TOEFLを受けた3週間後から、沖縄県立中部病院での初期研修が始まりました。当時は米国への留学を真剣に考えていなかったため、英語の勉強はここで一旦ストップしました。USMLE Step1とStep2CKは在学中に受けたのですが、実際のところ初期研修の一年目に臨床留学することはあまり考えていませんでした。将来の選択肢として臨床留学の可能性が頭の片隅にあったことは事実ですが、USMLEもTOEFLもモチベーションを維持し、効率的かつ体系的に有用な知識を獲得するツールとして利用していました。
沖縄県立中部病院の初期研修は忙しいことで有名です。私も豊富な実地経験を通じて医師としての研鑽を積むことを目的に初期研修先を選んだので、一年目は臨床業務に集中し、英語に時間を割くことはありませんでした。というよりむしろ、英語の勉強をする余裕などありませんでした。
研修医も二年目が近づき、初期研修後の進路を考えなければならない時期が迫ってきました。それまで、次は国内のどこで後期研修するか迷っていた私にとって、海外という選択肢が徐々に首をもたげてきた当時の感覚はなんだか不思議でした。二年目が始まった頃には、米国での研修応募に向けて準備をすることを決めていたと思います。
決心が遅れたこともあり、すべての準備が後手後手に回りました。初期研修直後に渡米するためには、夏までにUSMLE Step2CSを受けなければならず、しかも試験直前に現地でKaplanの準備コースを受けるため、年に二週間ある休暇をその時期に持ってくるように調整しなくてはなりませんでした。各方面にお願いし、迷惑をかけ、なんとか調整できるまで冷や汗をかきました。また試験会場の予約も遅れたため、人気のある場所や希望の日程はすでに埋まっていて、Texasのテスト会場に希望日の空きが出るまで毎日ウェブサイトにログインしなければなりませんでした。
二年目になったとしても研修が暇になるわけでもなく(むしろ責任が増して忙しさが増しました)、なかなか英語に使う時間が取れませんでした。日々の業務で疲れ切ってしまうため、英語の勉強に大脳機能を費やす気力が湧きません。本屋に行き、直感で超右脳つぶやき英語トレーニングと超右脳おしゃべり英語リスニングと、お気に入りのNHKラジオビジネス英会話を買いました。最初の二つは主にリピートして暗記し、ビジネス英会話はシャドーイングと語彙の構築に使いました。ブランクは一年だったので英語力はそこまで低下していませんでしたが、なかなか勉強スケジュールを予定通り消化できず、上達している気がしませんでした。
そこで、仕事の中でできる限り英語を使うようにしてみました。もちろん日本での診療ですので常にとはいきませんが、英語を使える機会を見つけては実践していました。具体的には、1)海外から招聘講師が来たら、出来る限りプレゼンする機会を作る、また自ら会いにいって質問する、2)英語のカンファレンスでプレゼンする、3)外国人が患者さんとしてやってきたらとりあえず応対してみる、4)研修医仲間で英語のみで話す勉強会を開催する、5)カルテに英語で記載する、6)退院サマリーを英語で書く、などです。
5、6に関しては、今から考えると(拙い英語で書いているという意味でも)周りに迷惑を及ぼしている可能性が高く、必ずしもお勧めできる方法ではありません。とはいえ、常に病院にいる身でしたので、私のカルテ記載を読んで情報を得ようとする人は滅多にいませんでしたが(何かあれば直接聞いてもらっていたと思います)。退院サマリーも単純な症例を除き、(英語力の限界もあり)日本語で記載していたと思います。1から3は沖縄という地域性や、伝統ある教育病院であったおかげで比較的そういった機会に恵まれたのが幸いでした。
そんなこんなで夏になり、Step 2CSの勉強にはほとんど手をつけられないまま、渡米の時期が迫ってきました。この時期、どんな気持ちで過ごしていたのか正直あまり思い出せません。とにかく、沖縄から東京に着き、Kaplanの準備コースが行われるシカゴ行きの飛行機には乗ることができたようです。