろと考えさせられます。数ではなく、たった一つでもいいので「医学的に真に貢献できる」研究報告を目指したいものです。

T.S

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