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日暮沙織

ブログについて

『医療、家庭、療育、教育の場』が一つとなって、地域全体で子供たちを育てていく。このブログがその一つ一つをつなぐ、小さなきっかけとなってくれたらいいなぁと思っています。

日暮沙織

東京、下町育ち/マイアミ在住。 ノースキャロライナ州の大学にて音楽療法を専攻。『日本に帰ろう』と思いつつ、マイアミ在住、早、6年。スペイン語率が圧倒的に高いこの町で、片言のスペイン語を駆使しつつ、NICUから7歳までの発達にサポートが必要な子供たちへの音楽療法を実践中。

自閉症に関わる団体の中で”Autism Speaks” (www.autismspeaks.org/)という比較的大きな団体があります 。このAutism Speaksが2011年に発表された数々の学術論文の中からトップ10を厳選して掲載しているのを見つけたので、日本語訳をつけてみました。直訳チックな日本語をお許しくださいm(_ _)m。

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ーEarlier Autism Screening Shows Promiseー

自閉症傾向をこどもが小さいなうちにを見極めることは、行動療法を伴った療育をより早い段階からはじめられる事につながり、その後の成長、発達に大きなプラスの影響を与えるため重要であるといえます。

米国小児科学会(American Academy of Pediatrics )が発行している小児科医のためのガイドラインによると、18ヶ月から24ヶ月の幼児に対して検診の際に自閉症に対するスクリーニングを行うことを促しています。これには、現存のスクリーニングテストで自閉症傾向を判断できる最小年齢という理由が背景にあり、18ヶ月以下の乳幼児の場合、確立されたスクリーニングテストはないというのが近年までの常識でした。 ところが今年になり、1歳児検診の際に簡単なアンケートを取り入れることが、自閉症、または自閉症傾向の高いこどもたちをより早く見極める事に有効であるという研究結果が発表されました。

137人の小児科医が参加して行われたこの研究は、1歳児検診を受ける乳幼児の保護者を対象に24の質問からなるアンケート用紙を配布し、その記入結果をもとに問診を行うというもでした。今回の研究で使われたアンケートは、Communication and Symbolic Behavior Scales Developmental Profile Infant-Toddler Checklistといわれる簡単なもので(所要時間は5分ほど)、質問の中には『お子さんはあなたと目が合っているときに、声を上げて笑ったり、微笑んだりとしますか?』や『いくつのブロック、またはリングを積みあげられますか?』などというものが含まれていました。保護者が事前に記入したアンケートを、小児科医があらかじめ決められた基準値に添って問診するという形式がとられました(所要時間は2分ほど)。

その結果、研究期間中にスクリーニングを受けた10500人ほどの乳幼児のうち、346人が、自閉症の可能性があるとして自閉症を専門としたクリニックでの問診を勧められました。また、346人中、約半分のこどもたちがその後3年間の傾向調査に参加し、32人が自閉症、56人が言語障害、9人が発達障害、36人がその他の障害との診断されたことがわかりました。この数字は、約75パーセントという正確さで、自閉症を含む発達障害を早期発見する事ができた結果となります。

今回の研究結果は、実験で使われたアンケート、または、似たようなスクリーニングテストは、自閉症や、早期療法が効果的なその他の発達障害をより早く発見する事に役立つ可能性を持っているという事を示唆しています。

また、カリフォルニア大学医学部のKaren Pierce, Ph.Dを中心に行われた今回の研究がもう一つ成果としてあげているのは、乳幼児に対する自閉症へのスクリーニングテストが臨床の現場に、より取り入れられるようになったという点です。この研究結果が論文として発表された時点で行った事後調査によると、研究に参加した137人の小児科医が、調査後も継続してアンケート形式のチェックリストを使い自閉症への早期発見へと取り組んでいると解答しました。ちなみに、事前調査では、一歳児検診で自閉症へ対するスクリーニングをおこなっていた小児科医はわずか30人(全体の22パーセント)しかいませんでした。

原文はこちら→ www.autismspeaks.org/science/science-news/top-ten-lists/2011/earlier-autism-screening-shows-promis

2件のコメント

  1. 面白い結果ですね。一つの研究結果が小児科医の日常のプラクティスを変えた、という意味でも意義の大きな論文に思えます。普段は読むことのない分野なので、大いに勉強になりました。

    • コメントありがとうございます :)『自閉症』、『発達障害』というDiagnosisを早い段階でつける事に対しては賛否両論がありますし、私自身もどちらがよいのかはよくわかりません。ただ、Diagnosisをつけるつけないは別として、サポートが必要なこどもたちへの療法を、よりいっそう早い段階から提供することにつながってくれればなぁ思います。

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