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宮下浩孝

ブログについて

腫瘍内科の歴史が長い米国での臨床トレーニングの体験をシェアすることで、医学生や若い医師が腫瘍内科に興味を持つきっかけになりたいです。

宮下浩孝

2017年東京大学医学部卒業。東京大学附属病院での2年間の臨床研修、ニューヨークのマウントサイナイベスイスラエルでの3年間の内科研修を経て、2022年7月からダートマス大学にて血液、腫瘍内科フェローシップを開始。 固形腫瘍に対する新たな治療の確立に貢献したいと考えています。

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2023年になりまして、1-2月はVeterans Affairs(VA;退役軍人病院)での研修を行いました。普段のDartmouth Cancer Centerでの研修との主な違いとして、Dartmouth Cancer CenterではMedical Oncologistの中でも特に各がん種に特化した専門家から指導を受けながら、複雑な疾患を含めて診療を行うのに対して、VAではフェローが比較的独立して、腫瘍内科一般のCommon Diseaseの診療を行うという点があります。指導医も大変熱心に指導してくださり、今後独立した腫瘍内科医となるにあたり、大変良いステップになっていると感じました。

 

VA外来

平日の午前中は基本的には外来診療を行います。化学療法などInfusionの治療のために定期的に来院される方を2-3名、Infusionの治療を受けていない外来患者さんを2-3名、新規患者さんを1名ほど毎日診察します。一人当たり30分程度の時間をかけることができ、余裕をもって診療を行うことができます。

Infusionの治療を受けている方のがん種は非常に多様ではありますが、やはり頻度の高いものとして、大腸がん、肺がん、すい臓がん、前立腺がんを見る機会が多いです。私が勤務しているVAには外科はありますが、放射線科がないため、放射線治療が必要になった場合は、他院に紹介し、協力しながら診療していくこととなっています。また、VAでは一般的な化学療法や免疫治療を行いますが、骨髄移植、CAR-T、放射性リガンド治療などが必要な場合はDartmouth Cancer Centerに紹介することとなっています。

Infusion以外の患者さんでは、CLLやMGUS、濾胞性リンパ腫のフォローアップや、その他固形がん治療後のモニタリングを行うことが多いです。一部経口薬でアクティブに治療を行っている方もいらっしゃいますが、比較的まれです。また、ヘモクロマトーシスの瀉血療法など非悪性腫瘍の血液疾患の診療も行っています。

新規患者はHematologyの症例ではプライマリケアクリニックからの紹介によるものが多く、Annual Visitで血液検査をしたら偶然白血球増多、減少、多血、貧血、血小板増多、減少などが見つかったため、精査を求められるということが多いです。基本的な血液検査や問診から二次性の原因を突き止められることも多いですが、骨髄生検を行って、MDSやMPNといった疾患を発見することもしばしばあります。Dartmouth Cancer Centerの血液内科で診療する際には、すでに骨髄生検後で診断がついていることが多いため、このように診断をするプロセスも勉強になると感じます。一方でOncologyの症例では外科などが生検を行ってすでに診断がついた悪性腫瘍に関して術前、術後の化学療法、あるいは進行がんに対する化学療法に関するコンサルトを受けることが多いです。

VAの外来の特徴的な点としては、退役軍人とその家族の一部のみが診療を受けられるということになっているため、ほとんどの患者さんが男性であるということです。そのため、前立腺がんを診療する機会が多い一方で、乳がんや婦人科がんは基本的に診療しません。このことについては当初は驚きましたが、病院の性質上仕方がないため、その分野はDartmouth Cancer Centerで補完するようになっているようです。

 

VA入院コンサルト

午前中の外来が終わると、午後はTumor Boardで複数の科で治療方針を話し合ったり、あるいは入院コンサルトを受ける時間となります。VAでの入院コンサルトは12月に行った、Dartmouth Cancer Centerでの入院コンサルトと大きな違いはありませんが、血液内科と腫瘍内科のコンサルトをどちらも受けるため、より幅広い疾患を取り扱うこととなります。入院病床数の関係から、比較的入院コンサルトは稀であり、1日1件あるかないかという程度です。

 

1-2月のVAでの研修後は再び外来ローテーションとなります。昨年8月に外来を研修した際は、腫瘍内科医としての経験が浅く、自ら治療プランを計画することに大変苦労していましたが、その後半年の研修を経て、どれだけ成長できたかを認識できると思いますので、とても楽しみにしています。

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