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鈴木麻也

ブログについて

ニューヨークは、アメリカのみならず南米、アフリカ、アジアなど様々な地域から人が集まる場所。医学はもちろん、文化、国際事情、医療システムなど、日本にいた時には全く知らなかった現実を目の当たりにしています。この経験を通して考えたことを発信していきたいと思います。

鈴木麻也

函館生まれ横浜育ちのどさんこ、はまっこ。日本医科大学ボート部卒業後、広い世界に憧れ留学を目指す。2008年に医学部も卒業し、同大学病院での初期研修後、2010年からニューヨークのハーレム病院で小児科研修中。2013年からメモリアルスローンケタリングがんセンターで小児がんフェローシップを開始予定。

私の働いている病院は、セントラルパークの北側、ハーレム地域の真ん中にあります。この地域はアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、アフリカからやって来た人など、様々な人種と文化が混じり合い、英語、スペイン語、フランス語、バンバラ語、アラビア語など、いろいろな言葉が飛び交っています。そんな病院の日常で経験したこと、考えたことをお伝えしていきたいと思います。

さて、今年も夏休みの時期となりました!夏休みの初めの時期は小児科の外来が賑わいます。約2ヶ月半にわたる夏休みの間にサマーキャンプに行くための健康診断、9月から始まる新学期に向けての予防接種など、多くの子供たちが外来にやってくるからです。中でも目をひくのが、中米やアフリカに里帰りするための受診です。熱帯地域、特にサハラ砂漠以南のアフリカ諸国ではマラリアが流行しているため、予防の薬をもらうために病院に来るのです。マラリアは原虫の一種で蚊の唾液の中に集まり、この蚊に刺された時に唾液と一緒に人の体内に入り込みます。7〜30日の潜伏期間の後、高熱、寒気、頭痛、筋肉痛などを発症し、治療が遅れると重症貧血、腎不全、意識障害をひきおこし、死にも至る危険な感染症です。現在でも世界で年間約655,000人が亡くなっており、その多くは子供が占めています。そのため、予防が第一。メフロキンという抗マラリア薬を里帰りの2〜3週間前から飲み始め、旅行中、帰国後4週間は週1回欠かさず飲むようにと処方します。錠剤が飲めない子のために、シロップにしてくれる薬局も紹介します。そして虫除けスプレー、長袖の洋服、蚊帳などの予防策を指導します。マラリア流行地域への旅行者の中で、最も感染の危険が高いのは、以前現地に住んでいたことのある人たちです。「昔住んでいたからマラリアには慣れている」という自信と油断が予防を怠る原因となるからです。アフリカから移民してきて10年ぶりに母国に里帰りするというお母さんもたくさんいます。そんなお母さんには予防の重要性をよーく説明します。

その他の感染症に関しても、Centers for Disease Control and Prevention (CDC)のTravelers’ Healthのウェブサイトhttp://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/list.htm およびYellow Bookには渡航先別に必要な感染症予防が載っています。これをもとに、髄膜炎菌の予防接種を打ったり、黄熱病予防接種を扱っている施設を紹介したりします。

おじいちゃん、おばあちゃんや親戚に会えるのを楽しみにしている子供たちと、何人もの子供たち用のメフロキンの処方箋の束を抱えるお母さんを、「楽しい夏を過ごして、元気に戻ってくるんだよー」と送り出す今日この頃です。

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