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ブログについて

大阪出身の妻と2児の子育て奮闘中。子育ては最高の小児科学の教科書です。モットーは“think globally, act locally, and love your family”。小児神経発達学・医学教育を世界で学び、グローバルな視野を持つ後進を育成することが夢です。

桑原 功光

北海道出身。2001年旭川医科大学卒業。1年間の放射線科勤務の後に岸和田徳洲会病院で初期研修。都立清瀬小児病院、長野県立こども病院新生児科、在沖縄米国海軍病院、都立小児総合医療センターER/PICUと国内各地で研鑽。岸和田徳洲会病院小児科を経て、2012年度からハワイ大学小児科レジデント。2015年7月よりテネシー州メンフィスで小児神経フェロー開始。

桑原 功光のブログ
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2016/03/09

小児神経科と行動発達科の違いについて 後編

私は個人的には、発達障害・学習障害・自閉症のこどもたちに対しては、医師が病院でできることはもう限られていると感じています。一般的に、医師による診療よりも、家族や教育、福祉援助という社会的な機関そのものが、こうした患児の予後を大きく左右します。小児神経科も行動発達科も、共通して発達障害・学習障害・自閉症を診療しますが、小児神経科のアプローチは(治療可能なら)外来で診療継続か、(根本的な治療が難しければ)他リソースへ紹介しています。行動発達科はこどもの発達のレベルを詳細に評価して、社会的介入、ということに重点を置いている印象を受けます。ハワイでお世話になった行動発達科医に、なぜ行動発達科を選んだのか尋ねたところ、彼女は「レジデント時代に、耳が聞こえない自閉症の子が学習障害という主訴で外来に来た。どうやって彼女を指導したらいいと思う? 誰も解決法を教えてくれなかったから、自分で学ぼうと決意した」と言っていました。このように、すでに診断がついているが、どうやって介入すべきかわからない発達障害や自閉症の子たちも、行動発達科医たちはよく診ています。また、彼女はチックの患者が学校でいじめられた時に、学校まで行って、その子のクラスでみんなにチックの講演もしたそうです。行動発達科の外来の方が一般的に診察時間が長く(場所によっては、初診枠2時間かけることもあると聞いたことがあります)、予約できるまで長期間、待つことは珍しくありません。行動発達科の初診枠が空くまで6ヶ月から1年先ということがあるそうです。

ただし、行動発達科は脳波やてんかん治療薬を深く学ばないため、自閉症の子がてんかんが付随した場合、てんかんの治療については小児神経科に紹介するのが一般的です。また、行動発達科はその国の文化にも精通していないと、より深い家族関係のアプローチが難しい印象を受けました。私はこどもの発達と社会の受け入れに留まらず、分子生物学レベルでの脳の発達と異常、そしてそれに対する治療学にも興味がありました。こうしたさまざまなことを考慮し、私は小児神経に進むことにしました。ちなみに、アメリカで小児神経科に進んだ日本人は10人以上いますが、行動発達科を修了した日本人は2人のみです。

さらに、もうひとつアメリカではこどもの発達を診療する科があります。神経発達障害科(Neurodevelopmental disabilities(NDD))です。簡単に言うと、小児神経科+行動発達科の両方を経験する科です。4年間かけて修了します。全米で2016年2月現在、アメリカ内で8カ所、トレーニング施設があります(Washington DC, Indiana, Johns Hopkins, Boston Children, OHSU(Oregon), Pittsburg, Dalas, Houston)。ただ、これらのプログラムの空きは年によって変動し、小児神経科や行動発達科と異なり、グラントによって募集人数が毎年変わります。

発達障害や自閉症のこどもたちを診療する際に、何より大事なのはチームワークです。何が患者と家族にとって大事かを認識して、必要であれば、小児神経科や行動発達小児科といった科に留まらず、解決法をチームで見出すことが何より重要です。

いつか、日米の小児神経科の違いや、小児神経フェローを修了した後に進むことができる細分化されたフェローシップ(てんかん学, 神経生理学, 神経筋疾患学など)についても、報告したいと思います。

以上、春の足音が近づいてきたメンフィスより、ル・ボーナー特派員レポートでした。

7件のコメント

  1. 三浦奈津季 より:

    こんにちは。
    突然のメッセージ、失礼いたします。

    私の姉がテネシー州に住んでおり、
    姉の息子のことで相談したいのですが、
    こちらで聞いていただくことはできますか?

    まだテネシー州に住んでらっしゃいますか?

    • 桑原 功光 より:

      三浦様

      個人情報保護の問題、かつ、オンライン上では実際に患者を診察できないということもあり、ネットもしくはメールでのご相談は控えさせていただいております。申し訳ございません。

  2. 松田直子 より:

    こんにちは、スクールOTの松田です。

    大変興味深く拝読させて頂きました。
    お恥ずかしながら、このように3つの専門医が細かく分かれていると言うことを知りませんでした。(私のクライアント、又は生徒さんが良く行くのは行動発達医のほうになると思います。)
    これから、相談されたときにもっと特定した専門医に行くことをお勧めできそうです。

    質問ですが、アメリカでは一般的にdepelopmental pediatrician(発達小児科医)という言葉をよく聞きますが、それはこれらの専門医を総合した名称なのでしょうか?

    子供の成長を見守るのは本当に専門家にとっての喜びですよね。
    どうぞこれらかもがんばってください。

  3. 松田直子 より:

    Developmental Pediatricianの間違いです。すいません。笑

    • 桑原 功光 より:

      松田様

      コメントありがとうございます。
      アメリカでdevelopmental pediatrician といった場合は、一般的に、この行動発達小児科医のことを指します。
      小児科レジデントを3年間終えて、さらにこの行動発達小児科フェローを3年間修了する必要があります。

      激励ありがとうございます。これからも頑張ります。

  4. 松田博美 より:

    初めまして。小児科医の松田と申します。発達障害の子どもたちを診ています。
    職場から海外短期研修の機会を得て、発達障害の診断と支援について 学びたいと思っています。アメリカで行動発達小児科医の見学のできるところを探しています。
    また、他の見学先についてご相談いたしたく、メールにてご連絡いただくことはできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

    • 桑原 功光 より:

      松田先生、初めまして。メールの方に連絡させていただきます。

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