(この記事は、『アメリカでお医者さんにかかるときの本』の内容を一部抜粋・修正して掲載しています。書籍の概要は保健同人社、Amazonでご確認ください。)
日米で接種するワクチンの種類には一部違いがあります。接種の時期や有無をしっかり考えましょう。
・ワクチンの記録は入園入学に必須
長年、日米の子どもの予防接種は大きく異なるといわれてきましたが、最近になって、日本のワクチン行政の改善により、日米の差は少しずつ小さくなってきています。しかし、日米間で転居をする場合はまだまだ異なる点があるので、前もって準備が必要です。
最大の違いは、アメリカでは子どものワクチン記録が幼稚園の入園や小学校の入学時に必要となるという点です。渡米後すみやかに学校生活を始めるためにも、渡米4 ~ 6 ヵ月前から準備を始めましょう。
まず、子どもが生まれてから現在までのワクチン接種記録を入手しましょう。母子手帳がある方は、記入漏れがないか確認しましょう。今まで打ったワクチンの正確な記録を入手したら、どのワクチンが幼稚園や小学校に入るのに必要か調べましょう。必要なワクチンは州によって異なる場合があり、引っ越す先の州の情報を確認してください。CDC(Center for Disease Control and Prevention)という公的機関が運営するSchool and Childcare Vaccination Surveys というウェブサイトから、各州の必須ワクチンを調べることができます(http://www2a.cdc.gov/nip/schoolsurv/schImmRqmt.asp)。よくわからない場合は、日本クリニックの予防接種確認システムというウェブサイト(http://www.nihonclinic.com/japanese/services/inoculation.html)で、アメリカで一般的に打たれるワクチンの中から子どもが受けていないものを確認してください。それらのワクチンは、入園や入学前に接種する必要があると考えておいたほうが間違いないでしょう。
・接種は渡米前、渡米後、どっちがベター?
アメリカで全員が接種しているワクチンの中には、日本では自己負担となるものがあります。それらを渡米前に自費で接種しておくべきかどうか、迷うことがあります。もしアメリカで親が雇用され、雇用主の提供する医療保険に家族全員が加入できるのなら、アメリカのクリニックで接種するワクチンはほぼすべて無料になります。この場合は、渡米してから早い段階でクリニックに行き、そこで接種してもよいでしょう。
もし渡米後、何らかの理由ですぐには保険に加入できない場合は、子どもも親もアメリカのクリニックで接種するワクチンは自己負担となります。ワクチンの種類にもよりますが、1本100 ~ 200ドルかかります。日本では自己負担でも数千円ですむものが多いので、その場合は日本で打ったほうが安いと思います。
また、ワクチンによっては数ヵ月に分けて数回打つ必要のあるものがあり、早い段階で学校に入れたい場合は、日本であらかじめ接種しておく必要があります。この際、ワクチンの細かい接種方法や製造者の違いまでは気にする必要はありません。
では具体的に、日米でどのワクチンが違うのでしょうか。まず、日本では定期接種として全員受けるのに、アメリカでは誰も接種しないワクチンがBCGと日本脳炎ワクチンです。これらに関しては、後述するワクチン記録に明記しておけば、アメリカの医師が書類を見たときに理解できます。アメリカのクリニックで結核について話があった場合は、以前日本でBCGを接種していると伝えてください。
次に、日本では任意接種ですが、アメリカでは皆が受けるワクチンに、ロタウイルス、A型肝炎、B型肝炎、おたふく風邪、水ぼうそう、インフルエンザワクチンがあります(2013年12月現在)。これらは、上記のように費用などを考慮して、日本で受けるか、アメリカで受けるかを決めましょう。ただし、乳幼児でスケジュールが決まっているものについては日本にいるうちにすみやかに接種することをおすすめします。というのも、アメリカに引っ越してから保険の手続きをし、かかりつけ医を見つけて予約を取ってなどとやっていると、2 ~ 3 ヵ月があっという間に過ぎてしまい、ワクチンを打つタイミングを逸してしまうからです。
日本で打つべきワクチンを接種し終わったら、渡米前にその記録を英文にしておきましょう。こちらの日米ワクチン変換アプリで英訳の文書を作ることができるので、参照してください(https://ameilog.com/vaccine-ja)。英文のワクチン記録を作成したら、英語での文書に慣れている医師のところに行き、それにサインしてもらうことで、正式な記録とすることができます。渡米してからかかりつけ医となる小児科医に、もしくは幼稚園や学校にもっていけば、公式文書として扱ってくれるはずです。
(浅井 章博)
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