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奥沢奈那

ブログについて

精神科というと、何となく暗くて怖いイメージがあったり、心の内を分析されてしまうのでは?などと誤解されがちですが、アメリカの精神科医療を少しでも身近に感じていただけるよう、日々感じたことを綴ってゆけたらと思います。

奥沢奈那

東京出身。雙葉高校在学中に国際ロータリー青少年交換留学生としてベルギーに留学後、渡米。ニューヨーク州サラローレンスカレッジ卒業。セントジョージ医科大学を卒業後NYマイモニデスメディカルセンターで一般精神科の臨床研修を修了。メリーランド大学で児童精神科専門研修後、同大学精神科助教。米国精神科専門医。

この2か月間はNeuropsychiatry 病棟で過ごしました。Neuropsychiatry Unitとは、自閉症圏、Mental Retardation (知的障害)の子供たちの病棟です。私が現在勤務する大学の関連病院であるこの精神病院は、郊外の森の中の広い敷地にある煉瓦造りのとっても素敵な建物で、一見アイビーリーグの大学のキャンパスのように見えます。精神病院というと、暗くて怖い印象があるかもしれませんが、私はフェローシップの面接で初めてこの病院を訪れて、その素晴らしい環境に感動しどうしてもここで働いてみたいと思いました。病院内はすべて精神病棟なのですが、診断と年齢ごとに病棟も分かれていて、本当にたくさんの病棟があります。こどもの病棟だけでも、学童期のこども病棟、思春期の男子病棟、女子病棟、摂食障害病棟、そしてNeuropsychiatry病棟、と細かく分けられています。病院内に患者さん用のジムやバスケットボールコート、テラスなど施設もすばらしく揃っています。病棟内にも屋内バスケコートがあり、sensory roomといって子供たちが落ち着けるような特殊なライトの部屋があったり、Occipational Therapy (作業療法)用の部屋もたくさんあります。

Neuropsychiatry病棟の一日目は、病棟内の独特な動きと音にびっくりしましたがすぐに慣れました。とにかく病棟内も広々としていて、小児科病棟と違い子供たちが元気なので走り回っています。ときどき、突進してきて私を蹴る真似をして、笑いながら逃げていったりします。よそ者の私にあいさつの儀式なのか、かわいいです。しかし、常に背中にも目があるつもりで気を配っていないといけません。私はありませんでしたが、スタッフが怪我をすることは珍しくなく、この2か月の間にも鼻を噛まれてER行きになった女性看護士さんがいました。医者よりもずーっと第一線で患者さんと触れ合っているのがメンタルヘルスワーカーと呼ばれるスタッフと看護士さんたちです。この病棟で働くスタッフの優秀さには本当に感動しました。スタッフは皆、子供たちの安全を常に第一に考え愛情を持って接しています。いつも笑いが絶えず楽しそうです。そういう光景を見ていると心が洗われて、私ももっと頑張ろう!と思うのでした。

自閉症を治療する薬、というのは開発されていません。ですから、私たちの仕事は、自閉症児ができるだけ快適に家族と、そして社会の一員として暮らせるようにお手伝いをすることです。自閉症圏やMRの子供たちが入院してくる理由のほとんどがaggressive behavior、攻撃的な行動や自傷行為です。頭を打ち付けてしまうためヘルメットをかぶり、肌をかきむしってしまうため腕に長い手袋を着用しなければならない子供もいます。そういった行動を直接治療する薬、というのも無いので、向精神薬や気分安定剤などを組み合わせて使っていますが、Johns Hopkins Hospitalから毎週回診にいらしてくださる有名なNeuropsychiatristの先生も、自閉症圏の治療薬にエビデンスはほとんど無い、Trial and Errorしかない、とおっしゃっています。

途方もない戦いのような気がして切なくなる時もありますが、精神科治療のゴールは完治というよりは、患者さんとご家族のQuality of Lifeを改善することですので、患者さんとご家族が何を望んでらっしゃるかを常に見失わないようにしなければと思っています。

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