むかしむかしその昔、羽田の管制官だった頃、先輩方によく訓練次第でいくつもの方向から流れてくるそれぞれの管制通信や管制官同士のコーディネートの会話がしっかり聞き分けられるようになると言われたものです。そう言われてみればこの私も11年間の管制業務を通じて確かにそういう技術は身につきました。管制官は管制卓に差し込まれたマイクを耳につけ、マイクに束縛されていてそこから走り回ることをしませんからそう、管制官てじっくり坐って何百人の声を聞き分けられたという聖徳太子に似ているかも。
さて、今やマイクに束縛されることはなくなりましたが、今の私はこんな感じ。
夕方6時からの勤務。
到着するなり、5人分のカルテを渡される。なになに?カルテは開けてびっくり、玉手箱。
主訴は、一つめ、胸痛、二つ目、腹痛、三つ目、吐血、四つ目、呼吸困難。。。五つ目のカルテを開けようとしたとたん、二つの心電図が目の前に突き出されました。
「先生、二人とも胸痛で今救急車で到着したばかり、サインお願いしま~す!」
一つ目は正常、二つ目は、おっとこれ、STEMIやあ!
「コ、コードハート!!」と叫ぶ私。
コードハートは心筋梗塞の患者さんで心電図のSTと呼ばれている部分が上昇している場合に召集するコードブルーの心臓版です。あっという間に循環器専門医に電話連絡が行き、循環器ICUからナースがすっ飛んできます。コードハートと叫んだあと私は携帯で心電図の写真を撮り当直の循環器医に送ります。送りながら足は心筋梗塞の患者さんのお部屋へ。
「アスピリン!ヘパリンお願い!!」
カテ室に患者さんを送り込んだあと、まだ見切れていなかった患者さんを次々と診て行きます。診ながら指はキーボードをたたいてる。聖徳太子の耳は患者さん、家族、そして看護師のお話を聞き分ける。会話の途中でオーバーヘッドで呼び出しを食らうこともしょっちゅうです。放射線科医から異常なCT検査の結果報告の電話が入ることも、薬剤師から薬のオーダーの確認の電話が入ることも。そして部屋から部屋への移動はまさにダッシュ!100m徒競走は今や30秒くらいかかりそうやけど。それでも足は10本くらいほしいところ。ER内ならともかく、夜はICUから気管挿管をお願いされることもあり、忙しいERを後ろ髪をひかれるようにあとにしてICUへつながるエレベーターの中でも走っています。
聖徳太子にたこの足をくっつけたら、ほんまいい救急医になれるで~!!
太極拳の極意みたいです。重心は何時も体の中心、どの方向からの攻撃も瞬時にかわす体の動き、、、聖徳太子の耳とタコの足を持つDr.マーティン。
ERIHOさん、さっそく一番乗りでコメントありがとうございます。
いつもERIHOさんのフェイスブックの記事、楽しみにしています。
大阪のオバハンの乗りの部分、ERIHOさんにはもちろんわかっていただけると思うと書きがいがあるというものです。