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新道悠

ブログについて

日本でも徐々に拡がってきている緩和医療と、高齢化が進みながらもあまり馴染みの無い老年医学について、米国でのフェローシップを通じて学んでいく予定です。 私自身、卒後8年目での渡米で、日本での医療をよく知る医師の一人として、日米の医療の違いなども含めて、日本人の先生にシェアしていきます!

新道悠

2012年に千葉大学医学部を卒業後、福岡県の飯塚病院/頴田病院にて初期研修医と総合診療専門医(家庭医)の専門研修を行う。 卒後8年目の2019年よりNYのMount Sinai Beth Israel 病院の内科にてレジデンシーを行い、2022年からMount Sinai Hospitalの老年/緩和フェローとして勤務中。

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<このブログで伝えたいこと>

筆者はNYにあるMount Sinai Beth Israel 病院の内科レジデンシープログラムを行う内に、さらに老年医学/緩和ケアに興味を持つようになり、2022年から同じくNYにあるMount Sinai Hospital のGeriatrics and Palliative Care(老年医学/緩和ケア)の合同フェローシップを開始しています。

このブログでは、日本ではまだ馴染みの少ない老年医学と緩和ケアのフェローシップトレーニングや、実際の老年科医や緩和ケア医の働き方などについて解説していきます!

<アメリカでのフェローシップ(専門医研修)とは??>

アメリカの場合

アメリカでの専門医研修を開始するにあたって、日本との一番大きなさだと感じたのは、日本に比べて希望する診療科に進むためにかなりのエネルギーと労力が必要である点でしょう。(筆者は日本の総合診療専門医トレーニング経験済)

 (American College of Physicians (ACP),  “Internal Medicine Residency Length, Structure & Training”)

上記の表にあるように、そもそも内科領域のサブスペシャリティ/専門科に進むためには、まずは3年間の内科レジデンシーを修了しなければなりません。

そして、内科レジデンシーを終えた後も、希望するサブスペシャリティ/専門科のフェローシッププログラムにマッチするために、良い推薦状を確保するために努力したり、研究/論文発表などを重ねてマッチングの競争を勝ち抜かねければなりません。

日本と異なり、各専門科でトレーニングできる医師の定員が第三者機関に規定されていることもあり、必然的に人気な診療科(米国では消化器内科/循環器/血液/感染症などの専門科)などの場合は、希望の診療科にマッチせずに専門医になれないケースも多くあります。幸いなことに、私が志望していた老年医学/緩和ケアは、あまり競争が激しくないので比較的フェローシップに進みやすい専門科です。

日本の場合

日本でも最近、基本領域の設定や、その後の領域にあたるサブスペシャリティの設定が検討されているようなので、今後米国のフェローに近くなっていくのかもしれません。

ただ、少なくとも私がトレーニングしていた2019年頃くらいまでは、望めば自分の希望する診療科のサブスペシャリティの専門医トレーニングに比較的容易に進むことができ、一部の人気な研修病院を除けば、あまり進路に関する競争などはなかったように思います。

<老年医学・緩和ケアフェローシップとは>

厳密には老年医学(Geriatrics)と緩和ケア(Hospice & Palliative Care)は別個の専門医資格で別のトレーニングなのですが、お互いの領域の相性がかなり良い事もあり、混合プログラムも多く存在し、老年/緩和のDual Board Certifiedの医師 (正確には内科も含めてTriple Board Certified;3つの専門医資格保持) も稀ではありません。

一言で老年医学フェローシップとは?

高齢の患者さんを包括的に診療する専門科で、米国ではPCP(Primary Care Physician:かかりつけ医)としての位置付けです。外来で高齢の患者さんたちを診療することはもちろん、老人ホームやリハビリセンターでの勤務や、訪問診療なども行うので、ケアを提供するロケーションはニーズに応じてかなり幅広いのが特徴でしょう。

一言で緩和ケアフェローシップとは?

日本でも最近かなりポピュラーになりつつある緩和ケアですが、米国でも特にICUがあるような急性期病院ではかなり重要度の高い専門領域です。

筆者が日本にいた時に経験した緩和ケアは、かなり末期癌/終末期にある患者さんたちの症状緩和やホスピスなどが中心でした。

米国での緩和ケアは、これらの症状緩和的な部分に加えて、かなりコミュニケーションの専門科としての立ち位置が強いです。

様々な文化背景や価値観を持った人々が暮らす中(NYは特に!)、患者さんやその家族が何を優先したいのか、医療チームと患者さんサイドのゴールを共有するコミュニケーションをファシリテートする役割(Goals of Care discussion)を担います。

<なぜMount Sinai Hospital のフェローシップなのか?>

内科レジデンシー中に、老年医学/緩和ケアの両方でトレーニングした先生と働く機会があり、状況に応じて老年科医としての視点、緩和ケア医としての視点を使い分けながら診療する姿にとても感動したのがきっかけでした。

現実的にも、米国内で老年医学/緩和ケアの両方が一緒にトレーニングできる(専門医資格を満たすことができる)プログラムは多くはなく、中でもMount Sinai Hospitalの老年医学/緩和ケアは米国での教育ランキング1位にも表彰された歴史のあるプログラムでした。

元々、Mount Sinai Beth Israelの内科でトレーニングしていたので、関連病院のMount Sinai Hospitalの老年医学/緩和ケアの先生たちに知り合いも多く、自然とこのプログラムを志望するようになりました。

まとめ

今回は、老年・緩和ケアフェローシップの簡単な紹介と、私が老年・緩和ケアフェローシップを選んだ理由について紹介しました。

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