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ブログについて

私の受けたアメリカの医学教育の話、スタンフォードでの内科レジデント生活、 Physician Scientistを育成するシステム、シリコンバレーの学際的環境について、といった内容で情報発信できればと思っております。

川名 正隆

東京に生まれ育つ。小学校卒業後1年半をテネシー州で過ごす。東京大学教養学部を卒業後再渡米し、ブラウン大学医学部を卒業。現在スタンフォード大学病院で内科レジデント、2012年より同大学循環器内科フェロー。心筋症・心不全などの心筋収縮異常の病態メカニズムに興味あり。基礎研究と臨床のバランスの取れたキャリアを模索中。

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2012/04/01

参加型臨床実習の現場より(2)コア実習・病棟に出るまで

前回は「インターンとほぼ同じ業務をこなす実習」であるSub-Internshipを紹介しましたが、このような実習を可能にするには、その前の段階の3年生時のコア実習で病棟における基礎能力が養われていることが前提です。内科コア実習では、3年生はインターン達と一緒に2-4人程の患者さんを担当することになりますが、一番の目標は担当する患者さんの基礎情報を自分で集めて正確に理解することです。学生達は朝一人で担当の患者さんのベッドを回り、Sub-Iやインターン達と同様にカルテに経過を記録し、チームでの回診中には自分の患者さんの容態をプレゼンすることが求められます。3年生には特に面白い症例(=複雑な症例)を担当させることが多いですから、膨大な量の基礎データに目を通して必要なものを取捨選択し、整理して管理する能力も問われることになります。回診中には積極的に議論に参加、わからないことがあったら自分で調べて、ミニレクチャーの様な形でチームに発表することを繰り返しながら、自分の担当する患者さんを徹底的に理解することが求められます。コア実習ではこうした「情報の収集力・整理力・解釈力」を訓練し、Sub-Iではそこからさらに進んで治療方針を立てるというアウトプットの訓練になると言えます。コア実習の最後には、通称Shelf Examと呼ばれる全国共通テストの客観的なスコアと合わせて、インターン・レジデント・アテンディング(指導医)による実際の現場での基礎データの収集能力と理解能力の評価がとても重要視されます。そして「どれだけ回診中の議論に参加できたか」、また「治療方針を自分で立てられたか」というのがあればさらにボーナスポイントになり、Sub-Iに一歩近づけることになります。

コア実習で基礎情報を集めるにはもちろん患者さんの問診・身体診察ができる必要があり、また検査結果をカルテから集めてその内容を理解できる必要があります。検査結果の解釈に関してはコア実習中に訓練される部分が大きいですが、「問診・診察を一人でできる=一人で回診できる」レベルにまで準備するのが、Pre-clinical過程である1-2年次の目標になります。私の通ったブラウン大学では1年目から毎週半日病棟に出向き、実際の患者さんに許可を取って、問診の仕方を最初の1年を通して訓練します。2年次には身体診察をさせてもらうわけですが、各科のアテンディングから毎回オムニバス形式で自分の専門分野の身体診察について教えて貰います。レジデントとなってからは、毎週のように1-2年生の教官から「誰か良い問診の相手はいないか、良い身体所見のある患者さんはいないか」という連絡が入るので、我々も教育的な良い症例があるとこちらから知らせてあげたりします。

アメリカの医学生は、医学部受験の時にほぼ全員が病院内でのなんらかのボランティアを経験している(私も病棟とERでのボランティアをやりました)ので、病院で患者さんに話すという行為自体は特に新しい経験ではない人が多く、自信たっぷりに患者さんと話している1年生を見かけることも多いです。どのように既往歴・家族暦などを順序だててとるか、円滑に身体診察を行うかというのは、基本的なコンセプトと技術は教えられるわけですが、その後は場数を踏むのがスキルを向上させる唯一の手段になります。学生達になるべくたくさんの種類の疾患・患者さんに触れられるように指導教官とレジデント達は一体となって臨んでいます。(続く)

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