民間健康保険
アメリカで、何らかの健康保険を持っている人は人口の約85%いると報告されています。そのうち70%の人が雇用を通じた民間の健康保険を持ち、10%の人が個人で民間保険に加入しています。残りの人が公的保険に入っているのですが、実は、公的保険に加入している人は、健康保険加入者の33%います。メディケアと同時に民間保険に加入している、というような人がいるので、数字がオーバーラップしているのです。
アメリカでの民間健康保険の歴史は長く(保険の歴史で詳しく説明します)、最初の民間健康保険が出現したのは160年以上前にさかのぼりますが、本格的な民間健康保険の時代の幕開けになったのは、1929年に始まったブルークロス(Blue Cross)と1939年に始まったブルーシールド(Blue Shield)です。1940年に1200万人(人口の9%)だった民間健康保険の加入者は、その10年後には、7700万人(人口の53%)にまで膨れ上がります。
長い間、ブルークロス・ブルーシールドは税制上優遇され、全米の多くの州に広がりましたが、その後ユナイテッドヘルス、シグナ、エトナなどの民間健康保険会社が出現し、前述したように健康保険保持者の8割、すなわち全人口の7割近い人が今日、民間健康保険に加入するようになりました。そして、この数字の表すのは、アメリカには皆保険制度が存在しない、ということと、公的保険の対象者が少ないという事実を物語っているのです。
雇用を通じた健康保険
このように見ると、アメリカでは健康保険保持者の8割が民間保険に加入し、そして、そのほとんどの人が雇用を通じて民間保険に加入しているということが分かります。言い換えれば、雇用関係を失う(失業する)と、健康保険も失うということになります。実際には、コブラといって失業後も継続して健康保険を持続できる制度がありますが、雇用者の補助がないために、多額の保険料を納めなければ維持できないので、失業と同時に無保険者になってしまう人が多いのです。
これは、大学の新卒者にも当てはまります。大学時代は、大学がスポンサーになったり、民間健康保険を大学を通じて入っていたのが、大学を卒業したとたんに、就職して健康保険に入らない限り、その時点で無保険者になってしまいます。
実際に大学の新卒者でも就職できない人が多いアメリカでは、これは社会問題にまでなっています。この大学卒業による無保険者に対する問題を解決したのが、Affordable Care Act* です。これによって、大学を卒業しても、26歳まで親の健康保険に加入し続けることができるようになったのです(感謝。この恩恵を実際に受けているのが私の2人の娘たちですーー脱線でした)。
* 手ごろな医療に関する法律、というくらいの訳でしょうか。2010年3月、オバマ大統領によって批准され、2014年までに順次医療改革が行われることになっています。
(続く)
アメリカの医療制度特に保険制度に関心を持っております。
今後もいろいろと教えてください。
コメントありがとうございます。連載で健康保険について書くつもりでしたが、随分時間が経過してしまいました。これからもぼちぼち、健康保険を含む医療関係のコラムを書いていく予定ですので、また覗いてみてください。